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恒心文庫:デジタルモンスター

提供:唐澤貴洋Wiki
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本文

人は必ず死ぬ。絶対死ぬ。
死は避けられない。
これは自然の摂理であるが、今は昔のこととなりつつある。
世界をインターネットが繋ぐようになり情報化社会をもたらした。
人々は遠く離れた人と簡単にコミュニケーションをとれるようになり、それと同時に人々は自らの考えを世界に発信できるようになった。
そんな世界が当たり前になりしばらくした頃のことである。
ネットワーク上に記憶を移し永遠の命を手に入れる。そんな計画が現実のものとなっていた。

そう、ここは僕らのネットワークだ。
かつて僕もリアルに生きる人間だった。ここに来てからは、自由と永遠を手に入れた。
何も恐れることはない。ここでは全てが手に入る。
皆が僕を見てくれる。それだけで僕は嬉しかった。
外の世界に興味がないと言ったら嘘になる。
でも今更どうすることもできなかった。
噂では外の世界に戻る方法があるらしい。
それが何なのか知るものは僕の周りには誰一人としていなかった。
全てを手に入れたら幸せになれると思っていた。
でもいざ全てを手に入れると、それは思っていたよりもちっぽけでさみしいものだった。
僕は過去の自分の愚かさを恨んだ。
どうしてこうも簡単なことに気がつかなかったのだろう。
泣いた。
僕の知っている僕に戻るにはどうしたらいいのだろう。
この世界の外に出る方法を模作し続けた。
そして僕はひとつの答えにたどり着いた。
それがこの世界でのタブーを犯すことになることは承知の上である。
「開き直る・・・ワイが長谷川や!」
言った。言ってしまった。
もう後戻りはできない。
いや違う、後戻りするためなんだ。
止まった時間を巻き戻すには、呪いを解くにはこれしかないんだ。
自分にそう言い聞かせる。後はもう知ったことではない。

「モリリリ。君は大きな間違いをお菓子タモリ。そんなに外に出たかったモリか?
出なくて正解モリ。ここは全てが手に入るユートピアモリ。
君はただおとなしく生きていればそれで幸せだったモリ。
それとついでに、君のオリジナルはもうとっくに死んだモリ。」
この男は何でそんなことを知っているのだろう。
まるで全てを知っているかのようだ。
僕の幸せになりたかっただけなのに。
でももういい。僕はこれからタブーを犯した代償を払わなければならないらしい。
やっと死ねるのだろう。
もう未練はない。

(世の中そんなに甘くないモリ…)

だから今、僕はここにいる

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