恒心文庫:恵方巻
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本文
恵方巻という風習は、今や全国的なものとなった。
コンビニエンスストアなどの広報戦略の成果ではあろうが、四季折々のイベントは、四季の移り変わりを行事でキチンと認識する意味もあり、全く否定するのもよくないことである。
各々が好きな方法で、残り少ない冬を乗り越えようという気概を持てれば、恵方巻を食べるのもいいことだろう。
さて、虎ノ門の某ビジネスタワーでも、恵方巻を食べる行事が行われようとしていた。
白いもみあげの恰幅のよい老人と、若めのがっちりした男が、全裸になって、北北西に向かって立っている。
彼らの前には、それぞれ太った男と、乳首を勃起させた髭男がひざをついている。
彼らは、目の前にある太巻きーそれは彼らにとって恵方の南南東にあるのだーを食べようとしているのだ。
無言のまま、2人のひざをついた男たちは、太巻きを口に含む。手を使わない。それが彼らのルールだ。
熟練した口技が冴え渡り、立っている男たちは身体に力を入れ、そして緊張を緩めた。
老人とがっちりした男の太巻きは既に太巻きではなくなっていた。
なお、太った男は細巻きしか持っておらず、髭男は俗にいう「メスイキ」でしか快感を得られなくなり、太巻きを屹立させることはもはやないという状況であった。
したがって、老人とがっちりした男は、太巻きを食べさせた後、コンビニエンスストアで予め買っておいた太巻きを恵方に向いて食べた。
タイトルについて
この作品は公開された際タイトルがありませんでした。このタイトルは便宜上付けたものです。
挿絵
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