恒心文庫:二寸先闇

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本文

『やったぜ。』『成し遂げたぜ。』
ネットだけ。それもモラルの眼鏡を通して見れば反社会的に映るジャンルで。

大学は殆ど行かず、1日の半分を自分の部屋、パソコンの前で過ごす。獣というより人間臭い部屋で、食っちゃ寝食っちゃ寝。ゲームをして動画やネット小説を投稿するだけの毎日。
それに対する評価だけが俺の生き甲斐であった。

「ごはん置いとくよ」
「・・・」
「・・・、そろそろ就職活動したら?あの〇〇君はもう」
「うるせぇよ!俺には関係ねぇだろ!」
「・・・」

現実のカーストピラミッドで言えば俺は最底辺だ。
ネットの中だけでは上でありたい、今ならジムカスの上級国民思想も理解できる。

憤りのぶつけどころは結局顔も見た事のない弁護士。誰でもいいのだ。ネットイナゴと言われようとも。
イナゴハンターを名乗る者がいるが、イナゴであれば何だって狩るというその姿勢、それも一種のネットイナゴと言える。
イナゴハンターもネットイナゴ。
それなら俺も、森園やオメガと同じようなものではないか?
自己顕示欲とどうしようもない現実に抗う(といっても抗う舞台がそもそも現実ではないのだが)姿は正に大同小異の映し鏡だ。
しかし、俺には恒心教がある。俺は嫌な思いをしているか?答えはノー。
70年契約。チンフェや弁護士モドキと一緒に過ごそうではないか。

本当に契約をさせられたのは自分だと知りながらも。

◆◇◆

我々は彼が何故あのような誹謗中傷エログロスレッドを立てたのかという疑問を解決するため、
彼のIPである△□県に向かった。
「こんなところに住んでいるのか…」
思わず口に出てしまった言葉を、同行した上司に失礼だと咎められた。
辺りには普通の一軒家やマンションが建ち並んでいるがこの家だけは別物だ。
割れた窓、ゴミ袋が積まれ異臭を放つ庭、それに群がる蝿や烏。
炎上だの、敗訴だの、コンテンツ化だので憂かれていた我々は改めて教徒一人一人の現状というものを噛み締めていた。
「すいませーん」
玄関は開いており、足を踏み入れると散らかった何か(ビニールに入っていたり、壊れたりしている家具やゴミだろうか)が廊下を埋めている。
どこからか、その廊下を器用に一歩ずつ這い出てくる女が「どなたですかー?」と応じる。
家に居たのは老いた母親ただ一人。
我々の左胸に光るそれを見るなり全てを悟ったのか、涙ながらに「息子が申し訳ありません」と何度も土下座して詫びた。我々はこの時初めて彼を許そうと思った。
誰が悪い訳ではない、育った環境やその家庭、そして社会が悪かったのだ。
我々は彼の母親から貰ったオランジーナを手に、打ちひしがれながら東京へと帰路についた

この作品について

5ちゃんねるのコピペ改変である。

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