恒心文庫:二度あることは三度ある

本文

ああ、「また」やってしまった。

血が滲むほど握りしめた麻縄を重力に手渡しながら考えていた。

しかし、当職の心には悔恨の情は微塵も有りはしなかった。

「いや、仕方ないことだったよ。」

「そう、人は家畜という紛れも無い生命を日夜屠っているじゃないか。鳥を精肉する過程と何が違うのか。」

歪んだ合理化のプロセスを順に踏みながら、当職は当職の心を落ち着かせるために当職は当職の心に言い聞かせていた。


「この女が悪いナリよ。」

ツバを吐きかけてやる代わりに目の前の哀れな女弁護士だったモノに言い捨てた。

「なぜいつも当職は厄介なヤツに邪魔をされるのか。」

嫉妬にも似たそんな劣等感を抱き始めながら目を背けるかのように「後片付け」を始めた。

地面に落としてしまった縄を天井に掛け、それから…

さあ、これで片付いた。

当職はヤツの部屋の冷蔵庫にあったアイスを口に含みながらエレベーターのボタンを押した。


健康のため階段で登ってきた顎鬚を蓄えた「哀れな」男性弁護士を背にして。

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