恒心文庫:手コキん和歌集

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本文

当職は河野家の末裔にあたる名門であり、親戚には天皇すらいる所謂名家である。
当職のような名家の出は働く必要がないのだ、むしろ働くことは卑しいことですらある。弁護士であるにも関わらず当職があまり仕事をこなさないのはそのためだ。当職は優雅に風流に生きることに決めたのだ

風流好みの当職にとって聖書と呼ぶべき本が2つある、1つは六法全書で、もう1つは
手コキん歌集である。
六法全書は硬さといい厚さと言いちょうどよくお昼寝するときに何時も枕として使っている。もう一つの手コキん和歌集は全ての弁護士が必読すべき雅さの真髄みたいなものなのだ。

当職は弁護士だ、その辺の奴らとは違う
下級国民の喧々の煩熱と擾々の俗気を厭んだので、当職は船を川に浮かべそこで
手コキん和歌集の世界に耽ることにした。
船の名を朱印船ならぬ手淫船という。

父洋の手によるしごきに耐えつつ当職は
手コキん和歌集を読みふける。
しかしもう我慢の限界である
果ててしまった。父の掌を季節外れの白雪が染め上げた。
これが当職の1日である。

タイトルについて

この作品は公開された際タイトルがありませんでした。このタイトルは便宜上付けたものです。

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