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恒心文庫:

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本文

僕の友人は傘を持つことがない。

出かける前に彼は
「アメリカの上級国民は傘なんて持たないナリ」
と述べていた。

彼の言葉から染み出りゅ、自分の生まれや白人へのコンプレックスを想いながら、僕は事務所を出た。
小雨が降り出したのだ。
彼に傘を届けに行こう。

彼は、ネットストーキングしていた人物の顔を見るために、リアルストーキングをしている最中だった。
僕は無言で傘を差し出した。

「傘はいらないでふ。始まりはいつも雨でした。当職は水もしたたるイケメン弁護士ナリ」
「でもちょっと寒いナリね。ありがたく使わせてもら……」
「ってやまおかくん! これ傘じゃないナリ! 干し椎茸ナリよ!!」
「……でも、雨で出汁が出てきておいしいナリ。ちゅぱちゅぱ」

彼の唇と舌が艶かしく動く。
雨の中、茸を舐め回す口唇の動きは、ひどく官能的であった。
僕の二つのオオシロカラカサタケの頭部は、既に中高扁平である。

我慢できなくなった僕は、彼のシメジをしゃぶった。
彼も、僕のエリンギをしゃぶった。
やがて二つの茸からとろみが出て、ふたりは餡かけ茸となった。

椎茸はぬるぬるして臭いから捨てた。

タイトルについて

この作品は公開された際タイトルがありませんでした。このタイトルは便宜上付けたものです。

挿絵

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