恒心文庫:回路

本文

目を開くと見馴れた天井がある。いつもの鳥の囁きが聴こえる。
またここに来てしまったんだと、逃れることができないんだと実感する。

2783回目の、3月7日。

「Kさん、朝です」
2783回目のおはようをして、ベッドから身体を起こす。
いつも通りKさんはお昼頃まで起きてこないだろうから、先に起きて支度をしておくことにした。

午前9時。
「Yくんおはようナリ」
「おはようございます、今日は早いですね」
「前からやってみたいと思っていたことがあるナリ」
今回のKさんは334回目の時と同じ"回路"を持っているらしい。
「それなら僕も手伝います。どんなことでも」
「優秀な右腕を持てて、当職幸せナリよ」

いつも通りの空の下。いつも通りのスーツに袖を通して。
Kさんと一緒に、あの日の僕達を迎えに―――――

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