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== はじめに ==
== はじめに ==
 私は弁護士として、ネット上の法的問題をよく取り扱っています。専門家としてテレビでコメントする機会をいただくこともあります。弁護士として一般的にみなさんが想像されるような業務も数多く担当していますが、中でもネット問題に特に熱心に取り組んでいます。それは、私自身が過去にインターネット上で誹謗中傷や殺害予告を受けた経験があるからです。<br>
 私は弁護士として、ネット上の法的問題をよく取り扱っています。専門家としてテレビでコメントする機会をいただくこともあります。弁護士として一般的にみなさんが想像されるような業務も数多く担当していますが、中でもネット問題に特に熱心に取り組んでいます。それは、私自身が過去にインターネット上で誹謗中傷や殺害予告を受けた経験があるからです。<br>
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 そのためには、被疑者の名前をキーワードに検索エンジンで検索された場合に、検索上位にまとめサイトが来る必要があるのです。<br>
 そのためには、被疑者の名前をキーワードに検索エンジンで検索された場合に、検索上位にまとめサイトが来る必要があるのです。<br>
 そこで、早期に情報を収集し、他のサイトに先んじてまとめサイトを作る必要があります。こういった事情から、'''情報の真偽が確かめられる前に誤った情報が公開されやすい'''ともいえます。<br>
 そこで、早期に情報を収集し、他のサイトに先んじてまとめサイトを作る必要があります。こういった事情から、'''情報の真偽が確かめられる前に誤った情報が公開されやすい'''ともいえます。<br>
 過去、私自身もインターネット上で間違った情報を流され、その情報を鵜呑みにした一部マスコミが取材に来るということもあり、取材もなく誤報を流されたことがありました。<br>
 過去、私自身もインターネット上で間違った情報を流され、その情報を鵜呑みにした一部マスコミが取材に来るということもあり、取材もなく誤報を流されたことがありました{{原文ママ|取材に来ているのか来ていないのかわからない}}。<br>
 マスコミは情報の精査を何よりも大事にしていると考えていましたが、ときに急いで出そうとするあまり、誤った情報を入手してしまうこともあるという現実に驚きました。<br>
 マスコミは情報の精査を何よりも大事にしていると考えていましたが、ときに急いで出そうとするあまり、誤った情報を入手してしまうこともあるという現実に驚きました。<br>
 誰が言っているから、どこが言っているからではなく、その情報がなぜ正しいと思うのか考えること。それが情報を受け取ったときにもっとも大事なことなのです。<br>
 誰が言っているから、どこが言っているからではなく、その情報がなぜ正しいと思うのか考えること。それが情報を受け取ったときにもっとも大事なことなのです。<br>
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<div style="font-size:110%">'''ブログは自分が何者かになれる'''<br>
<div style="font-size:110%">'''ブログは自分が何者かになれる'''<br>
'''唯一の場所だった'''</div>
'''唯一の居場所だった'''</div>


'''唐澤''' 発信することに対する恐怖は湧きませんでしたか?
'''唐澤''' 発信することに対する恐怖は湧きませんでしたか?
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 米国の情報開示手続と用いた成功事例が存在するのですが、米国では弁護士費用が高額であり、一般の方がこの手続きを利用するにはまだまだハードルが高いでしょう。<br>
 米国の情報開示手続と用いた成功事例が存在するのですが、米国では弁護士費用が高額であり、一般の方がこの手続きを利用するにはまだまだハードルが高いでしょう。<br>
 クラウドフレアは、日本国内向けのサービス展開のため、日本国内のサーバ管理会社を用いてデータを保存していることが調査の結果わかっています。<br>
 クラウドフレアは、日本国内向けのサービス展開のため、日本国内のサーバ管理会社を用いてデータを保存していることが調査の結果わかっています。<br>
 日本の会社が関与して日本国内でサービスを展開している以上、違法行為にクラウドフレアが利用されているのならば、関与している日本企業も含めて情報開示について誠実な対応が求められます。
 日本の会社が関与して日本国内でサービスを展開している以上、違法行為にクラウドフレアが利用されているのならば、関与している日本企業も含めて情報開示について誠実な対応が求められます。<br>
 '''c)街中で誰でも自由に使える公衆Wifi{{原文ママ|「Wi-fi」。ハイフンが抜けている。}}'''も厄介です。身分の確認をきちんとせずに、インターネットの接続サービスを提供している公衆Wifiも存在します。このような回線を利用されると、発信者情報の特定が困難になります。<br>
 '''c)街中で誰でも自由に使える公衆Wifi{{原文ママ|「Wi-fi」。ハイフンが抜けている。}}'''も厄介です。身分の確認をきちんとせずに、インターネットの接続サービスを提供している公衆Wifiも存在します。このような回線を利用されると、発信者情報の特定が困難になります。<br>
 公衆Wifiの中には、パスワード設定していないところ、一度パスワード設定をした後、ずっと変更しないところもあります。<br>
 公衆Wifiの中には、パスワード設定していないところ、一度パスワード設定をした後、ずっと変更しないところもあります。<br>
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'''ネット依存とは'''</div>
'''ネット依存とは'''</div>


'''唐澤''' 渋井さんはもともと新聞記者をされていたんですよね。どういったきっかけでインターネットの問題に取り組み始めたんですか?
'''渋井''' 僕は1993年に長野日報に入社して、初めは車の免許がなかったので内勤だったんですよ。内勤ってパソコンを使うんですけど、単にシステムだけ見ててもつまらない。ここでなにができるだろうって考えていたときに、ちょうどシステム担当がインターネットに精通している人で、システムに関することからネットコミュニケーションの可能性まで教えてもらったんです。<br>
 1996年8月に、当時住んでいた長野県塩尻市が無料でネット回線を開放するサービスを開始したので、そのタイミングでネットを始めました。でもそのときはまだヤフーのページとかも何もなくて、ネットには情報が溢れているって聞いてたのに全然情報少ないじゃんって。<br>
'''唐澤''' ネットは世界とつながっているはずなのに?
'''渋井''' それで情報がないなら自分で情報を作っちゃえって。最初は興味のあった教育問題の発信をしていたんですけど、いまいち盛り上がらなかったんですよ。だけど、『朝まで生テレビ』で援助交際特集をしたときに、それに対して「女子高生って本当はそんな姿じゃないよ」というロフトプラスワンでのイベントを書いたら、援助交際している女子高生から結構反応があったんです。自分のことも取材をしてくださいとか、あるいはまだ援助交際はしてないけど、今後する気持ちはあるんだっていう子たちからもコメントが来て。ネットと家出・援助交際っていうものの相性の良さを感じたんですね。それがネット問題に取り組み始めたきっかけです。
'''唐澤''' 相性がいいとはどういう意味でしょう。
'''渋井''' 家出や援助交際をする子たちって、どこにも居場所がないんですよね。家庭や学校に居場所を感じられないから、自分の住んでいる地域や家族、学校以外の場所に行ける方法をずっと探しているんです。ネットは外の世界とつながれるものなので、自分の殻を破りたいと思っている子たちの受け皿だったんですよ。その頃からインターネットは居場所になっていたんだと思います。


<div style="font-size:110%">'''スマホ時代到来で'''<br>
<div style="font-size:110%">'''スマホ時代到来で'''<br>
'''ネットの利用者層にも変化が'''</div>
'''ネットの利用者層にも変化が'''</div>


'''唐澤''' 当時はまだネット黎明期だったと思うのですが、家出や援助交際する子たちってうまくネットを使いこなせていたんですか?
'''渋井''' 1990年代はパソコンがメインだったので、家庭でお父さんやお母さんがネットを使っているのを見て使い方を学んでいるんですよね。彼らはパソコンユーザーの家庭に育っているから、おそらくなんとなく使えちゃう。当時ネットを利用していたのは、ホームページが作れたり、ネットで情報収集ができる子たちだったんですよ。
'''唐澤''' つまりある程度ネットの仕組みがわかっていて、情報の取捨選択能力があったわけですね。
'''渋井''' そういう子たちは、ネットを利用するときに自分でリスク回避していたんですよね。援助交際で直接会う前に、こういう態度をとってくる人は危険だとか、あるいは安全だとか、言語化できないところで危険な目に遭わないようにしていたんですよ。仮に危険なトラブルがあったとしても、交番に駆け込んだり法律に詳しい人に聞くとか、自分でなんとかするって発想があったんですよね。
'''唐澤''' 自分の身は自分で守るという発想ですね。1990年代と比べると、今ネットを利用している子たちの層って変わっていますか?
'''渋井''' 今考えると、1990年代後半から2000年代前半にかけて相当変わったと思います。そのきっかけになったのがiモードの普及。iモードが普及する前って情報の見極めが上手な人だけがネットを利用していたんです。でも普及してからは、ネットの仕組みがよくわかっていなくても携帯で気軽にネットが使えるようになってしまった。しかも今では、誰もがスマホを使う時代でしょ?それによって情報の取捨選択がうまくない人、いわばリスク回避ができない人もネットを利用するようになったんですよ。
'''唐澤''' ネットの利用者の裾野が広がっちゃってるんですね。
'''渋井''' 言うなれば自分が危険な街に行くとして、最初のころ危険な街だって認知して行くから、どこが危険かって理解しているんですよ。だけどその危険な街が一般化されてきちゃうと、いろんな人が行っちゃうでしょ?中には危険だってことを知らない人もいる。一見いっぱいお店があって安全に遊べる街なんだけど、実は近くに危険なスポットがあったりしても、一般利用者にはわからないんですよ。
'''唐澤''' だから危険を回避できないんですね。それに今はスマホで24時間ネットが使えますし、昔と比べると1日のうちネットに関わる時間もぐっと増えましたよね。
'''渋井''' そうですね。昔は夜11時以降のテレホーダイを使ってダイヤルアップでネットを利用したりしていましたからね。当時のユーザーの方は時間はかなり限られていました。それ以外の時間はネット以外のアナログなコミュニケーションをとっていたんじゃないかな。
'''唐澤''' それが時代とともに生活においてネットの比重が大きくなっていった。よりネットへの依存度が高まってきていると言えますよね。どういう流れでそうなっていったんでしょうか?
'''渋井''' 2003年ぐらいに、ガイアックスで誰でもホームページが作れるようになったんですよ。これは人々がネットとの関わり方が変わるきっかけになったんじゃないかと思います。2004年に起きた殺人事件にもネットが深く関わっているんですよ。


'''唐澤''' 「佐世保小6女児同級生殺害事件」ですね。
'''渋井''' あの事件では、最初加害者が被害者の子にパソコンを教えていて、一緒にホームページを作ったんです。誰でも作れるいわゆるブログのようなものですね。でもリアルな世界でトラブルがあって、加害者はホームページのパスワードを知っているから、被害者が書いたブログの内容を書き換えたり嫌がらせして。結局はその延長で攻撃性が増していった。
'''唐澤''' ネットのトラブルが、リアルな世界にまで影響を及ぼすようになったと。
'''渋井''' 当時、文科省のネット教育っていうのは、「知らない人に気をつけよう」だったんですよ。出会い系に気をつけよう、チェーンメールに気をつけようみたいな。でもこの事件以降は「知っている人にも気をつけよう」教育にも変わるんですよ。
'''唐澤''' 友達同士でも気をつけようってことですかね。
'''渋井''' 知っている人の間でもネットのマナーが大事っていう、ネチケットですね。当時の新聞で、ネットでトラブルが起きたとき相手がどんな人だと怒りが継続するのかという調査を行っていたんですよね。それによると、ネット上だけで知っている人が相手だとトラブルがあっても怒りが継続しないんですよ。理由はネットを遮断すればいいから。でも身近な知り合いとネットでトラブルが起きたとき、ネットを遮断してもリアルな世界を遮断することができないから24時間怒りが増していくんですよ。だからネットの他人より身近な知り合いが相手だと怒りが継続してしまう。
<div style="font-size:110%">'''"ネット=居場所"に'''<br>
<div style="font-size:110%">'''"ネット=居場所"に'''<br>
'''なっている現状'''</div>
'''なっている現状'''</div>
'''唐澤''' そもそもどういう人がネットに依存しやすいのでしょうか?
'''渋井''' なにかしら「欠けている」と感じている人ですね。家族環境や仕事だったり、何かしら欠けたと思うとき、それを補うものがないと、ネットに依存しやすくなります。インターネットにある情報を見て、メットで友達と一緒にオンラインゲームをしていたとしても、プレイ中は一人なのでさらに孤立する。ネット上ではみんな楽しくしてるのに、それに比べて自分は孤独だよって。インターネットは本来であれば孤独を満たすための居場所。でもそこにいることでますます孤独な気持ちになってしまうこともあるんです。
'''唐澤''' 依存する人たちはなにを求めてるんでしょう。
'''渋井''' いろんな居場所の形があると思うんですけど、一つは「自己語らいの場所」ですね。たとえば自殺系サイトだったら、私はこんな体験をしたから死にたいと思うんだっていう体験だったり、自殺未遂をしましたよっていうことを語り合う。<br>
 あるいは自殺を止めようとする人が入ってきて、「自殺するなら俺が話を聞くよ」っていう場合もありますね。


'''唐澤''' その人たちは、居場所を見つけることがゴールで、孤独を感じることもあるけどそこにいれば安心できる?
'''渋井''' ゴールはないですね。そこにいることは安心だけれども、24時間張り付いていることはできないから不安は感じると思います。でも、とりあえずサイトにアクセスできれば、ちょっと安心できるんだと思いますね。<br>
 だから自殺系サイト関連の事件が起きると、プロバイダが自殺系サイトを規制して凍結でしょ。そうすると居場所がなくなって不安になっちゃう。下手したら死んじゃう人もいるくらい。
'''唐澤''' 居場所をなくしたらまた別の居場所を探さなきゃならないですよね。ネットの居場所の見つけ方ってありますか?
'''渋井''' ほぼ偶然見つけていると思いますよ。自分の状況に合うキーワードを入力して、それに引っかかったサイトがそのまま居場所になったりしますね。<br>
 たとえば1999年くらいから2000年の前半くらいって、リストカットの自傷系サイトが乱立した時期なんですよね。そのサイトにいじめられたから自傷しましたって人が集まってくると、いじめっていうキーワードが出てくるじゃないですか。そうするとそのサイトには自傷行為をしていないけど、いじめられた人も入ってくるんですよ。いじめが原因で自傷行為をした人がたくさんいると、その話題で盛り上がりますよね。<br>
 そのとき「私はいじめられたけど自傷行為はしていない」っていう人はどうすると思いますか?
'''唐澤''' 新たに、自傷行為はしていないけどいじめられた人が集まるページを作る?
'''渋井''' いや、自分も自傷するんです。自傷すればこのコミュニティに入れると思うんですよ。<br>
 そうなっちゃうと、たとえ自傷するほどの気持ちがなくなったとしても、その居場所から抜けたくないがために自傷し続けるんですよ。ネットだから自傷行為をしてなくてもしているって言えばわからないのに、それじゃあ自分の気分が乗らないんですよ。
'''唐澤''' 居場所がここにしかないって思いつめてるんですね。
'''渋井''' そのときに流行っているサイトに集まってきて、自分も同じような状態になりたいと思い同化していくわけですね。ただ、あまりにも人が集まりすぎると、今度は個別化したくなろ。さきほどの例でいうといじめられて自傷する人のサイトとかにどんどん分断していくんですよ。その度に新しいコミュニティのカリスマが生まれるわけです。
'''唐澤''' 先導とまで言わなくても、何となくコミュニティの空気を作る人が現れるわけですね。それってネット炎上が大きくなるときと少し似ているんじゃないかな。僕自身が炎上したときは、やはり誰かが先導する空気があって、それに周りが煽られて炎上が盛り上がっていると感じました。


<div style="font-size:110%">'''居場所を保つために'''<br>
<div style="font-size:110%">'''居場所を保つために'''<br>
'''競争が生まれることも'''</div>
'''競争が生まれることも'''</div>


'''唐澤''' 仮にネットに自分の居場所が見つけられたとしても、それに依存しすぎるとどうなっていくんですかね。
'''渋井''' 居場所に依存すること自体は悪くないと思うんですけど、僕は居場所っていうのは、居場所でない場所があることによって、初めて居場所になると思うんですよ。<br>
 極端な言い方をすると、24時間働けます的な状況にいるから、たまに羽を休められる場所がある。なので、ずっとその居場所に居続けてしまうと、今度はその居場所の平凡さ、変化のなさに耐えられなくなる。そうすると、今度は競争が始まるんです。
'''唐澤''' 居場所にいる仲間たちとの競争ですか?
'''渋井''' はい。たとえばインターネットの中で自傷行為のコミュニティがあったとします。そこでは、「いつから切ってるのか」、あるいは「どのカッターでを使ってるのか」とか、「まだコンビニのカッターを使ってるの?東急ハンズのカッターがいいよ」とか。同じ自傷行為でもそれ以外のなにかで争っちゃうんですよ。<br>
 本来コミュニティは癒やしの場所としてお互いつながっていたのに、それ以外で争っていくんですね。
'''唐澤''' 初めは居場所の中に同化していたものが、次第に分離や階層化していく。居場所だったはずなのに、ずっといることによって、居場所を居場所として維持するための努力をしなければならなくなるんですね。
'''渋井''' そう。ネットのホームページってより多くのアクセスが欲しいじゃないですか。だからアクセスを増やすためにリストカットの画像を送ったり、そのうち画像だけでは足りなくなると動画を送ったりするんですよ。<br>
 それは居場所を維持するためでもあるんですけど、「こんな状況の私をどうにかしてほしい」というSOSの意思も込められているんです。競争したい気持ちとSOS、2つの感情を含んでいるから複雑なんですよね。
'''唐澤''' 居場所を維持するために競争しているプロセスは、炎上にも共通しているものを感じます。僕は炎上事件の加害者に、炎上に参加したときの心理を聞いてみたことがあるんですよ。「今だったら同じことはしないけれど、そのときはそこにいることに興奮してしまった」と言っていました。初めは居場所としてネットに救いを求めていたはずなのに、いつの間にかその場所にいること自体が目的化しちゃうんです。いわば居場所を保つために競争し合って、その結果、炎上が過激化してしまうんですね。
'''渋井''' ネットの炎上は2000年代に流行ったヤフーチャットのなかの喧嘩部屋の心情にちょっと似てるなって思います。聴衆がたくさんいる中で口喧嘩してどっちが勝ったかを判定するというチャットがあったんですけど、どうすれば勝てるかはどんなメンバーがいるかで変わるんですよね。声が大きい人がついているから勝てるとか、知識が多い人がついてるから勝てるとか。基本的には大声で相手をバカにして、相手が反論できなかったら勝ちみたいなルールの部屋です。
'''唐澤''' 喧嘩が目的っていうのはすごい。それって喧嘩の中でなされるコミュニケーションが面白くてやっているわけですよね。いわば当たり屋みたいなもので、わざわざ当たりに行って、向こうも文句つけてきたら揚げ足とるっていう。それって炎上の構図と一緒ですよね。
'''渋井''' 一緒ですね。ただ喧嘩部屋はチャットのコミュニティだから、喧嘩している人同士が意外と仲良くしてて、たまに「こいつら実は仲良いぜ」みたいなのが暴かれちゃったりするんですよ。喧嘩が目的でいるけれども、本当に喧嘩してるわけじゃないっていうのはネットの炎上とは違いますね。


<div style="font-size:110%">'''身体的影響が'''<br>
<div style="font-size:110%">'''身体的影響が'''<br>
'''ネット依存の危険信号'''</div>
'''ネット依存の危険信号'''</div>
'''唐澤''' 僕は喧嘩チャットも炎上も結局コミュニケーションを消費しているだけだっていう点では似ていると思いますね。だんだん消費していること自体に依存してしまう。ネットに依存することで救いはあるんでしょうか?
'''渋井''' 依存はしている間は救いを感じるんじゃないかな。依存といってもライフライン的な依存と、病的依存っていうのは違うわけですよね。例えば水を飲むからといって決して水に依存しているとは言わないけど、あまりにも水を飲みすぎると依存になる。それと一緒で、ある程度の依存はライフラインとして必要だと思います。<br>
 問題は依存しすぎて居場所が平凡でつまらないものに見えた瞬間。そうすると精神的依存だけでなく身体的にも影響が及んでむると思います。
'''唐澤''' 依存先が平凡に見えたらちょっと危険信号だということですね。どこからが危険な依存になるのでしょうか?


'''渋井''' やっぱり身体的な依存ですね。たとえばスマホをいじりすぎて友達との約束を忘れたり、会社の仕事を忘れたりとか、ネットが原因で実社会との関係でトラブルが起こるようになってくる。そうなってくると危険信号かなって思いますね。


<div style="font-size:110%">'''依存をコントロールできるか'''<br>
<div style="font-size:110%">'''依存をコントロールできるか'''<br>
'''否かの見極めが重要'''</div>
'''否かの見極めが重要'''</div>


{{color|red|'''''執筆中'''''}}
'''唐澤''' ネットに依存している人が脱却したいと思ったら、具体的にどうすればいいのでしょう。
 
'''渋井''' 生活のリズムを自ら見直してネットをコントロールできるかっていうのがポイントだと思います。まずか1ヶ月間の生活のリズムを把握してください。それで、とりあえずここにネットは必要なかったよねっていう不要な利用を見つけて、最低限まで削っていく。それでコントロールできる状況であれば、おそらく病院などに行く必要はないと思います。自分自身をコントロールできる状態なのか、それを超えて病的な状態なのかという判断が必要になってきますね。
 
'''唐澤''' ネットに依存しているのが、自らの子供だった場合はどうします?
 
'''渋井''' まず親が子供の文化を理解すること。そもそもなんで子供がネットに依存してしまうのかって考えると、面白いからなんですよ。子供がネットのなにを面白がっているのかっていうことを理解するように努力してください。<br>
 よくネットは時間制限して使えっていうのを聞くんですけど、時間制限するにしても理由が必要なわけですよ。じゃないと子供が反発するだけです。子供の文化を理解した上で、宿題や外で遊ぶ時間の必要性を説明していくことが大切だと思います。
 
'''唐澤''' 誰でもネットを使うの当たり前になった今、なんらかで依存してしまうことは避けられないと思います。今後、私達はインターネットとどのような付き合い方をすべきなのでしょうか?
 
'''渋井''' 昔からテレビ依存やゲーム依存など、なにかと依存っていう言葉が使われてきました。でも今の時代は、ライフラインとしてテレビが必要だし、ある程度エンタメとしてのゲームも必要なんですよ。ネット依存についても同じで、ネットはライフラインとしてもエンタメとしても必要不可欠なものになっています。だからネットに関わる時間はこれからもっと増えていくし、その意味での依存は強まっていくと思います。<br>
 問題は時間的依存ではなく、そこに精神的依存が入ってくるかどうかなんです。これからは常にネット依存を自分自身でコントロールできるか見極めながら、付き合っていく必要があると思います。


== おわりに ==
== おわりに ==
====すべては被害者を出さないために====
====すべては被害者を出さないために====
 
 私が弁護士になった理由は、正しい力を手にしたいと思ったからです。そう思うようになったきっかけは弟の死でした。<br>
 高校生だった弟はいじめの被害にあっていました。やがてそれはエスカレートして、集団から暴力を受けたこともあったようです。人生を悲観した弟は自宅で自死しました。<br>
 時は流れ、今度は私が他人からの憎悪といじめの対象になりました。<br>
 インターネット上で誹謗中傷されるとそのことばかり考えてしまいますし、すべてを失った気になったこともありました。しかし、いま自分の周りにあるものを見つめなおすと、実はなにも失っていないことに気が付きます。<br>
 炎上による被害で、物質的に家や物を失ったことがありました。しかし、私は今生きています。周りには支えてくれる人がいますし、食事も満足にとれて、食後においしいコーヒーを飲むこともできます。<br>
 インターネット上の誹謗中傷が続いたとき、お酒がなければ眠れず、寝ても目がさめてしまい、激しい動悸が続いた時期がありました。<br>
 しかし、「当たり前のありがたさを見直す」ことで、すべての見方が変わってきました。誹謗中傷されても、自分は自分であり、前を向いて生きていくことが大事だと思えるようになったのです。自分は何もかも失ったと思い込まないことが大切なのでしょう。<br>
 人生は良いときもあれば悪いときもあります。感情をもった人間として生まれたということは、毀誉褒貶のある1話限りのドラマを経験するということでもあります。それが生きるということの醍醐味なんだと、今では思えるようになりました。<br>
 学校が終わると、弟のお墓に行き、墓前で泣き崩れていた自分がいました。しかし、それらもすべて受け止めなければならないと歳をとり気が付きました。生きるとは、受け止めること。それが私の人生のテーマなのかもしれません。そして、それを与えてくれたのは弟でした。<br>
=====被害者を保護する体制を法的に整えたい=====
=====被害者を保護する体制を法的に整えたい=====
 インターネットの被害を相談する窓口は、法務局の人権擁護局に存在しますが、気軽に、かつ継続的に相談できる窓口はありません。実効的に被害者の現状を変える体制を国家が作っていく必要があるでしょう。<br>
 また誹謗中傷やプライバシー侵害された被害者自身が、自力で対応を求められる現状も問題があります。さらにプライバシーを侵害されても少額の損害賠償しか認められていません。日本の名誉毀損をはじめとした損害賠償額は低く、失った社会的評価を賠償するには到底足りません。その現状にも異議を唱えていきたいと思います。<br>
 さらに、流出した個人情報によって、インターネットで永遠にプライバシーが侵害され続ける可能性もあります。プライバシー侵害は刑事罰を課す必要があると考えます。<br>
 本書を読んだ読者の方にこの問題に興味をもってもらい、法改正および新法立法の機運が高まることを願うばかりです。


=====最後に、加害者を生まないために=====
=====最後に、加害者を生まないために=====
 インターネット上で加害行為をする人は、孤独な人が多いという印象を私は受けたことがあります。実際、私が会った加害者もインターネット以外に行き場のない孤独な人が多くいました。有名ブロガーがインターネットユーザーに殺された事件がありましたが、インターネットしか自分の居場所がないと思い込んでいる人がいるのが今の現状です。<br>
 孤独な人を実社会で受け入れる体制をつくれないものでしょうか。<br>
 人は誰かを貶めたり傷つけるために生まれたのではなく、自分の人生を謳歌するために生まれてきたはずです。このことは改めて考えて欲しいと思います。<br>
 私は10代の後半を無為に過ごしました。学校を中退して友達もおらず、ベッドで天井を見つづけた日々がありました。それでも、今は目の前で私と話してくれる友人がいます。<br>
 人生はいつだって思うようにはならないものです。そして流動的でもあります。<br>
 悪いことがあった後には、きっといいことがある。言い古された言葉でありますが、私はその言葉を信じています。インターネットで加害行為をしている人は、自分の人生を生きてほしいと強く願っています。
==脚注==
==脚注==
<references />
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