恒心文庫:ストーカー

本文

もし連中に包丁で襲われたらどうすればいいんだろう。
もし、酸を持ってかけられそうになったら避けれるのだろうか。
もし、拳銃を発砲されたら防弾チョッキを着ていたら助かるのだろうか。頭を狙われたらお終いだろうし、一体どうすれ

「・・・澤貴洋さん、唐澤貴洋さん!」

これはいけない。また考え事に没頭していた。

「どうしたナリか山岡」
不安で埋め尽くされた頭を一度空にして声のする方向に顔を向ける。

「顔が青いし、ブツブツ何か言ってましたけど大丈夫ですか?今日も早退けしますか?」

そう言われ、机の上の置き時計に目をやる。15時か、もう出勤して3時間も経つのか。
ホントは見たい教育番組のために、17時までは時間を潰したいところだが山岡の言うとおり具合が悪いので帰るか。

「すまないナリ山岡。あとは頼むナリ」

「いえ、お疲れ様です。」
山岡は微笑み、エアコンを切った。
彼の慣習だ。
当職が帰ることで、生産性が無くなるから節電とは、本当に出来た後輩だ。

ああ、それにしても独りだと不安だ。
背後に誰かついてきていないか、そこの角で待ち伏せされていないか。
車の中から監視されているんじゃないか、そうだ、そこの自動販売機の横に立っている男とか当職を狙っているんじゃないか。

いずれにせよ、当職に逆らうものは強姦されても仕方ない。違いない。そうだ。そうなのだ。

「・・・s供品です!」

すると突然、下を向いていた顔の目線、手元に茶色い小瓶が現れた。
ハッと面を上げる。女ナリ。女が薬局の前に立っているナリ。
そして、女は何やら当職のことを見てニヤニヤしているように見える。

歳は小学生の2倍といった

ところだろうか。

状況を把握し、再度手元を見やる。
間違いない、当職を待ち伏せていた悪いものだ。
思い知らせなくてはならない。当職は弁護士ナリよ。ナメるな。そして舐めろ。

拳を握り目一杯振りかぶる。
そこで、動きが止まった。いや、止められた。後ろから腕を掴まれている。誰に?

振り向くとそこに顔の馴染みのある警察官がいた。

「何するナリか!!離すナリ!!」

警察官は哀れむような目をこちらに配り首を振った。
唐澤貴洋さん、あのね。僕らは貴方を護るためなんじゃなくて監視してたの。
扶助暴行を再犯するんじゃないかって、あなたの父親に頼まれて、ね。

頭の中が真っ白になる。
空が黒になる。


「あああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!(ブリブリブリュリュリュリュリュリュ!!!!!!ブツチチブブブチチチチブリリイリブブブブゥゥゥゥッッッ!!!!!!!)」

そして、パンツは茶色になった。

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