恒心文庫:犬
本文
田舎から最高学府であるT大に入った私。
慣れない環境でうまく生きていくことができず、親も裕福ではなかったのでお金に苦労していた。
受験のときは一念発起して頑張ったもののそのままのペースで勉学に励むことが出来ず、東京という街の気だるさに飲まれて失速していく。
当然、アルバイトなど出来ず親の少ない仕送りだけで暮らしていくのは無理があった。
新宿でだらだらと酒に飲まれていた時に出会ったのが彼だった。
その頃は髪もまだ黒く顔の整った紳士、それでいてどこか帝王の風格のある人だった。
帝王と聞いて皆さんはどのような人を思い浮かべるでしょうか。
例えば古代の英雄のように力で全てをねじ伏せる野性味のある漢。
例えば裏で手を回し権力で敵を貶めていく男。
彼は後者でした。
身体を売ればお金をくれると彼は言う。
男性同士の性行為の経験はなかったがこんな簡単なことはない。
私は彼に言われるまま、近くのラブホテルへと向かった。
その夜、私は完全に犬にされた。快楽という餌で飼いならされた犬に。
彼の口淫、それは若者の精を搾り出すことに特化した洗練した動きでした。
私はものの数分で射精をしていました。
自分の手淫では感じたことのないような快楽、これまで感じたことがなかったような大量の溶岩が自分の陰茎を駆け上っていく熱い感覚。
私の精を受け止めた彼は、まるで高級なヴィンテージの葡萄酒を味わうかのように飲み干しました。
「やはり若者の精は美味だ、私は美食家でね」
彼の口に射精したときは罪悪感がありましたが、その満足そうな表情を見てその罪悪感はすぐに快楽の濁流に流されました。
「さて、私も満足したくなった。時に君は雌になってみたいと思ったことはないかね?」
すばやい手つきで私は犬の姿勢をとらされると同時に、肛門が苦しいという感覚を覚えました。
しかしそれもすぐに快楽へと変わっていく。
彼は的確に私の前立腺を刺激し、先ほどあんなにも大量に精を吐き出した私の陰茎はすぐに固く存在感を示すようになりました。
彼が私の性感帯をこすりあげるたびに私はポルノグラフィーの中の女のような声をあげ始めていました。
どう頑張ってもその声を止めることができない、それならばいっそ雌犬のように鳴き続ければいい。
私の脳の理性をつかさどる部分は溶けてしまい快楽だけが全身を支配していました。
それから事ある毎に彼に身体を売りました。
金、そして何より快楽の奴隷にされてしまっていたのです。
勉学は完全に疎かになり、就職先も決まらず大学院に進むことも出来ない。
そんな状況になっても、快楽を求めて彼に抱かれに行く。
「大学院に進めなかった?そうだね、君は弁護士になりなさい。私立のC大でもよければ私が入学させてあげよう」
そう、私は弁護士になる存在だ。ご主人様がそう言ったのだ。
普段は人間のように生活をしていても、夜になれば私は犬になる。
「司法試験に通ったのか、まずは奴と関係のある事務所に入れてあげよう」
何も考えられない。私は犬だからご主人様の言うことを素直に聞けばいいんだ。
彼の言うことを聞けば快楽を与えてもらえると思うだけで、就業中も陰茎を硬くしてしまう。
「奴が不正をしていることは粗方掴んでいるのだが、決定的な証拠はないのだ」
もう彼に前立腺を擦られるだけで涎のように精液を垂れ流すようになっていた。
「奴は今息子と事務所を経営している、そこに潜り込んでもっと情報を掴んでくるんだ」
―――もっと私を気持ちよくしてください。
「徹底的に奴を貶める証拠を掴んでくるんだ」
―――そうしたら
「ご褒美をあげよう」
私は犬
ご主人様の忠実な犬
快楽という餌で飼われた……