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>ジ・M 編集の要約なし |
>ああああああ 編集の要約なし |
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'''<FONT color="red">個人攻撃、殺害予告</FONT>''' | '''<FONT color="red">個人攻撃、殺害予告</FONT>''' | ||
'''「数え切れないほどの人に囲まれているようで、恐ろしくて夜も眠れなかった」。''' | '''「数え切れないほどの人に囲まれているようで、恐ろしくて夜も眠れなかった」。''' | ||
'''第一東京弁護士会の[[唐澤貴洋|唐沢貴洋]] | '''第一東京弁護士会の[[唐澤貴洋|唐沢貴洋]]弁護士は、[[ハセカラ騒動|2012年にネット上で始まった自身への攻撃]]について振り返る。''' | ||
'''ネット上での中傷などに悩む人たちから相談を受け始めて約1年が過ぎた時期だった。''' | '''ネット上での中傷などに悩む人たちから相談を受け始めて約1年が過ぎた時期だった。''' | ||
''' | '''[[なんでも実況(ジュピター)板|ある掲示板]]に、依頼者に関する書き込みの削除を求めたことで反発を買い、掲示板が個人攻撃であふれる「[[炎上]]」状態に。''' | ||
''' | '''殺害予告が連日書き込まれ、[[恒心綜合法律事務所|事務所]]の周囲には不審者がたびたび現れた。''' | ||
'''<FONT color="red">表現の自由の乱用</FONT>''' | '''<FONT color="red">表現の自由の乱用</FONT>''' | ||
''' | '''[[国営セコム|警察]]が捜査に乗り出し、脅迫容疑などで10人程度が逮捕・書類送検されたという。''' | ||
'''以前ほどではないが、攻撃は今も続く。「表現の自由が乱用されている。何らかの歯止めが必要では」と唐沢さんは言う。''' | '''以前ほどではないが、攻撃は今も続く。「表現の自由が乱用されている。何らかの歯止めが必要では」と唐沢さんは言う。''' | ||
'''言論や表現活動が国家から厳しく弾圧された明治憲法の時代を経て、現行憲法の下、市民は表現の自由を手にした。''' | '''言論や表現活動が国家から厳しく弾圧された明治憲法の時代を経て、現行憲法の下、市民は表現の自由を手にした。''' | ||
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5年前。[[長谷川亮太|ネット掲示板で中傷された男性]]の依頼を受けて書き込みの削除を求めると、思いがけず自分自身が「標的」になった。 | 5年前。[[長谷川亮太|ネット掲示板で中傷された男性]]の依頼を受けて書き込みの削除を求めると、思いがけず自分自身が「標的」になった。 | ||
ネットでの中傷のほか、[[アイオス五反田駅前|事務所ビル]]への[[けんま|不法侵入]]や盗撮なども相次いだ。殺害予告の書き込みや名前をかたった[[爆破予告]]までされて警察に相談。 | |||
10人以上が脅迫容疑などで[[殉教|逮捕・書類送検]]されたが、会ったこともない少年や男性ばかり。 | 10人以上が脅迫容疑などで[[殉教|逮捕・書類送検]]されたが、会ったこともない少年や男性ばかり。 | ||
「私への嫌がらせは、彼らがネット空間のコミュニケーションで消費するネタに過ぎなかった」 | 「私への嫌がらせは、彼らがネット空間のコミュニケーションで消費するネタに過ぎなかった」 | ||
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「誰が書き込んだのかを、容易かつ確実に後から特定できる仕組みをつくるべきだ」 | 「誰が書き込んだのかを、容易かつ確実に後から特定できる仕組みをつくるべきだ」 | ||
17歳の時、1歳下の[[唐澤厚史|弟]]が自ら命を絶った。[[悪芋|渋谷の非行グループ]]から[[パーティー券]]を売りつけるよう迫られたが、できずに暴行された直後の悲劇だった。 | |||
「本当の悪い人間と闘うには武器が必要」と法曹の道を志した。 | 「本当の悪い人間と闘うには武器が必要」と法曹の道を志した。 | ||
悪意に満ちた攻撃は今も続く。 | 悪意に満ちた攻撃は今も続く。 | ||
127行目: | 127行目: | ||
「一線越えたやろ」「もうちょっと面白い嫌がらせしろよ」。ネット空間が“炎上”するたびに、匿名の攻撃は過激化していった。 | 「一線越えたやろ」「もうちょっと面白い嫌がらせしろよ」。ネット空間が“炎上”するたびに、匿名の攻撃は過激化していった。 | ||
殺害予告は手口や日時を記すなど具体化した。なりすましも横行、北海道から沖縄までの学校や役所に唐沢を名乗る爆破予告メールが相次ぎ、警備強化や休校が続いた。事務所の表札に「死ね」と落書きした男子高校生は、駆け付けた唐沢を見ても薄ら笑いを浮かべただけだった。 | 殺害予告は手口や日時を記すなど具体化した。なりすましも横行、北海道から沖縄までの学校や役所に唐沢を名乗る爆破予告メールが相次ぎ、警備強化や休校が続いた。事務所の表札に「死ね」と落書きした男子高校生は、駆け付けた唐沢を見ても薄ら笑いを浮かべただけだった。 | ||
もちろん、犯罪だ。唐沢によると、これまでに十数人が威力業務妨害や脅迫の容疑で立件された。半数近くは未成年で、殺害予告で書類送検された[[大分君|大分県の男子高校生]]=当時(16)=は「目立つと思ったから」と供述した。 | |||
'''「僕は彼らの“ネタ”にされているだけ」'''と唐沢。'''盗撮を避けるために通勤ルートを頻繁に変え、買い物や[[坂根輝美#唐澤貴洋と知り合った後の時系列|外食]]は控える。気が休まるのは事務所の一室だけ。'''その事務所も嫌がらせへの防犯対策などで2回の[[聖遷|移転]]を強いられた。 | '''「僕は彼らの“ネタ”にされているだけ」'''と唐沢。'''盗撮を避けるために通勤ルートを頻繁に変え、買い物や[[坂根輝美#唐澤貴洋と知り合った後の時系列|外食]]は控える。気が休まるのは事務所の一室だけ。'''その事務所も嫌がらせへの防犯対策などで2回の[[聖遷|移転]]を強いられた。 | ||
唐沢は、[[優しい世界|投稿者を簡単に特定できるようにする]]など、悪質な書き込みへの法整備が必要と訴える。そして、何より大切なのは学校教育。相手の痛みを感じ取りにくいネット空間の怖さと、すぐに標的が変わる流動性を教えてほしいと願う。 | 唐沢は、[[優しい世界|投稿者を簡単に特定できるようにする]]など、悪質な書き込みへの法整備が必要と訴える。そして、何より大切なのは学校教育。相手の痛みを感じ取りにくいネット空間の怖さと、すぐに標的が変わる流動性を教えてほしいと願う。 | ||
156行目: | 156行目: | ||
判決後に会見した李さんは「大人も若い世代も見るまとめサイトに差別があふれていてはいけない。被害が認められてほっとしている」と述べた。 | 判決後に会見した李さんは「大人も若い世代も見るまとめサイトに差別があふれていてはいけない。被害が認められてほっとしている」と述べた。 | ||
「ネットには[[フェイクニュース]]やデマもあふれている。判決が自浄効果をもたらせばいい」とも語った。 | |||
ヘイトスピーチに詳しいジャーナリストの安田浩一さんは「ほかのまとめサイトへの抑止力になることを期待したい」と話す。 | ヘイトスピーチに詳しいジャーナリストの安田浩一さんは「ほかのまとめサイトへの抑止力になることを期待したい」と話す。 | ||
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[[ファイル:2019年6月5日朝日.jpg|500px]] | [[ファイル:2019年6月5日朝日.jpg|500px]] | ||
'''ネットで攻撃を受けても、下を向かないで'''<ref>[https://www.asahi.com/articles/ASM655R5QM65UTIL04C.html 掲示板で実名あげて中傷、誰が? 悩んだ末の親子の決断:朝日新聞デジタル]([https://anonfile.com/b7g8g7obob/asahi_19.6.5_png スクリーンショット])</ref><ref>[https://pastebin.com/wvXf577s 書き起こし(上段)] </ref> | '''ネットで攻撃を受けても、下を向かないで'''<ref>[https://www.asahi.com/articles/ASM655R5QM65UTIL04C.html 掲示板で実名あげて中傷、誰が? 悩んだ末の親子の決断:朝日新聞デジタル]([https://anonfile.com/b7g8g7obob/asahi_19.6.5_png スクリーンショット])</ref><ref>[https://pastebin.com/wvXf577s 書き起こし(上段)] </ref> | ||
大人がもっとかかわるべきだ、という人もいる。東京の弁護士の唐澤貴洋さん(41)は7年前、ネット掲示板で中傷された男性の依頼を受けたことをきっかけに、自らも標的となった。[[恒居|自宅]]住所などがさらされ、事務所の盗撮被害にも遭った。弁護士であるから対応できたが、子どもが一人で受け止めることは、簡単ではない。「恥ずかしがらず、まず身近な大人に相談してほしい」と語る。 | |||
== 人気スターのファンがSNS投稿でアンチから中傷、その解決法(NEWSポストセブン、2019年6月16日) == | == 人気スターのファンがSNS投稿でアンチから中傷、その解決法(NEWSポストセブン、2019年6月16日) == | ||
'''人気スターのファンがSNS投稿でアンチから中傷、その解決法'''<ref>{{archive|https://www.news-postseven.com/archives/20190616_1391677.html|https://archive.vn/fPvGh|NEWSポストセブン 人気スターのファンがSNS投稿でアンチから中傷、その解決法 1}}、{{archive|https://www.news-postseven.com/archives/20190616_1391677.html/2|https://archive.vn/iELD0|2}}、{{archive|https://www.news-postseven.com/archives/20190616_1391677.html/3|https://archive.vn/3r3lA|3}}</ref> | '''人気スターのファンがSNS投稿でアンチから中傷、その解決法'''<ref>{{archive|https://www.news-postseven.com/archives/20190616_1391677.html|https://archive.vn/fPvGh|NEWSポストセブン 人気スターのファンがSNS投稿でアンチから中傷、その解決法 1}}、{{archive|https://www.news-postseven.com/archives/20190616_1391677.html/2|https://archive.vn/iELD0|2}}、{{archive|https://www.news-postseven.com/archives/20190616_1391677.html/3|https://archive.vn/3r3lA|3}}</ref> | ||
インターネット上で誹謗中傷を受け、個人情報が拡散される被害が増えている。ネット上で貼られたレッテルは現実社会にまで及び、その悪評がいつまでも消えない事例が多い。これを「[[DEGITAL-TATOO|デジタルタトゥー]]」という。被害者の体験談をもとに、解決策を探る。 | |||
人気スターのファンになると心躍ることもある半面、ほかのファンの嫉妬を買い、攻撃されることもある。ここでは、本誌・女性セブン記者A(45才)が体験した“アンチ”からのいわれなき中傷をお伝えする。 | 人気スターのファンになると心躍ることもある半面、ほかのファンの嫉妬を買い、攻撃されることもある。ここでは、本誌・女性セブン記者A(45才)が体験した“アンチ”からのいわれなき中傷をお伝えする。 | ||
289行目: | 289行目: | ||
実際に相手を特定するには、書き込まれたサイトの管理人、サーバ管理会社、ウェブサービス提供会社に対して発信者の情報開示請求を行うこととなる。この際は書面作成の件数をこなしている弁護士を介した方がスムーズだ。 | 実際に相手を特定するには、書き込まれたサイトの管理人、サーバ管理会社、ウェブサービス提供会社に対して発信者の情報開示請求を行うこととなる。この際は書面作成の件数をこなしている弁護士を介した方がスムーズだ。 | ||
そして、発信者を特定するIPアドレスを管理するプロバイダーに対して契約者情報の[[開示]]を求める。この場合、裁判所を通じることが多い。 | |||
最終的に、発信者情報開示請求訴訟に勝訴後、契約者情報が開示され、個人の特定に至る。ただし、相手が特定でき、裁判を起こした場合、弁護士費用や裁判手続きだけで数十万円かかる。 | 最終的に、発信者情報開示請求訴訟に勝訴後、契約者情報が開示され、個人の特定に至る。ただし、相手が特定でき、裁判を起こした場合、弁護士費用や裁判手続きだけで数十万円かかる。 | ||
308行目: | 308行目: | ||
唐澤 貴洋さん 弁護士 | 唐澤 貴洋さん 弁護士 | ||
1978年生まれ。ネット上の権利侵害に詳しい。著書に「炎上弁護士」「[[そのツイート炎上します! 100万回の殺害予告を受けた弁護士が教える危機管理|そのツイート炎上します!]]」など。 | |||
今回の展示を巡る問題で事務局などに抗議電話が殺到したのは、有名人らが[[Twitter|ツイッター]]などで扇動したことが大きな影響を与えています。ネット空間と現実の世界が絡み合い、あっという間に騒ぎが広がるのが最近の特徴です。 | |||
例えば朝鮮学校への補助金交付に絡んで、全国の弁護士会に弁護士の懲戒請求が出された事件がありました。交付に反対するブログが懲戒請求のひな形を示し、あおられた人たちが、事の真偽や自らの行為が違法かどうかの判断をせずに動き出しました | 例えば朝鮮学校への補助金交付に絡んで、全国の弁護士会に弁護士の懲戒請求が出された事件がありました。交付に反対するブログが懲戒請求のひな形を示し、あおられた人たちが、事の真偽や自らの行為が違法かどうかの判断をせずに動き出しました | ||
私は7年前、インターネットの掲示板で中傷された少年の弁護を引き受けたことで、自らがネット攻撃の対象とされました。自宅の住所や[[唐澤貴洋の親類縁者一覧|家族関係]]がさらされ、数え切れない中傷や殺害予告を受けました。私の名をかたった爆破予告の電話が自治体にかかったり、実家の墓に私の名前がペンキでかかれたりしました。警察が数人を逮捕しましたが、今もネット上には私を中傷する文章が大量にあり事務所を訪れる不審者がいます。 | |||
加害者5人に会ったことがあります。外見は物静かな若者や青年でした。共通しているのは、孤独で自分の言い分を論理的に伝えるのが苦手だという点でした。社会に居場所を見つけられず、ネットのコミュニティーにそれを求めたというのが私の分析です。 | 加害者5人に会ったことがあります。外見は物静かな若者や青年でした。共通しているのは、孤独で自分の言い分を論理的に伝えるのが苦手だという点でした。社会に居場所を見つけられず、ネットのコミュニティーにそれを求めたというのが私の分析です。 | ||
379行目: | 379行目: | ||
「現状では中傷される側の権利侵害が実質放置されている。発信者の開示請求に対する判断が早くでるような、仕組みにするべきだ」 | 「現状では中傷される側の権利侵害が実質放置されている。発信者の開示請求に対する判断が早くでるような、仕組みにするべきだ」 | ||
こう話すのは、ネット中傷の発信者を特定する仕事を多く手がけ、自身も中傷の対象になった経験を持つ唐澤貴洋弁護士(42)だ。 | こう話すのは、ネット中傷の発信者を特定する仕事を多く手がけ、自身も中傷の対象になった経験を持つ唐澤貴洋弁護士(42)だ。 | ||
2012年、ネット掲示板で中傷を受けたという高校生から依頼を受けた。掲示板の運営者に削除請求をし、裁判所は発信者開示の仮処分を決定。唐澤さんへの中傷が始まったのはそれからだ。「詐欺師」「[[無能]]」。批判や揶揄(やゆ)がツイッターなどにあふれ、次第に脅迫に変わっていった。 | |||
「ナイフでめった刺しにして殺すとか、過激になった」。家族の名前や実家の[[特定手法一覧#登記簿|登記簿]]などもネット上にさらされた。 | |||
警察に相談し、脅迫容疑などで約10人が逮捕・書類送検された。その後、過激な書き込みは減ったが、中傷は続く。「(ネット空間では)話し合う以前に、自分の主張に合わなければ人格否定をする。健全な言論空間として機能していない」 | 警察に相談し、脅迫容疑などで約10人が逮捕・書類送検された。その後、過激な書き込みは減ったが、中傷は続く。「(ネット空間では)話し合う以前に、自分の主張に合わなければ人格否定をする。健全な言論空間として機能していない」 | ||
唐澤さんがネット中傷問題にこだわる原点は、高校時代に弟を失った経験だ。 | 唐澤さんがネット中傷問題にこだわる原点は、高校時代に弟を失った経験だ。 | ||
397行目: | 397行目: | ||
――ネット上で中傷の対象となり、「炎上弁護士」とも呼ばれていますね | ――ネット上で中傷の対象となり、「炎上弁護士」とも呼ばれていますね | ||
2012年3月、「[[2ちゃんねる]]」で誹謗(ひぼう)中傷を受けたと訴えてきた高校生を弁護することになりました。当時、2ちゃんでは、投稿の削除請求や発信者の情報開示請求に関して、裁判所の仮処分命令を掲示板にアップするのがルールでした。請求文書には、担当弁護士の名前も記載されます。アップされたその日の夜、弁護士事務所の近くの居酒屋でスタッフと食事をしていました。どんな反応か気になって、携帯電話で掲示板を確認したところ、私に対する数え切れない投稿があふれていました。 | |||
詐欺師、犯罪者、無能など、否定的なキーワードです。唐澤貴洋、詐欺師のような言葉を羅列するだけのものも多かったです。後にツイッターでも中傷の投稿が始まりました。 | 詐欺師、犯罪者、無能など、否定的なキーワードです。唐澤貴洋、詐欺師のような言葉を羅列するだけのものも多かったです。後にツイッターでも中傷の投稿が始まりました。 | ||
403行目: | 403行目: | ||
――どう対応したのですか | ――どう対応したのですか | ||
掲示板にスレッドを立てられ、大量の投稿がされる。だから、一つ一つ誰が投稿したのか、開示請求をして特定しようとしましたが、それ自体を非難され、中傷するような投稿内容から過激な投稿に変わっていきました。毎日のように「何時にナイフでめった刺しにする」などと投稿され、さすがに「これはやばい」と思って[[大崎警察署|警察署]]に相談しました。 | |||
私の名前を使った嫌がらせも続きました。ある地方自治体への[[お問い合わせ路線|ウェブフォームからの爆破予告]]です。あるとき、警察から、私のパソコンの通信履歴を見たいから、任意で提出してほしいと言われました。理由を聞くと、私の名前が爆破予告に使われていたのです。 | |||
ほかにもネット上に自宅の住所などがさらされました。弁護士事務所への出入りが盗撮され、[[唐澤貴洋と山岡裕明のご尊容開示事件|その写真もアップされた]]。実家の登記簿も公開されました。 | |||
――殺害予告をした人物はその後、逮捕されました。脅迫罪などで十数人が逮捕または書類送検されたそうですね | ――殺害予告をした人物はその後、逮捕されました。脅迫罪などで十数人が逮捕または書類送検されたそうですね | ||
問題の掲示板で逮捕者が出たことで、投稿の数は激減しました。ところが、[[唐澤貴洋掲示板|私に関する新しい掲示板]]が立ち上がり、そこにまた誹謗中傷が書き込まれるようになった。この掲示板の管理者が誰かは、決定的な証拠がなく法的な責任追及ができていない。この掲示板サイトは、海外のサーバーを経由しており、発信者の開示請求が事実上困難です。 | |||
441行目: | 441行目: | ||
――なぜそこまでこの問題にこだわるのでしょうか | ――なぜそこまでこの問題にこだわるのでしょうか | ||
ネット中傷のような集団リンチが許せないからです。弁護士になった原点でもあるのですが、私の弟は16歳の時自殺しました。1歳年下の弟は、知人グループに目をつけられ、パーティー券を配るよう指示されました。結局パー券は売れず、河川敷で集団暴行を受けました。私は、その夜はなぜか眠れず、家で映画を見ていました。弟は家に帰っていましたが、翌朝、部屋から出てこない。[[唐澤洋|父]]が合鍵か何かで部屋を開けると、弟は出窓にベルトをかけて首をつっていました。バックにはパー券がたくさん入っていた。弟がリンチにあっていたことは、彼の知人や警察から聞いてわかりました。 | |||
私は、悔しくて仕返ししたいのに何もできなかった。当時、高校を中退し、図書館で片っ端から本を読みあさるか、ただ当てもなく河川敷を走る日々から、定時制高校に入り直したばかりでした。自分は何もできなかった。だから戦う「武器」がいると、子どもながら感じた。その後、弁護士を目指しました。 | 私は、悔しくて仕返ししたいのに何もできなかった。当時、高校を中退し、図書館で片っ端から本を読みあさるか、ただ当てもなく河川敷を走る日々から、定時制高校に入り直したばかりでした。自分は何もできなかった。だから戦う「武器」がいると、子どもながら感じた。その後、弁護士を目指しました。 | ||
ネット中傷の問題を扱う以上、自分が攻撃の対象になります。殺害予告を受けた時も、周囲には「大丈夫です」と言っていても、しんどかった。お酒を大量に飲まないと寝付けず、暴飲暴食で体重もかなり増えました。でも弁護士をやめようとは思っていない。弟の時に感じた理不尽をネット中傷に感じます。こちらは死ぬ気でやっていますから。匿名で人権を侵害する人たちとは、徹底的に戦うつもりです。 | ネット中傷の問題を扱う以上、自分が攻撃の対象になります。殺害予告を受けた時も、周囲には「大丈夫です」と言っていても、しんどかった。お酒を大量に飲まないと寝付けず、暴飲暴食で体重もかなり増えました。でも弁護士をやめようとは思っていない。弟の時に感じた理不尽をネット中傷に感じます。こちらは死ぬ気でやっていますから。匿名で人権を侵害する人たちとは、徹底的に戦うつもりです。 | ||
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――炎上のきっかけは2012年3月、ネット掲示板「2ちゃんねる」上で、誹謗(ひぼう)中傷を受けた依頼者のために、自身の名前を出して書き込みの削除要請をしたことでしたね。 | ――炎上のきっかけは2012年3月、ネット掲示板「2ちゃんねる」上で、誹謗(ひぼう)中傷を受けた依頼者のために、自身の名前を出して書き込みの削除要請をしたことでしたね。 | ||
◆依頼者は少年で、掲示板に学校の成績をさらされるなどの嫌がらせを受け、相談を受けました。当時は削除要請や発信者情報開示の依頼は掲示板上で行うことになっており、内容がすべて公開されている状態でした。そこで名前を出していた私が標的になったようです。要請して数時間後に掲示板を確認すると、既に私をやゆ、中傷するような書き込みが多数あって、何だろうと驚きました。例えば、私がツイッターで今後の仕事のためにとフォローしていた著名人などをチェックして、そこにアイドルがいたから「[ドルオタパッカマン|アイドルオタク]]」と書いてレッテル貼りをする、というようなものです。当時、まだ「炎上」という言葉も定着していませんでしたが、荒れているなと危機感を覚え、ツイッターを鍵付きにして見えないようにしました。そうすると、掲示板で「本人が見てるぞ」とさらに盛り上がってしまい、投稿が止まらなくなりました。 | |||
内容はどんどんエスカレートし、「犯罪者」などと根も葉もないことを書かれ、私の名前を検索エンジンに入力すると、「詐欺」などのマイナスイメージの言葉が出てくるようになりました。「[[サジェスト汚染|サジェスト(予測変換)汚染]]」と呼ばれるものです。法的手段を講じようと発信者情報開示の依頼をするとさらにそれがネタになり、その年の7月ごろには具体的な日時を指定した殺害予告が書き込まれるようになりました。身の危険を感じ、さすがに警察に相談しました。 | |||
'''ストレスで眠れず、酒あおるように''' | '''ストレスで眠れず、酒あおるように''' | ||
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――被害はさらに広がり、家族や、現実世界にも及ぶようになったんですね。 | ――被害はさらに広がり、家族や、現実世界にも及ぶようになったんですね。 | ||
◆はい。両親の名前や実家の住所が特定されてネット上にさらされ、実家近くの墓にペンキがかけられたこともありました。弁護士事務所にも「実動部隊」が嫌がらせに来るようになり、郵便ポストに[[腐ったピラフ|生ゴミ]]を入れたり、鍵穴に接着剤を詰められたり、私の後ろ姿が盗撮されてネットに投稿されたりと、ありとあらゆる実害を受けました。事務所は3回も移転を余儀なくされました。さらに私になりすましてある自治体に爆破予告をする者まで現れました。被害は、最初の炎上から5年ほど続きました。 | |||
'''うつむき、おどおど…「面白かった」''' | '''うつむき、おどおど…「面白かった」''' | ||
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私の事務所の鍵穴に接着剤を詰めてその場で警察官に取り押さえられた少年と、その母親とも話しました。母親は着古したコートを着て、涙を流して私に謝罪しました。母子家庭で、少年は中学校で勉強についていけなくなり、通信制の高校に通っていました。母親によると、少年は常にインターネットを見ていて、母親がやめさせようとパソコンを取り上げたものの、バス代として渡したお金でネットカフェに行き、掲示板に書き込みを続けていたようです。少年のものとみられる書き込みを見ると、他のユーザーからあおられて、どんどん過激な投稿をしていた様子が分かりました。実家近くの墓を特定して写真を投稿したのもこの少年でした。 | 私の事務所の鍵穴に接着剤を詰めてその場で警察官に取り押さえられた少年と、その母親とも話しました。母親は着古したコートを着て、涙を流して私に謝罪しました。母子家庭で、少年は中学校で勉強についていけなくなり、通信制の高校に通っていました。母親によると、少年は常にインターネットを見ていて、母親がやめさせようとパソコンを取り上げたものの、バス代として渡したお金でネットカフェに行き、掲示板に書き込みを続けていたようです。少年のものとみられる書き込みを見ると、他のユーザーからあおられて、どんどん過激な投稿をしていた様子が分かりました。実家近くの墓を特定して写真を投稿したのもこの少年でした。 | ||
[[福嶋誠也|殺害予告で逮捕された20代の元派遣社員]]からは、「謝罪したい」と手紙をもらいました。怖い気持ちもありましたが、会ってみると、優しそうで繊細な印象の青年で、「投稿に対する反応が面白くてやった。申し訳ない」と言っていました。さらに詳しく聞くと、「友達がいなくて孤独で、掲示板に書き込んでしまった」と明かしました。 | |||
殺害予告を書き込んだ大学生からは、経緯や反省をつづった手紙をもらいました。現実逃避のためにネットに夢中になり、掲示板を利用するように。最初は私への中傷の書き込みを眺めているだけだったのが、人を傷つける凶悪な言葉を繰り返し目にするうちに感覚がまひし、いつしか自分も傷つける側になっていったそうです。殺害予告を「ネットのコミュニケーションの一つ」と表現し、私がどんな気持ちになるかは考えなかったと告白していました。ただ、最後に謝罪とともに「苦しめられる人から目を背けない大人になりたい」と書いてあり、少し救われました。 | 殺害予告を書き込んだ大学生からは、経緯や反省をつづった手紙をもらいました。現実逃避のためにネットに夢中になり、掲示板を利用するように。最初は私への中傷の書き込みを眺めているだけだったのが、人を傷つける凶悪な言葉を繰り返し目にするうちに感覚がまひし、いつしか自分も傷つける側になっていったそうです。殺害予告を「ネットのコミュニケーションの一つ」と表現し、私がどんな気持ちになるかは考えなかったと告白していました。ただ、最後に謝罪とともに「苦しめられる人から目を背けない大人になりたい」と書いてあり、少し救われました。 |