恒心文庫:再始動の日に
本文
今日は小職の晴れ舞台である。
この日のために美容室に行って髪型も変えイメチェンをした。
いきなりイメチェンをすると周りから「え?モテたいの?」と思われてしまうことが確実なので
テレビに出演し「テレビ出演のためにイメチェンをした」という事実を作り出すことに成功した。
小職が発表を行う部屋には既に人が大勢入っていた。大勢を前にした発表は中学生の頃以来だろうか。
法廷では、傍聴人はいるものの大した数ではない。
しかし今はその何十倍もの人がここにいるのである。身が震える。
小職の輝かしいキャリアがここから再スタートするのである。
事務所名も変えた。場所も引っ越した。新しいスタッフを雇った。髪型も変えた。一人称も変えた。
しょうもない青年をきっかけとする騒動にまきこまれ潰された小職の人生は今、再始動する。
さあ、発表が始まる。
会場に来てからと言うもの緊張してパソコンを見つめることしかできていなかったが改めて顔を上げると会場は人で埋まっている。
司会者が小職を紹介する。
「この中に恒心教信者がいたら手を上げてください」
参加者全員が手を挙げた。
撮影禁止のはずなのに響き渡るカメラの音。録画開始の音。
皆小職のことを小馬鹿にした顔で見つめる。
思い出す中学生時代。級友たちの顔。
自分より劣ったものを見下すあの視線、表情。
「あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!(ブリブリブリブリュリュリュリュリュリュ!!!!!!ブツチチブブブチチチチブリリイリブブブブゥゥゥゥッッッ!!!!!!! )」
小職は、人は外だけ変えても中は変わらないのだということを痛感しながら、糞まみれの中で当職に戻った。
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