恒心文庫:抑止力としての核保有肯定

本文

「強い男になんてならなくていい 人に優しくなりなさい」
弟の葬式に母が言った言葉を今でもふと思い返すことがある
力こそすべて、そんな連中に弟は嬲られ、殺された
だからこそ、俺に彼らとは違った道を歩んで欲しかったのだろう

「…以上で本法廷を閉廷とします」

最近になって母が間違っていたことに気がついた
力こそすべてなのだ 悲しい事に
その真理を悟った時、当職は落ち込んだナリ
絶望にくれ、死のうと思ったこともあった
でも、問題はその力をどう使うかナリよ
力で壊すのは簡単ナリ
でも、力で守るのはもっとずっと難しいことナリ
俺は人を傷つけるのでなく人を愛し、守る人でいたい
そうしていけば、傷つけ合う争いのない社会もきっと目指せる
人が人に優しい社会を作りたい
でも、人に優しくする為には自分に厳しくいなければいけない
弱い人の味方、なんて強くなきゃできない
だから力はあるほうがいいナリ
誰かを守る為の力 当時の当職にはそれが欠けていた
無力だった ただただ悔しかった そんなからっぽな自分でも背中を押してくれる父に対して、八つ当たりのように恨んだりもした
当職は弱い 
弱い人間はすぐ死んでしまう それが今の世の中
あの時も力があれば、母まで失わなくて済んだかもしれない

「唐澤さん」
「ああ、すまないナリ、ちょっと考えてたナリ」
「ない頭を妄想に使うが暇あるんなら手を動かして下さい 今日は圧勝でしたが次はそう簡単には行きませんよ まあ僕がついてますから、結果的になんとかなりますけども」
よっぽど勝てたのが嬉しかったのか
「すぐやりますを プリプリ怒らないでほしいナリよぉ…モォ…」パカパカ


見てるナリか 厚史 お母さん
このバッジ 生意気な相棒 依頼人の笑顔
当職はいま幸せナリ
だから、みんなの幸せも願うナリよ
当職は負けない
当職を、罪もない人々を脅かす悪いもの達がどれだけ多くても どれだけ強くても
超えてやる
そしてすべての弱きものを守る 当職の手で
だからお願い
当職はいつも二人に心でつぶやくナリ

力を。

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