恒心文庫:「スープ」

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私が経営しているレストランに★☆☆☆☆評価レビューを付けた奴がいたので特定して殺しに行く事にした。
さて辿り着いたは日本最高の高級住宅街田園調布だ、騒々とした日本の首都だがそれを全く感じさせない気品溢れる静けさである。
みつけた、あの外に靴が干してある家だ、
黒塗りの趣味の悪いベンツを乗り付け屈強な黒服を従え突撃する。
玄関のドアを散弾銃で破壊し土足のまま居間に突入、
するとそこにおそらく書き込み主であろう初老の男性が白いモミアゲを弄りながらソファに座ってくつろいでいた、突然の出来事に驚きソファから転がり落ちる。
「キ、キミちゃん!?」
「やぁヒロくん、キミだったのか、あのレビュアーは」
なんと見知った人間ではないか。
「ま、待ってくれ!確かにあの店の批判コメントを書いたのはワシじゃ!」
「しかしそれの一体何が悪いんじゃ!?低評価をつけたらいけない決まりなど…」
残念だよ。私は散弾銃の引き金に指をかける。
白モミは慌て、続けて言う。
「確かにあの店の料理は中々のモノじゃ!じゃがワシならあの店のスープよりももっと美味しいスープを作れるぞい!」
「なんだって?」
生粋の美食家である黒モミはその言葉に興味を持ち、だったら実践してみろと白モミを解放した。
そして部下の黒服に命じ様々な食材を用意させた。
白モミは食材を吟味する。

セロリ タマネギ ニンニク ニンジン エシャロット ジャガイモ アスパラガス ハクサイ
キャベツ レタス ダイコン トマト ブロッコリー
ニラとコーン
パクチー リンゴ 西洋梨 パイナップル トウモロコシ パパイヤ
上海蟹 伊勢海老 スッポン スルメ 金目鯛 鮭
鶏肉 牛肉 中華ハム 鰹節 昆布 牡蠣 アワビ
乾燥貝柱 鶏ガラ トンコツ 干しエビ 干し椎茸
ナマコ 鹿のアキレス腱 燕の巣 フカヒレ 豚の背脂 ナツメ クコの実
熊の手 豚の脳味噌 食用蛙 ラクダの脂肪 アヒルの水かき イタチザメのヒレ
八角 丁字 陳皮 花椒 桂皮 黒胡椒 月桂樹 荊芥 葛根 生姜
ローズマリー タイム オレガノ セージ レモングラス 山椒
甘草 シナモン クローブ サフラン クミン バジル ウコン 鷹の爪 そしてニラとコーン…

白モミはそれらをパクパク食べ始めゴクゴクと水を飲む。
そしてむぅむぅ力むと陰茎からポタポタと黄金色のスープが垂れ始めたではないか。
そうそれはまるで宝石の様。
しばらく経つと皿に少量のスープが溜まる、
黒モミはスプーンを持ちスープを口に運ぶ…
と、素晴らしい旨味に驚いた、ニラとコーンの風味が実に良い。極上のスープだった。

その翌日から、とあるレストランでは長蛇の行列が出来ていた。
なんでも最高のスープが堪能できるらしい。
噂は口コミで広がりあっという間に人々はそのスープの虜になってしまった。
そして今でもどこかの地下室では鎖に繋がれた白モミが絶えず人々の笑顔の為にスープを提供しているのであった

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