恒心文庫:洋「ふんにゅう~」

本文

そう言って父洋は、手に力を入れた。根元から徐々に、力強く、そして優しく。そうしてこもった熱が、やがて先端に灯った時、奇跡は起きた。
「でりゅ、でりゅよ!」ビュルル
なんと、母乳が出たのだ。唐澤洋の薄ピンク色の乳首、儚げに震えるその先端から、白いサラサラとした液体が突如として噴き出したのだ。
唐澤洋は際限なく流れ出すその未知の感覚に戸惑いつつ、しかしその手の動きを止めない。小指から薬指中指、並行して手のひらを柔らかく包みながらの人差し指と親指のフィニッシュ。きつく締められ変形した乳首から縦横無尽に汁が飛び散る。
というのも、全ては愛する息子、唐澤貴洋のためである。生まれる前から鋼の如き髪型を備え、大量の糞便を隠していた貴洋は、なるほど、それらを備えるに足る体格で生まれてきた。当然母体、厚子は耐え切れなかった。厚子の分厚い小袋も、分厚い大陰唇も、そしてペニスの如き陰核さえも、ミサイルさながら飛び出した貴洋には太刀打ちできなかった。
厚子の体を縦に割り、ひっくり返しながら貴洋は生まれてきた。
ひっくり返った子宮を帽子の如く被りながら泣く貴洋に、洋はその肉棒の如く巨大な乳首を近づけて行く。その震える輪郭が、貴洋の唇に触れる。貴洋は唇を二三度開けて閉じると、すかさずその乳首に吸い付いた。
唐澤洋は笑みを浮かべた。厚子は死んだが、この子がいる。厚子に似て肉厚の唇。厚子に似て肉厚の脇、そして厚子に似て肉厚の尻。何より、厚子のとは違い、本物のペニス。
ならばわしが父となり母となろう。
洋は自分の中の男と女が反応するのを感じていた。

リンク