恒心文庫:紅葉狩り

本文

今日は事務所の皆で楽しいハイキングだ
普段味わう事の無い大自然の空気を目一杯吸い込みながら歩く
「この辺りは秋になると紅葉が綺麗なんですよ」
山岡君が言う
この時期の森林も美しいのだが、真っ赤な紅葉も風情があって侘び寂びを感じるそうだ
しかしながらまだ初夏であり、紅葉狩りを楽しめるのは当分先になるだろう
残念がっていると先頭を歩いていた父洋が突然立ち止まる
やれ仕方ない、ここはワシが一肌脱ごう
父洋はそう言うと身につけている衣服を次々脱ぎ出した
そして全裸になると側の木に両手を付けて尻をこちらに向ける 興奮した祥平が自慰を始める
「さぁキミちゃん!やってくれ!」
その言葉を合図に共に来ていたこの世の全てを牛耳ってそうな前日本公認会計士協会会長はその整った顔に薄っすら笑みを浮かべると洋に近づき卑猥に肥えた尻を思い切り引っ叩く
パァン パァン と乾いた軽快な音が山彦となり何度もこだまする
手際良くリズミカルに張り手を繰り返すと洋の尻に立派な紅葉が見事に出来上がった
それは芸術をこよなく愛する森会長ならではの腕前であった

当職達は生まれて初めて本物の芸術を知った
真に人の心を掴むものは人間の奥底に潜む劣情的な美的感覚に訴えかけてくるのだ
痛みを我慢して目に涙を浮かべる初老の男性の尻の真っ赤な紅葉
これ以上に美しいものが他に存在するだろうか
この素晴らしさ優美さを多くの人々に観賞して貰おう、その人生をより豊かにするための糧にして頂こう
そう願い、三馬鹿トリオはポケットからスマホを取り出すと洋の尻の激写してSNSにアップロードした

これがいけなかった
その芸術作品について間違った解釈をする者が現れ始めてしまった
すなわち画像は父洋が暴力を振るわれて強姦された後に撮影されたものだと勘違いした性犯罪を許さないLGBT関連団体等が騒ぎだしたのだ
炎上は広がりクロスを非難する者は増え続け
やがてそんな中でネットで集まった騒動に便乗した悪い者たちが事務所を襲撃
激闘の末に小太りのデブは殺され、残る二人は捕らえられ性奴隷として外国に売られてしまった
父洋はというと淫靡ながらも窈窕たるケツの良さを気に入り惚れ込んでしまった男の手に渡り
防腐加工を施され、永遠に腐らない剥製にされてしまった
今はどこかの地下室に飾られてコレクションの一つとして私の目を楽しませているモリよ

タイトルについて

この作品は公開された際タイトルがありませんでした。このタイトルは便宜上付けたものです。

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