恒心文庫:新生苦呂須の唄

2021年6月10日 (木) 18:55時点における>チー二ョによる版
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本文

一つ 火の海乗り出した
大口叩くは蝦蟇蛙
識(し)った世界は井戸の中
大洋目指して空騒ぎ
火焔(かえん)の波に浮き沈み
理想を鳴きて騒げども
鎮火の術(すべ)を知る由は無し

二つ 懐狙うのは
眉目秀麗 猛(たけ)き者
摘まみ入れるは誰が手か
身裡に引き摺る尾の影は
家守(やもり)か這いずる毒蛇かと
見聞きする者惑わせど
肚の底まで知る由は無し

三つ 見事に舞い込んだ
羽化を控えた若き鶸(ひわ)
火中に飛ぶその意気や良し
臥薪嘗胆経た後に
炎に巻かれる蛾となるか
夢に羽ばたく蝶なるか
己(おの)が行方を知る由も無し

立ち役者共を迎えるは
風の谷より下りし民
聞けよ騒げよ皆の衆
堅牢強固な壁なれど
祈り踊れよ同朋(はらから)よ
岩戸を開いて見せませう

行軍騒ぎもまた楽し
今一度(ひとたび)のお声をと
その顏(かんばせ)をと請い願い
歌い踊るも哀れ也

去る者数多数えども 種火を絶やすことは無く
炭に汚れた両の手を 振りかざしては踊ろうぞ

時に翳るは遣るせ無さ
道化疲れた下手人が
終(つい)の太鼓を願えども
終幕の刻を知る由は無し
終幕の刻を 知る由は無し

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