恒心文庫:出産ショー

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本文

とある街に懐妊する事に専ら定評のあるおじいさんが住んでいた
おじいさんは稀に祭りや宴会などの催し物で懐妊赤子の出産ショーを見世物にして観客からのおひねりで生計を立てていた

おじいさんは一人で暮らしていた
二人の息子が居たが一人は過去に事故で亡くしており
もう一人とは親子の縁を切っている
妻は閉経と共に夫が懐妊するのに私はもう懐妊できない、女としての自信を無くしただとかで離婚を申し出された

ある日営業帰りにいつものごとくコンビニでビールとつまみを買って寂しく家に帰ってきたおじいさんは深く疲れた顔でため息をついた
「あぁ昔は皆あんなにワシを珍しがりチヤホヤしてくれたのに今では誰もワシの芸に喜んではくれぬ」
刺激が強すぎる芸である出産ショーは飽きも早く
一度でもおじいさんの芸を見た人に対しては単にグロいだけのリピート要素皆無なエンタメに過ぎなかったのだ

そんなある日夢に天使とも悪魔とも取れないこの世の全てを支配してそうな感じのロマンスグレーの黒いモミアゲの仮面の男が現れた
男は柔軟な物腰ながらもとてつもない迫力を放ちつつゆっくりと言った
「あなたは自分の芸に行き詰まっているようですね。観客が求めるのはわかりやすい淡白な快楽です新たな催しに挑戦しなさい」

・・・目が覚めると共にワシの中でなにかが覚醒していた
そうじゃ、新たな芸を創り出すんじゃ、ワシはまだまだ現役じゃ あと30年は演れる
今の芸に磨きをかけ、もっと時代に合ったものを───

『さてやって参りました!本日のゲストはこのお方!』
マイクの声が会場に響く
ワシはあれから今までのワシの芸に新たな魅力をプラスしたショーにて一躍時の人だ
舞台袖からワシが登場すると客席から黄色い歓声が痛いほどに響く
さてそれでは始めよう 一番槍は誰じゃ
うおおおおおおおおおおお!!と観客席の皆がステージに雪崩れ込む
俺が、いや私が、我先にと皆がおじいさんを目指す・・・

「会って犯せて自らの子種で懐妊させられるおじいさん」というキャッチフレーズで今年大ブレイクしたおじいさん
事前に登録したDNA情報と懐妊した胎児のDNAを照会させ、実際に受精に成功した人は出産した赤子を調理して食せれる斬新なサービス付きだ
支配欲やサディスト思想を知らずと内に秘めた輩はこの飽食の時代思ったより遥かに多く、おじいさんのこの芸が流行るのは必然的に当然だったのかもしれない

おじいさんは今非常に満足した生活を送っている
多くの肉棒に囲まれかわいい赤子を毎日拝め
何より自分の全てであるこの芸が多くの人々に支持され認められている現実に嬉しくて胸がいっぱいだ
しかしあの夢の男は一体誰じゃったんじゃ
ずっと昔、会った事があるような…
そんな事を考えていた最中、観客の中にあの男に良く似た黒いモミアゲを見かけた様な気がした

タイトルについて

この作品は公開された際タイトルがありませんでした。このタイトルは便宜上付けたものです。

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