「恒心文庫:The Sealed Swordman "K"」の版間の差分

編集の要約なし
>化学に強い弁護士
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The Sealed Swordman "K" Ex Stage 2 -砲弾- 完
The Sealed Swordman "K" Ex Stage 2 -砲弾- 完


EX Stage 3 -偽り-
EX Stage 3 -偽り-
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「ところで名前は何ていうんだ?」「確かカール・サイモントン メンタルクリニックって名前だったな。院長は日本に来て20年になるベテランだって聞いてる。」
「ところで名前は何ていうんだ?」「確かカール・サイモントン メンタルクリニックって名前だったな。院長は日本に来て20年になるベテランだって聞いてる。」
こうして唐澤貴洋が起こした騒動は有罪判決という形で終わりを迎えた。その後、唐澤貴洋が刑務所から出てくる事は無かったという。
こうして唐澤貴洋が起こした騒動は有罪判決という形で終わりを迎えた。その後、唐澤貴洋が刑務所から出てくる事は無かったという。
EX Stage 5 -電脳-
「――今日も買いすぎたわね。」「誕生日パーティをするにはこれくらい必要じゃない?」「そう言われればそうなんだけどね。でも悪いわね、そんなに持たせて。」
「いいのよ、私はアンドロイドだし。」座間子と千刃剣魔はけんまの誕生日パーティのために買い出しに来ていた。
「じゃあそろそろ帰りましょうか。」「そうね――」千刃剣魔が何か言いかけると、そのまま前に倒れてしまう。
「えっ!?」驚きを隠せない座間子。再起動命令をしようと携帯を取り出すも、システムが命令を受け付けない。
そこにけんまから電話がかかってくる。「もしもし――」「座間子、大変ンマ!サーバーに攻撃されて色々大変な事になってンマ!千刃剣魔の方は大丈夫ンマか!?」
「それがさっき急に動かなくなって、再起動も出来なくなってるわ。」「やっぱり……」けんまは電話越しに落ち込む。
「とりあえず千刃剣魔を回収しに行くンマ。場所はどこンマ?」座間子はけんまに今居る場所を伝えた。けんまは電話を切り、車に山岡を乗せ、動かなくなった千刃剣魔と座間子を回収しに出た。
「なぁけんま、今回の攻撃ってどんな物なんだ?」車を運転する山岡が道中にけんまに尋ねる。
「ログを見たけど複数のサーバーからDDoSをされてるみたいンマ。」「DDoS攻撃…… 分かりやすく説明してくれないか?」
「DDoS攻撃を日本語に直すと"分散型サービス妨害攻撃"、つまり複数のコンピュータがサーバーを攻撃してサーバーを機能不全にする事ンマ。」
「なるほど。ところで攻撃元って分かるのか?過去の判例だと何らかの痕跡が残っていたが。」
「判例にかかれている事だけが全てじゃないンマ。今回の攻撃はTorっていう匿名化技術で攻撃元が隠蔽されていたンマ。」
「…また厄介な事になりそうだな。」「一応別のサーバーで解析してみてる途中だけど結果が分かるとは思わないンマ。」
そしてけんまと山岡を乗せた車は座間子の元へと辿り着く。山岡は動かなくなった千刃剣魔を担ぎ、車に乗せる。
けんまは拠点までの帰路につく途中に座間子に今回の事態を説明した。
「――という訳で今回大規模なサイバー攻撃が仕掛けられて千刃剣魔のシステムをホストしていたサーバーが過負荷を起こして制御不能になったンマ。犯人の目的はまだ何か分かってないンマ。」
「なぁけんま。」「何ンマ?」「今の話を聞いてたら別のサーバーに移転したら動きそうな気がするんだが。」
「確かに動くかもしれないンマが、千刃剣魔自体かなり特殊なサイバーエルフになっていて他のサーバーでホスト出来るか分からないンマ。
それに仮にホストできるとなってもかなり高性能なサーバーを使う必要があるからサーバーを借りられるだけのお金をすぐに用意出来ないンマ。」
「思ったより複雑だな……」「千刃剣魔は作った人が変態ンマね。」
けんま達は拠点に着き、千刃剣魔と荷物を下ろした。「さて、これからどうするか……」
「現状の解析結果だと攻撃元のURL程度なら推測出来たンマがその程度ンマ。IPアドレスはTorの性質上意味が無いンマ。」
「で、反撃をどうするかですが……」「今回のサイバー攻撃は対処しようと思えば出来るけど一時しのぎにしかならないンマね。」
「となるとやはりどうにかして攻撃元を特定して止めるしか無いか。」「一応攻撃の詳細も分析してるンマが識別子のような物が全てバラバラだから対処するのは難しいと思うンマ。」
「普通の防衛策は大して意味が無いって事か……」「有名なDDoSプロテクトを一通り導入してもそこまで効果が無かった事と見る限りそういう事になるンマね。」
「…そういや前に変なモノがあるって聞いたな。」「ンマ?」
「何でも人間の意思を一時的とはいえアバターに乗せてネット世界で活動出来る研究している所があるとか……」
「山岡、その情報どこで知ったンマ…?」「いや、知り合いの弁護士に聞いた噂だが……」「…社長ならこういう研究してそうね。」
「確かに会社で研究してる事にはしてるンマが……」「何か問題でもあるのか?」
「まだ安全性の問題で実用化はされてないンマ。」「安全性の問題……」
「そうンマ。精神の転送に特殊な装置を使うンマが、ネット世界で致命的なダメージを受けると最悪脳の神経が"焼けて"そのまま死んでしまう可能性があるンマ。」
「神経が焼ける……」「だから僕としては使ってほしくないンマ。」「でも他に手はあるのか?」
「現状はサーバーをネットワークから切り離して攻撃が収まるのを待つか、Torを拒否するしか無いンマ……」
「だったらTorを拒否すればいいのでは?」「でもそうすると千刃剣魔の通信の一部はTorを使ってるっぽい挙動をしてるから正常起動出来るか分からないンマ。
ソースコードもプロテクトが厳重にかけられているから僕じゃ改造出来ないンマ。それにこのサイバーエルフ自体構造が特殊で、基幹部分を改造する事自体想定されてない作りをしているっぽいンマ。
仮に改造出来るとしても記憶データだけ先に分離して、改造したソースコードからコンパイルしたバイナリを記憶データともう一度マージしないといけないンマ。」
「あー…… こんな事言われても俺は専門用語は分からんぞ。」「まぁ一言で言えばあのサイバーエルフ用のパッチを作るのは手間も金も掛かるって事ンマ。」
「聞いた感じやたら面倒な作りになってそうだな……」「実際その認識は間違ってないンマ。」
「となるとその装置を使うのが現状一番現実的な選択肢ね。」「座間子まで……」
「ただ俺と座間子だけだと戦力になりそうにない気がするな。カナチらを呼べるか?」「…分かったンマ。でもその装置が全員分揃うかか分からないンマよ。」
そして数日後、"A.C."含む4人が呼び出され、けんまの拠点に大型の装置を7台が搬入された。「…まさかプロトタイプを10台も作ってあったとは思わなかったンマ。」
「まぁ社長ならああいうのは作っててもおかしくはないからね……」そうして運び込まれた7台がそれぞれの部屋に運び込まれた。
「どうして部屋を分けたんだ?」「計算上あの消費電力の機械を同一の系統から電源を取るとブレーカーが落ちるンマ。だから別々の系統から電源を取るためにこういう置き方をしたンマ。」
「…それ本当に大丈夫か?火事になったりとかしたら元も子もないぞ。」「計算上は大丈夫ンマ。 …多分。」「多分って……」
「一応定格的には大丈夫ンマ。ピーク時の消費電力から計算されてるンマよ。」「何か不安だな……」
山岡は愚痴を漏らしながらも装置の中に入った。「無理だと思ったら躊躇なくログアウトするンマ。僕も見張ってるとはいえど限界があるンマ。」
けんまは皆に今回の作戦と危険についての説明をした。「それじゃあ行くンマよ!」けんまは制御用のコンピュータに起動命令を入力する。
「コードネーム:Shooting Star、ミッション開始ンマ!」けんまが命令を実行した瞬間、カナチ達の意識は装置を抜け出し、7つのリングを通り抜け電脳世界にダイブする。
今回呼び出された7人は電脳世界で再び顔を合わせる。
「今回は特別仕様のサイバーエルフを全員分用意したンマ。普通のサイバーエルフとは違うから普段と同じ感覚で戦う事が出来ると思うンマ。」
「なぁけんま、ちょっと気になるけどこの羽は何だ?」カナチは全員についているクリップのような羽について指摘する。
「それはサイバーエルフである証ンマ。物理法則が変に書き換えられないなら飛べるンマ。ここは会社のサーバーだから慣れるまで練習していいンマよ。」
急遽呼び出された"A.C."だったが、この状況に一番最初に適応したのは彼女だった。「なるほどな、アーマーで飛んでた時と大差無い感じか。」
"A.C."は意のままに浮かび上がり、曲芸飛行のように宙を舞う。次に飛べるようになったのは十七実だった。
「久々に飛んだ気がするわね。感覚も大体分かってきたわ。」十七実は空を全速力で飛ぶ。
「ずるいのです!私も飛ぶのです!」次に感覚を掴み、飛べるようになったのは電だった。
電は自由に飛び回る二人を追いかけようとしていた。「多分こういう事じゃない?」「泳ぐ時の応用でいいのかな?」
六実と座間子も飛び方が分かったのか、恐る恐るではあるものの地面から足を離す。
「少し勢いをつければ…!」カナチは助走をつける事で飛べるようになった。
最後に残されたのは山岡だった。山岡は身体に力を込めて飛ぼうとしていたが、いつまでも飛べず、"A.C."に指摘される。
「そんなに力を込めても飛べんぞ。羽に力を少し入れて、他の所の力を抜いて、後は身体全体を持ち上げるような感覚で飛べるで。」
山岡は"A.C."の指摘通り飛び方を変えてみるとあっさりと飛べた。「…サンキュー。」「この程度は慣れれば簡単やで。」
そして全員が一通り飛ぶのに慣れた時、けんまから出撃の指示が出される。
「そろそろ出撃するンマ。ただ表から出ると敵の攻撃を喰らうンマ。ここは裏口から出るンマよ。」
けんまの指示通りカナチ達は裏口から出、路地裏を通りサーバーの玄関口がある表通りに出ると、おびただしい数の何かがサーバーであるビルを攻撃していた。
「アレはウィルスンマ。プログラムの影響で可視化されてるンマよ。」ウィルスを横目に目的地に向かおうとした瞬間、強烈なレーザー光線がサーバーに向けて発射された。
着弾すると同時に爆音が鳴り響き、辺りが揺れる。「な…何だ!?」
「今のは恐らくDDoSプログラムによる攻撃ンマね。会社のサーバーは開発途中のDDoSプロテクトシステムとアンチウィルスプログラムでどうにか守ってるから大丈夫だと思うンマが……」
「ところでアレをサーバーに導入するってのは出来るのか?」「アレは開発途中でまだ未完成な上に僕のサーバーじゃスペックが足りないンマ。アレは複数台のサーバーで動かしてるやつンマ。」
「そうか…… とにかく攻撃元を潰さないとどうにもならないと。」「そういう事ンマ。」「で、目的地は分かるの?」
「推測されるURLを座標に変換したところ、数km先にTorネットワークに繋がるゲートがあるンマ。そこからしばらく行った所に目的のWebページがあると思うンマ。」
「ならそこまで一気に……」山岡は空を飛んで一気に向かおうとする。「待つンマ!こんな所で高く跳ぶのは自殺行為ンマ!」「自殺行為って……」
「ここは電脳世界ンマ、サイバーエルフになってるのは山岡達だけンマが、サイバーエルフは他にいっぱい居るンマ。」
「それがどうした?」「当然中には悪意を持ったサイバーエルフもあるンマ。高い所を飛ぶとサイバーエルフやさっきみたいなウィルスに撃ち抜いてくださいって言ってるようなものンマ。だから飛行高度は抑えるンマよ。」
「なるほどな。」「あと低高度にも数は高空より少ないとは言えどウィルスが居るから随時倒していくンマ。」
「とりあえずそのゲート目指して進みましょ。」「そうンマね。場所はこの通りを1km程進んで、そこにある大きな交差点を左に曲がった先にあるンマ。」
カナチ達は他のサイバーエルフに襲撃されぬよう、20cm程浮き上がり、滑るように飛びながらインターネットを進む。
まるで東京の中心部のような交通量があり、一つ一つがWebページやIoTシステムなどを意味する摩天楼の下、大量のデータを積んだであろう大型トレーラーや、一般市民が使っているであろうサイバーエルフが乗った車などを横目にカナチ達は突き進む。
そして次々と迫りくるウィルス。ウィルスは様々な姿をしており、例えば工事用ヘルメットを被ったものや、鳥の頭に直接羽が生えたようなもの、両腕が剣になったものなどが居た。
しかしそんなウィルスもカナチ達7人の前では無力で、長くても5秒程度で次々と処理(デリート)されていった。
彼女達が通った跡にはウィルスの残骸のみが残されていた。「けんま、あとどれくらいだ!」「2つ先のブロックンマ!」
カナチ達は引き続きウィルスを倒しながら進んだ。
そしてついに禍々しい風貌をしたゲートの前に立つ。「なぁけんま、Torネットワークってこの門みたいに禍々しいのか?」
「本来は全く違うンマ。でもこの先のネットワークはどうもかなりダークなWebサイトとかに繋がってるっぽいンマね……
他のTorゲートは横浜の中華街の門や鳥居みたいにそこまで変なデザインじゃないはずンマ。とりあえずこの先はTorネットワーク、これを着てほしいンマ。」
カナチ達に膝辺りまで隠れるローブが支給される。「そのローブはTorネットワークで個人を識別しにくくすると同時にTorネットワークへの接続を補助するプログラムになってるンマ。」
全員が支給されたローブを着る。「それと、目的地に着くまでに騒動を起こさないでほしいンマ。」「どういう事?」
「Torネットワークの住民は妙な一体感の下相手を信頼しているンマ。だから騒ぎを起こされると住民からの綜攻撃されるかもしれないンマ。これはここみたいに表のやつなんかよりも、もっと熾烈な攻撃になると思うンマよ。」
「ウラの世界の流儀はよく分からんな。」「世の中には知らないほうがいい事もあるンマ。」「とりあえず進みましょう。」
カナチ達がいざTorネットワークに足を踏み入れると、辺りの空気が一瞬にして変わった。
「…スラム街のような雰囲気だな。」「見た感じここはかなり異質ンマね……」「で、目的地はどこだ?」
「この通りを5km程まっすぐ進んだ先にあるンマ。」「よし、そこまで突っ切るぞ!」カナチ達は先程と同じように移動を再開する。
表世界とは違い、ビルの看板に掲げられた文字は"アイス売ります"や"草手押し可"などの麻薬販売の隠語や、簡体字やキリル文字などが書かれ、表の世界とは違う事を感じる。
通りで話をするサイバーエルフも日本語よりロシア語や中国語などの外国語を多く話している印象があった。
(警察はこの無法地帯を取り締まる気はあるのか?)山岡は自身の正義感からこの無法地帯をどうにかしたいという気持ちがあったが、けんまに言われた通り厄介事を起こしたくないので今は一旦無視する事にした。
「何か出てくるウィルスが強くなってないですか?」カナチ達は先程に引き続きウィルスを処理(デリート)しながら進んでいたが、道中で出てくるウィルスは明らかに先程より強くなっていた。
「Torネットワークだから身元を隠せるし厄介なウィルスが増えているのも事実ンマね。この中にはランサムウェアもあるみたいだから負けちゃ駄目ンマよ!」
「ランサムウェアまであるのか……」「暗号化されると僕でも復号化は難しいンマ。」「倒されないよう用心しないとね。」
禍々しい世界をカナチ達は更に進む。
しかし目的地まであと僅かという所で大型のウィルスが行く手を阻む。「後少しなのに!」「仕方ない、さっさと倒すぞ!」
7人はあっという間に散開し、ウィルスを囲む。「デリート…… デリートスル……」「ウィルスが喋ったンマ!?」
ウィルスが言葉を発した事に驚くけんま。すぐに相手を解析すると、ウィルスとは違った結果が返ってきた。
「コイツはよく見たらウィルスじゃないンマ!ウィルスっぽい挙動をするサイバーエルフンマ!」「サイバーエルフか……」
「とりあえず倒せば大丈夫なんだな?」「コイツの目的はウィルスに感染させる事ンマ!」「よし、倒すぞ!」
謎のサイバーエルフは散らばったカナチ達を排除するため、片腕をバルカン砲に変形させ、辺りを撃ちながらカナチ達を倒そうとする。
カナチ達は一斉に飛び上がり、弾丸を避ける。流れ弾は無関係なサイバーエルフや建物に当たり、他のサイバーエルフは逃げ出す。
一部のサイバーエルフは謎のサイバーエルフに攻撃するも、返り討ちに遭い、そのまま処理(デリート)される。
「どうもコイツは自分以外を敵として認識しているみたいンマ!」「ならばウチが!」
"A.C."は構えた杖にエネルギーを細長く纏わせ、急降下しながら斬ろうとする。「援護します!」
六実もサイバーエルフめがけて弓を引き、炎の矢を飛ばす。「ムダダ!」謎のサイバーエルフはバリアを展開してこれを防いだ。
「一発で駄目なら……」電は両腕の武器を構える。「何発も撃つまでです!」電の武器腕からは無数もの弾が放たれる。
弾は着弾し、土煙を上げるも、土煙が晴れると謎のサイバーエルフの姿は無かった。
「上よ!」座間子はアイスジャベリンを飛ばし、真上からの急襲を防ぐ。
攻撃を阻まれた謎のサイバーエルフは手元に鎌を呼び出し、高速回転させながら投げた。
投げられた鎌は次第に空気の刃を形成しつつこちらへ飛んでくる。「こんな物!」山岡は斬撃弾を飛ばし、空気の刃ごと鎌を斬り裂いた。
これを見て謎のサイバーエルフは右腕を刀に変形させ、山岡に斬りかかろうとする。「そうはさせません!」十七実は腕の刃で斬り裂こうと回転しながら謎のサイバーエルフに突っ込む。
謎のサイバーエルフはこれをアーマーで受け止めるも、刃はしっかりとアーマーに食い込んでいた。十七実は謎のサイバーエルフを蹴飛ばして刃を抜く。
謎のサイバーエルフは姿勢を崩し、上からカナチが割木斬で喉元を貫こうとセイバーを振り下ろす。
謎のサイバーエルフは回避行動を取るも、完全に回避する事は出来なかった。セイバーの刃は左肩に突き刺さり、刺された箇所を中心にデータが少し崩壊する。
しかし謎のサイバーエルフはそれを気にせず立ち上がる。ここは電脳世界であり、例えデータが損傷しても、コンピュータが認識出来る限りは消滅しないのだ。
データが損傷した左肩の一部は消滅するも、左腕は問題機能していた。そして謎のサイバーエルフは一番近くに居たカナチに墨を吹きかける。
「何だ!?」突然の奇襲で視界が奪われるカナチ。そのままカナチに追撃しようと腕をドリルに変形させたが、六実に変形させた腕を撃ち抜かれて阻止される。
「シツコイ…… スッゾオラー!」謎のサイバーエルフは右腕にグローブを装備し、近くに居た電を殴る。「痛っ…!!」
ところが、殴られて痛かったのは電だけではなかった。全員である。「何があったンマ!?」
けんまは慌てて全員の状況を確認すると同時に相手が何をしてきたかを探る。全員が殴られた衝撃でよろけるも、何とか持ちこたえる。
「ダメージは許容範囲内…… よし、大丈夫そうンマね。」「けんま、今の攻撃は?」「今の攻撃は"シンクロフック"ンマね。」
「何だそれ?」カナチは謎のサイバーエルフの攻撃を避けつつ問う。
「今の攻撃は元々サイバーエルフ同士で戦わせるプログラムがあるンマが、それのデータのうちの1つンマ。中身は殴られた相手以外にもダメージを与えるプログラムンマね。」
「また厄介な物が出てきたわね……」「どうやら相手が隠し持っていた手段はこれだけじゃなさそうだぞ。」
謎のサイバーエルフは背中にミサイルマウントを装備し、一斉に発射する。
放たれたミサイルは他のメンバーを無視してカナチと山岡に向かって飛んでいく。二人は飛んできたミサイルを片っ端から斬っていく。
カナチと山岡の処理をミサイルに任せ、残ったメンバーを処理するために右腕を戦斧に変形させ、そのまま薙ぎ払う。
座間子達は飛び上がって回避する。「二度目は無いのです!」電は謎のサイバーエルフに向かって電撃弾を放つ。
謎のサイバーエルフは戦斧で受けようとするも、放たれた弾は電気を帯びているため、戦斧を通して感電させる。
謎のサイバーエルフの右手はこのダメージで左肩と同じように崩壊する。「多分これで大丈夫なのです!」
しかし謎のサイバーエルフは未だ抵抗を続ける。今度は左腕を大鎚に変形させ、回転しながら突っ込んでくる。
「そんな攻撃は……」十七実は謎のサイバーエルフの頭上まで飛んでいき、両腕を合わせて斧にしてそのまま脳天めがけて振り下ろす。「見切りましたよ!」
寸前の回避で脳天直撃は避けられたものの、十七実の斧は左腕を斬り落とした。謎のサイバーエルフの左腕全体が崩壊し、データを維持出来なくなる。
「今よ、とどめを!」「俺がやる!」山岡は謎のサイバーエルフに着ていたマントを被せる。
「お前ののぞみはこの剣によって打ち砕かれる!」山岡は居合斬りの要領で謎のサイバーエルフを斬り裂く。
謎のサイバーエルフは全身を維持出来なくなり、消滅する。「…エネミーデリート。」山岡は抜いた剣を鞘に収める。
「さて……」山岡は辺りを見回す。「騒動を起こすなと言われた訳だが、どうやら変な心配はしなくていい感じだな。」
ビルや屋台の影では今の戦いを見ていたサイバーエルフがそこそこ居た。彼らはカナチ達を攻撃するどころか拍手すら巻き起こっていた。
「前々から居座っていた邪魔者を倒してくれてありがとな!」隠れていたサイバーエルフが謎のサイバーエルフをデリートした事に感謝していた。
「とりあえず目的地に向かいましょ。」カナチ達は再び目的地に向かって進み出した。
そしてしばらく進んでようやく目的地にたどり着いた。「まるでスラム街のビルみたいだな……」
カナチ達目の前にあったのは、まるでホームレスやヤクザが占領してそうな怪しげな雰囲気を持つ廃ビルのような建物だった。
「本当にここなのか?」「URL的にはここンマ。」「ひとまずオレが行く。」
カナチはフードを深く被り、セイバーのスイッチを切ったうえで片手に持ち、扉を開けて中に入る。
(来るなら来い!片っ端から斬り刻んでやる!)敵を警戒して中に入ったカナチだったが、1階には誰も居なかった。
「…中も外見通りって感じか。とりあえず来ても大丈夫だぞ。」山岡達も武器がいつでも使える状態にして中に入る。
ビルの中も切れかけの蛍光灯が空間を照らし、壁にはヒビが入っており、いつ倒壊してもおかしくないような雰囲気だった。
「データを解析しているンマがどうも低階層には目立った反応は無いンマ。」「ならエレベーターで……」
「ちょっと待て。」エレベーターを使おうとするカナチを止める山岡。
「ここは敵の本拠地だ。しかも狭い閉鎖空間、おまけに電脳世界ときた。ここで仮に襲撃されたらどうなるか分かるよな?」
「言いたい事は分かった。階段を使えって事か。」「あぁ。ただここは電脳世界で、しかも飛べるから体力の問題は無いと思うぞ。」
「分かった、階段で行こう。」カナチ達はエレベーターの隣にあった階段を使い、ビルを上っていく。
そして最上階である6階に着く。「反応を見る限りではここに誰か居るンマ。」「しかし何も無いな。もしかしてここは囮なのでは――」
突如辺りがワイヤーフレームと化し、線は次々と形を変えていく。「奇襲か!?皆構えろ!」
バラバラに分解された線は再び部屋の形へと構成されていく。同時に線の一部は人の形に変化していく。
「ヤッホー!サダナッチだヨ❤ お前ら全員あの世に送る 覚悟しろ無能😆👋 ジャミンガーにいじめられたの?😯かわいそうに😩」
「何だ…!?」「けんまさん、アレは一体……」「多分サイバーエルフンマが……」「それにしては羽が生えてないわね……」
「今解析を試みてるンマ。」「ジャミンガーってさっきのサイバーエルフの事か?」「恐らくそうンマ。まさかコイツがさっきのを…?」
「サダナッチを無視するなんて許せないんだ☹殺してやるからとっとと倒されてね😊」
そしていきなりサダナッチと名乗る謎のサイバーエルフは増殖を始める。
「ヤッホー!サダナ「ヤッホー!サ「ヤッ「ヤ「ヤ「「「ヤッホー!サダナッチだヨ❤ 」「お…おい……」
サダナッチは大量に増殖し、その数70体近くだった。「何この数……」「一人で10体くらい倒せばいけるか…?」
「やるしかない、手分けして倒すぞ!」「「「「「「「逆らうなよ😠」」」」」」」
サダナッチと同時に散らばるカナチ達。「焼いてやる!」六実はサダナッチに向かって炎の矢を連射する。
「何だこの攻撃わ😆」炎の矢はサダナッチの腹を掠める。「まだよ!」六実は続けざまに3発追加で矢を射る。
「!!」サダナッチのうちの一体がノイズを発して処理(デリート)される。
(私は裏に回れば…!)座間子は泳ぐように浮き上がり、相手の隙をついてサダナッチの裏に回る。
「はっ!」槍を両手で大きく振り下ろし、真っ二つにして処理(デリート)する。
「ちょこまかと小賢しいのです!」電は武器腕から大量の弾を扇状に展開して弾幕を張る。
流石に一発では処理(デリート)出来ないが、複数のサダナッチにダメージを与える。「十七実さん!」
「とどめは任せて!」十七実はフォレストボムを放ち、電が撃った敵を一掃する。
しかしサダナッチはこれらを一切気にする様子はなかった。「この攻撃は避けられないだろ😆」
サダナッチの一部は身体を青く変色させ、そのまま天井に向かって水の弾丸を放つ。
その直後、カナチ達の頭上から矢のような雨が降り注ぐ。まるで針のように硬質化した雨はそれぞれのアーマーに突き刺さる。
「ぐおっ!!」「大丈夫ンマか!?」「…一応は大丈夫だ。」「私もまだなんとかなってるわ。」
「…ダメージ許容範囲内ンマね。でも一応……」けんまはキーボードを叩く。
「リカバリープログラムを走らせたンマ。これである程度ダメージは修復されたンマ。」
「そんな」真似をしても無駄だぞ😊」多くのサダナッチは身体を緑色に変色させる。「何か来ます!」
変色したサダナッチはバスターから無数の種を放つ。「ああああああっっっ!!!」「い…電!!」
電は周囲にたくさん居たサダナッチから大量の種を浴びせられる。「ダメージ許容範囲超過、すぐログアウトするンマ!」
電の精神は電脳世界から脱出し、その直後に電脳世界に残された電のサイバーエルフは崩壊した。
「悔しかったら、😰ちゃ~んと訓練をしましょうネ~ꉂꉂ😆ꉂꉂ😁✨」「あの野郎…!!」
「落ち着くんやカナチ、挑発も相手の策の一つやで。ウチかて今の発言にはカチンときたわ。だから……」
"A.C."は杖を構える。「こうしたらええんや!」杖の先からリフレクトレーザーが数発放たれる。
放たれたレーザーはサダナッチのうちの幾つかに跳弾しつつ当たる。レーザーが当たったサダナッチはコアを貫かれたように崩壊した。
「こんだけ倒してもまだ10体ちょいか……」サダナッチを着実に倒しているものの、まだ数は多い。
「途中報告ンマが、ある程度解析ンマ。…どうやらこのサイバーエルフは禁忌の手段を使ってるみたいンマ。」
「禁忌の手段って?」「解析結果によると、どうもあのサイバーエルフにはウィルスのソースコードが混ざってるンマ。」
「ウィルスだと!?」「それって……あのウィルス?」「そうンマ。だからあんなに大量に増殖出来るンマ。見た感じ事故増殖するタイプの物が混じっている可能性が高いンマ。」
「何でウィルスのソースコードなんかを……」「分からないンマ。でも普通のサイバーエルフなんかよりも厄介なのは間違い無いンマ。」
「ウィエウスだというと俺らにも感染する可能性があると。」「一番厄介なのがそれンマ。ウィルスが混ざっている以上どうなるか分からないンマ。」
「どっちにしろダメージは受けれないという事になると。」
「そういう事ンマ。一応会社のサーバーで使っているアンチウィルスソフトが使えるか試してみるけどTorネットワークを越えた先だから使えるか分からないンマ。」
「何れにせよ助けにには期待しないほうがいいな。」「小細工なんて通用しないぞ🙃ハッカーをナメるな🤬」
「ハッキング能力だけで言えば僕の方が上だと思うンマ……」サダナッチは隊列を組み始める。「厄介なのが来るぞ!」
山岡はこれまでの経験から次の攻撃が厄介な物になると感じ、注意を促す。「逃さないんだ😊」サダナッチの大半は身体を紫色に戻し、バスターを構える。
直後、一斉に発砲し、大量のキャノン砲がカナチ達を襲う。
カナチと山岡は経験と観察眼で攻撃が来るタイミングが何となく分かっていたがため避ける事が出来たが、残りの4人は攻撃が直撃してしまう。
4人の中でも"A.C."が受けたダメージが特に大きく、防御に使った機械杖ネツァクが破損した。「また壊れてしもたな……」
「バックアップデータがあるンマ、少し時間は掛かるけど復旧は出来るンマよ。」
「いや、いい。この状況で復旧に時間が掛かると結構不利なんでな。代わりにアレを頼むで。」「アレって……」
「アレと言ったらアレや、ビーストフォームや。」「切り札をもう使うンマ!?」「今使わなどうにもならんやろ。」
「しょうがないンマ…… 起動準備したンマよ。」"A.C."のアーマーから「Beast Form Ready……」との合成音声が発せられる。
「アクティブ!」直後、"A.C."のアーマーからノイズが吹き出る。「Advanced Form "Beast"」
合成音声が発せられると同時にノイズが発散し、かつてカナチと戦った時の爪を携えたあの姿となった。
「その姿……」「安心しろカナチ、あの時と違って理性は残ってるで。」"A.C."はそう言うと、爪を展開し、サダナッチの集団へと突っ込んでいった。
当然サダナッチは"A.C."を対処しようとするも、鹿のように避け、虎のように爪で引き裂く"A.C."の前には無力だった。
サダナッチの内の一体は顔を歪める。「もう手加減しないぞ😡」サダナッチ達は一斉に羽を光らせ、オーラのような物を放つ。
「!!」カナチ達は地面に叩きつけられ、強烈な重力で立ち上がれなくなる。「何だ……コレ……」
「物理法則を書き換えられたンマ!急いで元に戻すンマ!」けんまは勢いよくキーボードを叩く。
「確かリファレンスに書かれていた書き方は……」けんまはコンピュータの画面上に複数のコマンドを並べていく。
「これで元に戻るはずンマ!」けんまがキーボードを叩き終えると同時にカナチが動けるようになった。
サダナッチは電撃弾でカナチ達を処理(デリート)しようとしていたが、寸前の所で回避する。だが、すぐにカナチ達は再び地面に叩きつけられる。
「何だ今のわ😛抵抗は無駄だぞ🤣」けんまは再び物理法則の書き換えを試みたものの、すぐにサダナッチによって書き換えられる。
「ちゃ~んと勝てる相手を選ぼうネ🤣」「何あのハック速度…… まさか考えた事をそのまま入力する装置を使ってるンマか……?」
「そ……そんな装置……ある……のか……?」カナチは強烈な重力に耐えつつ問う。
「元々ALSの患者向けに作られた装置があるンマ。でもあれ程の入力速度は出ないはずンマが……」
「飯塚軍最強🤪飯塚軍最強🤪」サダナッチは物理法則を書き換えてカナチ達を有利にしようとけんまを煽る。
「腹立つンマ……」「出来損ないは仲間が処刑されるのを指を咥えて見てろよ😂」
サダナッチはまず山岡を処理(デリート)するために山岡の周囲に集まる。「じゃあ消えてね☺」
「クソっ…!仕方ない、戦線離脱する!」山岡はこのままだと処理(デリート)されると思い、ログアウトする。
もぬけの殻となった山岡のサイバーエルフに紫色の身体となったサダナッチからキャノンの一斉砲火が浴びせられる。
撃たれた山岡のサイバーエルフは跡形もなく消滅した。「ウチは……まだ……諦めては……」
"A.C."はサダナッチに反撃しようとするも、なんとか持ち上げた右腕を踏まれる。
「ワイに逆らうだけ無駄やで😝」「ぐあっ!!」ただでさえ上げるのが辛い腕を踏まれ、身動き出来なくなる"A.C."。
「次はお前だ🤓」何とかして抗おうとするものの、一切身動きが取れない"A.C."。
サダナッチは身体を緑色に変色させ、一斉に銃口を向け、そのまま"A.C."に向かって大量の種が発射される。
一発のダメージはそこまで高くないものの、これだけ数が多いと話は別で、30体以上が一斉に攻撃するとなると一瞬でダメージが許容範囲を超えた。
「緊急離脱するンマ!」"A.C."はけんまによって強制ログアウトさせられる。ログアウトと同時に"A.C."のサイバーエルフは崩壊した。
けんまは引き続き必死に物理法則を書き換えようとするものの、サダナッチの妨害によって尽く失敗する。
「バックドアでも無い限り負けそうンマ……」けんまは諦めかけるも、次こそはと抵抗をやめなかった。
「私も……諦めては……」床に叩きつけられて動けない六実だったが、なんとか炎の弓をサダアンッチの方へと向ける。
放たれた炎の矢はサダナッチに向かって飛んでいくも、物理法則を自裁に操るサダナッチの前では無意味だった。
炎の矢の周囲の物理法則を書き換え、急速冷却する事で炎の矢を無力化する。「ついでだ🤩」
サダナッチは六実の周囲の温度を急激に下げ、まるで瞬間冷凍するかのように冷やす。
一瞬の出来事に対処出来なかった六実だが、凍る寸前にログアウトした事で一命を取り留めた。
残されたメンバーはカナチと座間子と十七実の3人。「せっかくだ、ちょっと遊んでやる😀」
サダナッチは突如3人の重力を書き換え、まるで重力が上向きになったかのように3人が抵抗していた力を使って吹き飛ばす。
「ワイをナメるなよ😤」サダナッチは再び隊列を組み、一斉に身体を赤く変色させ、火炎放射で炎の壁を作る。
カナチは動体視力でこれを捉えて急降下し、座間子は水の壁を張って対処するものの、十七実は回避手段が無く、そのまま被弾してしまう。
十七実は焼かれる苦痛を味わうも、処理(デリート)される寸前にログアウトする。
「残されたのはオレと座間子だけ…… 一体どうすれば?」「久留米大学の医学部を甘く見ないほうがいいぞ😁」
その時どこかから手紙がミサイルのように飛んできてサダナッチの足元に刺さる。
サダナッチが拾い上げて読んでみると、内容はサダナッチのアイデンティティをボロクソにする内容が書かれていた。
「久留米大ごときが調子に乗るな 阪大院卒をナメるなよ」書かれていたのはたったこれだけなのだが、自分が天才だと思っているサダナッチには十分効く内容だった。
「ワイは天才じゃぁぁぁ!!!」どこの誰から送られてきたか分からなかったが、サダナッチは腹いせにカナチ達に当たろうとする。
サダナッチは30体程度の集団で焼こうとしていたのだが、引き金を引いた途端、どこからともなく極太のビームが発射され、群れていたサダナッチを一掃した。
「アレは……」「会社のセキュリティソフトが上手く機能したンマか…?」
カナチとけんまがビームに釘付けになっていたが、座間子は足元に落ちていた別の手紙に気付く。
「これ…… けんまさん宛みたいよ。」「ンマ?」けんまが手紙を読むと、次のような事が書かれていた。
「GB No.3 余裕アリ サイバーエルフホスト可能」たったこれだけの内容だったが、けんまは会社のサーバーで千刃剣魔がホスト可能だと知り、会社のサーバーにデータを転送するコマンドを書いた。
サダナッチは再びカナチ達を重力で縛り付ける。けんまはこれを戻そうとしたところ、妙な物を見つける。「…ンマ?これはもしかして……」
けんまは気になった妙な点を調査する。「これ……エクスプロイトを作れるンマか…?」
けんまは攻撃のためのコードを即興で書いていく。「このタイプの脆弱性は……前に公開されていたこの手法を用いて……書けば……」
ひたすらキーボードを叩き続けるけんま。「これで完成ンマ。多分これで……」けんはは作ったコードを実行させる。
電脳世界ではまるでソニックブームが通り過ぎたかのようにオーラのような物が空間を横切った。
直後、カナチ達を縛り付けていた重力が解放され、カナチ達は再び動く事が出来た。
「物理法則を書き換えたところで無駄だぞ😆」サダナッチはまた物理法則を書き換えようとするも、先程までとは違い、けんまに阻止されていた。
「もう許さないぞ😡」サダナッチは全員が身体を紫色に戻し、カナチに向かってキャノンを発砲する。
退路を全て塞がれたカナチは強引にセイバーでいなしつつ回避する。集まったサダナッチを何とかしようと座間子は必死に槍を振るう。
そうしてなんとか退路を切り開き、カナチはサダナッチの包囲網から抜け出す。
「ありがとうな、とりあえずオレも――」カナチはセイバーのスイッチを入れようとした瞬間、セイバーが崩壊した。
「なっ…!!」「嘘でしょ…?」セイバーのデータは先程の防御に使った際にウィルスに蝕まれており、それがきっかけで崩壊した。
「一体どうすれば……」「けんまさん、データのバックアップはあるの?」「あるけど"A.C."の時と同じく時間が掛かるンマ……」
「クソっ!ならオレはどうすれば……」武器を失った事を好機と見たのか、サダナッチは次々とカナチを処理(デリート)しようと攻撃する。
次々に襲いかかるサダナッチを座間子は槍一本で対処するものの、数が多くて対処しきれなくなっていく。
そしてついに対処出来なくなり、攻撃を防ぐ事が出来ないと思った時、どこかから聞き覚えのある声がする。
「邪魔するなぁぁぁぁぁ!!!!!!」
カナチ達の目の前に居るサダナッチの間を高速で横切り、その直後に進路に居たサダナッチは崩壊する。
「…お待たせ。」「千刃剣魔!」「会社のサーバーでホストしたンマ!これでDDoS関係なく作戦に参加出来るンマ!」
「間に合ったので。」「えぇ。」千刃剣魔はカナチの方を見る。「…あら、セイバーはどうしたの?」
千刃剣魔はカナチのセイバーが無い事に気付く。「実は……」カナチの先程の事を伝える。
「そういう事ね。分かった、私に任せて。」千刃剣魔がそう言うとコンソールを開いた。
"load battledata no 72794137"コンソールにそう入力し、実行すると千刃剣魔の手元にエネルギー剣が出現した。
「バトルデータの1つよ。Zセイバーって言うの。」カナチは千刃剣魔からセイバーを受け取り、さっそく起動する。
展開された楔形のセイバーはカナチの物と同じ感覚で扱えそうな物だった。「これでどうにかなりそうね。」
「さっきの一発でかなり数が減ってるはずよ。それに――」千刃剣魔はサダナッチの内の一体を指差す。
「あの"親玉"さえ潰せば他の個体も全て倒せるわ。」「どういう事ンマ?」
「技術的な事を話すと、本体が親プロセスで他の個体は子プロセスのプロセスツリーの構造になってるの。
で、子プロセスは親プロセスの稼働を前提にしている作りで親プロセスが死んだら強制終了される設計になってるから、本体を潰せばプロセスツリーごと潰せるわ。」
「何言ってるか全く分からんな……」「でもどれが本体か分かるの?」「任せて。」
千刃剣魔は再びコンソールを開き、何かのプログラムを実行する。するとサダナッチの内の一体の頭上に矢印が浮かびでる。
「これで問題ないでしょ?さっき作った脆弱性を使えばこれくらい出来るわ。」「さっき作った…?」
「さっき手紙をサダナッチが読んだでしょ?アレにウィルスを仕込んでおいたの。」「随分と古典的な手法ンマね……」
「一切警戒しないで読んでくれたから助かったわ。ウィルスチェックをされたらほぼ確実に引っかかる中身だったからね。」
「アイツがアホで助かった……」「誰がアホだ🤬」「カナチさん、取り巻きは私と千刃剣魔が対処します、あなたは親玉を!」
「分かった、やられるなよ!」三人はそれぞれサダナッチを処理(デリート)するために攻撃を再開する。
「数が減ったかと思ったか🙃残念、まだまだですよ😆」サダナッチは減った戦力を補充しようと再び増殖する。
しかしサダナッチの秘密を知った今、カナチはどうすればいいか分かっていた。
(まだアイツはマーキングされている事に気付いていない…… よし!)
カナチは邪魔しに来るサダナッチの間を通り抜け、親玉の下へと向かう。当然サダナッチも抵抗し、火炎放射や電撃弾などで妨害する。
しかしカナチはけんまのハッキングの補助もあり、先程の数倍の速度でこれらを避ける。「なっ…!」
急加速したカナチを前に驚きを隠せないサダナッチ。そして気付かぬうちに幻夢零の斬撃が身体を通過していた。
「あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」サダナッチは耳を劈くような絶叫と共に、全ての分身ごと処理(デリート)された。
崩壊したサダナッチの残骸から何かが落ち、カナチはそれを拾い上げる。「何だコレ…」「多分何かのデータだと思うンマ。解析してみるから送ってほしいンマ。」
カナチは謎のデータをけんまに転送する。「とりあえず私達もログアウトしましょう。」カナチ達は無人となったサーバーから脱出する。
カナチ達が戻ると、そこでは山岡以外がダウンしていた。
「全員精神的にダメージを負ってる。俺は致命傷を受ける前に離脱したからそこまで酷くないが他の皆はども今日一日は動けそうにないぞ。」
「まぁ頑張ったからな。サダナッチは無事デリートしたぞ。」「よくやった、想像以上に難しいミッションだったな。」
「多分この程度なら一日熟睡したら治ると思うンマよ。それとさっきのデータだけど……」けんまはノートPCを持って山岡の下に行く。
「どうもこのデータは詐欺に関わるデータみたいンマ。規模はよく分からないンマが、このデータはかなりヤバいのは僕でも分かるンマ。」
「…そのデータ、俺よりも警察に見せるべきなのでは?」「一応この後データを送るつもりンマ。」
けんまはパソコンを置きに部屋へ戻る。「さてと……」「ん?」「また買い出しに行くとするか。」「何でだ?」
「ほら…… 今回の件でけんまの誕生日パーティが流れただろ、だからそれの準備さ。」
「忘れてたけど一昨日がけんまさんの誕生日だったわね。」「……ンマ?」話を何も聞いていないけんまが戻ってくる。
「じゃあオレはここに残って皆の事を見ておくから行ってきな。」「けんまさん、千刃剣魔の再起動は出来た?」
「それなら今起動プロセスの最中ンマ。じきに起動するンマよ。」「そういや今回の攻撃元ってアレで合ってたのか?」
「サダナッチをデリートした途端攻撃が止んだから正解っぽいンマ。」「という事はアイツが犯人か。詐欺の件と合わせて罪は重い事になるだろうな。」
起動した千刃剣魔が部屋に入ってくる。「起動プロセス完了よ。」「エラー等は出てないンマ?」「コード0、正常よ。」
「問題ないンマね。」「じゃあ千刃剣魔さん、この間の買い物の続きに行きましょう。」「続きって前に買ったのは?」
「卵とかがダメになってたから買い直さないと。」「そういや千刃剣魔が落ちた後の記憶ってあるのか?」山岡は千刃剣魔異常終了したのを見たためけんまに尋ねた。
「コンソールを見た限りでは無いンマ。強制終了に近い事をされたから残っているほうが珍しいと思うンマ。」
「とりあえず行きましょう。」「分かった。」座間子達は再び買い出しに出かけた。
そして翌日、復活した皆と共にけんまの誕生日パーティを開く事にした。
休みの日という事もあり、けんまはゆっくりと寝ていたため、準備はサプライズ的に進められた。
「――そろそろ10時だな。」「けんまさんって休みの日はこんなに起きるのが遅いのですか?」
「そんな感じだな。遅い時は更に1時間近く遅く起きる時もあるが。」そう言ってるとけんまが起きてきた。
「おはようンマ……」けんまは寝ぼけていたが、クラッカーの音で目が覚める。
「「「「「「「お誕生日おめでとう!!」」」」」」」
「ンマっ!?」突然のサプライズに驚くけんま。「本当は一昨日やるつもりだったんだけどね。」
「まぁいいじゃないか、こうして出来た事だし。」「ケーキの準備は出来てるのです!」電が机に蝋燭を立てたケーキを置く。
そしてけんまは祝われながら蝋燭を消した。
「そういえば今思い出したけどサダナッチの件って誰か知ってるンマ?昨日例のデータを警察に提供したンマが。」
「さぁ…」サダナッチがあの後どうなったのかは誰も知らなかった。そしていつもの癖でテレビをつけるけんま。
するとそこで気になるニュースが流れていた。
「今朝、友人ら5人から合わせて150万円を騙し取ったとの疑いで、福岡県久留米市に住む大学生の定永紘幸容疑者が逮捕されました。
定永容疑者は、自宅で謎の装置に入った状態で発見され、意識が無かったため市内の病院に搬送されましたが、命に別条はないとの事です。
警察は定永容疑者の様態が回復し次第取り調べをするとの事です。」「あの装置……」カナチがテレビに映っていた装置に反応する。
「この間データが抜かれたって騒ぎになってたけどまさかアイツが抜いたンマか…?」「どういう事?」
「先月末くらいに会社にサイバー攻撃があって、その時に会社の開発途中の製品の設計図とソースコードが流出したって話になってたンマ。」
「どこから漏れたのか……」「今分かってる事としては開発担当のPCにウィルスか何かが仕掛けられてそれ経由で漏れた可能性が高いって事になってるンマ。
アクセスログを解析したところあの装置の情報も抜かれてたンマ。他に開発中のアンドロイドの情報も抜かれたって言ってたンマが……」
「今回偶然そのハッキングしてきた相手がアイツだったと。」「まだコイツが攻撃してきた犯人かは分からないけどその可能性は十分有り得るンマ。」
「でもどうして私達のところなんかに?」「私怨か何かだと思うンマ。ただ僕のサーバーは情報を公開している訳ではないンマが……」
「私怨?」「多分入社試験に落ちた怨み辺りだと思うンマ。大学生って事は内定が貰えなかったって可能性も推測出来るンマ。」
「だからってサイバー攻撃を仕掛ける必要は無いだろ……」「人間の怨みって時には恐ろしい事をするきっかけにもなるンマ。」
「なぁ、俺らのサーバーが攻撃されたって事はIPが漏れたって事になるよな。ならどこから漏れたのか見当つくか?」
「漏れたとしたら会社のバックアップサーバーのリストが一番怪しいンマね。僕のサーバーは性能が高いからある程度バックアップ用途でも使う事が出来るンマ。」
「なら他に攻撃されたサーバーってあるのか?」「ちょっと見てみるンマ。」けんまは携帯を触り、会社のデータを探した。
「あー…… どうも東京のバックアップサーバー群も攻撃されてたみたいンマ。」「ならそこから漏れた可能性が高いな。」
「でも本社のサーバーは無事だったんだろ?」「あの規模の攻撃をされる想定でセキュリティを組んでなかったから今回は僕のミスンマ。」
「まぁ人間誰しも想定外はあるからけんまさんは悪くないよ。」「結果として解決したから今回の事を教訓にセキュリティを組んだらいいしな。」
「そうンマね。」「とりあえずケーキを切り分けたから食べるのです!」そしてけんま達はケーキを食べ、誕生日パーティを楽しんだ。
定永だが、この後詐欺に加えて不正アクセスの罪も明らかになり、最終的に有罪判決が下されたという。
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