恒心文庫:愛を独り占め

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本文

ニュートンが木から落ちるリンゴを見て重力に気がついたように
当職も弟を用水路に落として命の尊さを噛み締めていた
ライオンは子を崖から落として生き残った逞しい子に愛情を注ぐらしい
つまりこの世に生き残った当職は洋から最大の愛を受け取れる事ができるというものだ
当職の期待通り弟は死んだ
無能な警察は自殺と判断した
父洋はひどく落ち込んだが、今まで以上に当職を求め毎日互いを貪りあっていた

ある日黒いモミアゲの男が我が家を訪ね洋と快楽行為を営んでいたのを見てしまった
おそらく父は当職に飽きたのだ
なぜだ、なぜ当職がそこに居ないのだ
そこは当職の場所だ、そこは─────
「兄さん」
何者かの声が聞こえる
厚史では無い、何者かの声が───
「ここだよ兄さん」
洋のお腹の中からだった
「おやおや、息子さんに見られてしまいましたねぇ」
整った顔の男は優しい笑顔だった
「たったかひろ」
父洋は雌の顔をしていた
その顔は母性に満ち溢れていた
「たかひろ君、弟さんを亡くされてさぞ悲しかったろう 辛かったろう」
「だからワシとキミちゃんとで新しい弟か妹を作ってやる事にしたんじゃ」
なんだ?何を言っているんだ?
「お前との子供だと弟ではなく息子になってしまうからのぉ」
「本当、ヒロ君は昔から優しいね」
はっはっはっ と二人の老人が笑う
そんなの、そんなの許さないからな
洋の愛は当職だけのものナリ!弟も妹もいらないナリ!!
そう駆け出した・・・が────
やっぱり妹なら欲しいナリ
後日弟が生まれた
子供は洋一と名付けられた

洋一はすくすくと成長した
父と母の優れた所を受け継ぎ厚史よりも優秀な神童となった
当職はと言うと簡単な計算もできず運動も飛び箱3段も飛べない程の無能 ガイジ 糞漏らし コロニー落とし として情けない毎日を送っていた
洋も当職よりも洋一の方に興味も期待も行ってしまっていた
床の方も当職より洋一の方が上手らしく夜伽に呼ばれる事も少なくなった
当職の精神は限界を迎えていた
ある日台風が地域を直撃した
当職は洋一を連れて氾濫した川を見に来いった
「危ないよ兄さん帰ろうよ」
「そうナリねぇ」
ドンっ
・・・え
「ごめんね兄さん」
体重唐澤貴洋の当職は瞬く間に濁流の底へと沈む
「洋一…なんで…」
「僕は父さんの愛情を独り占めしたいのサ」
ものすごい小太りのデブが完全に沈むのを確認すると洋一は帰宅した
後日貴洋の遺体が発見された
無能な警察は事故と判断した
父洋はひどく落ち込んだが、今まで以上に僕を求めるようになった

ある日黒いモミアゲの男が洋の寝室で洋に種付けしているのを見てしまった

タイトルについて

この作品は公開された際タイトルがありませんでした。このタイトルは便宜上付けたものです。

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