恒心文庫:動物園

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本文

当職には弟が居ました。この弟は弟であるにもかかわらず、人ではなくダチョウでした。
幼い頃の当職はそれを疑問には思いませんでしたが、中学生になり知識が身に付くと疑問に思うようになりました。
厚史は本当にダチョウなのだろうか?そもそも本当に当職の弟なのだろうか?
疑問に思った当職は、まず小学校で飼われていた鶏を開示しました。
しかし当職の理科の成績では得られるものは少なく、図鑑と見比べて何となく人間との骨格の違いを認識することしかできませんでした。
次に当職は厚史を開示しました。厚史の骨格はやはりどう考えても人間ではなく鳥でした。
そうなると厚史は当職の弟ではないのではないかという疑問が浮かびました。
当職は厚史の死体を持って父に尋ねました。
すると父は驚くべき事実を語りだしました。

なんでも、同じ会計士で友でありライバルでもあるMという人物とセックスをしていた時になんと当職を孕んだというのです。
あまりの出来事に父は困惑したそうですがM氏は面白がって父に何度も種付けを行い、孕ませては堕胎させる遊びをしていたそうです。
さらに遊びはエスカレートし犬とやっても孕むのだろうかとM氏は犬を用意して何度も種付けさせたところなんと孕んだそうです。
さっそく堕胎させてみると胎児は人型ではなく犬型だったそうで、これは面白いとM氏はさまざまな動物を用意しては父に動物を孕ませていたようです。
犬から始まって馬、豚、牛、さらにはキリンやライオン、イルカなどの動物の子も孕んだそうです。
そしてこれは孕まないだろうと思って用意したのがダチョウでした。
さっそく交わらせてみるとこれがなかなかうまくいったそうでしばらくするといつものようにお腹が膨れ上がり妊娠を確認したところでM氏が父のお腹に蹴りを入れようとしました。
ところが父を孕ませていたダチョウが暴れ出しM氏に蹴りを入れM氏はそのまま帰らぬ人になったそうです。
父は最後にM氏と楽しんだ記念として産んだ子供を厚史として産み育てたと言いました。

父の語った内容は到底信じられるようなことではなく、ただ黙っているしかありませんでした。
そうしてしばらく黙っていると一つの考えが浮かびました。
厚史はちゃんと育った。ならば他の生物はどうだろうか?世界中には絶滅が危惧される生物が多数存在する。
そこに子宮という名のゆりかごがあれば多くの生物が救われるのではないだろうか?
当職は自分の考えを父に話すと父も自分の考えに賛同してくれました。
当職たちは夜になるのを待って動物園に出かけました。
まず父と同じネコ科の動物であるホワイトライオンと交尾をさせました。
驚くことにホワイトライオンのオスは父をメスと認識して交尾を開始しました。
父も父で体重数百kgはあるライオンと交わってもなんでもないかのように受け止めていました。
しばらくすると父のお腹は話の通りポッコリと膨らんで肛門から1匹のライオンを出産しました。
他にも希少な動物はいる、がんばってお父さんと言うと父は産後の体に鞭を打って今度はゴリラと交尾を始めました。
一晩のうちに10種ほど動物を出産するとさすがの父も疲れたようでぐったりしながら車を運転していました。


しばらくすると動物園で謎のベビーラッシュが起こっているとニュースになりました。
動物園の職員は不思議な出来事ですがきっとコウノトリ運んできたんでしょうと笑顔で答えていました。
こうして父がすべての生物の子宮となることでさまざまな動物は絶滅を免れ、日本は動物のコウノトリの国と呼ばれるようになりました。
めでたしめでたし。

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