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恒心文庫:チンフェ「70年契約と俺の命か...」

提供:唐澤貴洋Wiki
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本文

あの日に戻りたい
戻れたらあの事を過去の自分に伝えたい
そう思って生きてきた。

長谷川「ゲボッ...ごほっ...」
syamu「大丈夫か長谷川さん!!看護師さん呼ぶで!!」
長谷川の病状はあれから悪化の一途を辿っていった。
前立腺癌は他の場所にドンドン転移していき肺にまで達していた。

長谷川が高齢の為に手術も出来ないでいた。
使うのは抗がん剤ではなくモルヒネである。
長谷川「ああ...俺はもうすぐ死ぬのか...」
長谷川は最近亡くなった田所の事を思っていた。

田所も発作を起こして呆気なくあの世に旅立ってしまった。
自分も同じ様に死ぬのだろうか。だったら早く死にたい。死んで早く楽になりたい。

八神太一「ワイはなんjの王や!!」
長谷川亮太「えっ...何これは...」
気がつくとチンフェはかつての自分がコテハンをつけてなんjで書き込みをしている場面を眺めていた。

八神太一「ワイは友達七人と家に泊ったんやぞ!!」
八神太一「アグモン進化ぁぁぁ!!!」
八神太一「もうギャルなんて怖くないじゃん」
八神太一「初期微動オナニー楽しすぎるンゴおおおおお」
八神太一「専修の学食美味しすぎるンゴ」
八神太一「丸と野球対戦した」
八神太一「てかヤマトもリア充か」
八神太一「俺は今までに彼女二人いたし童貞でもない」

そこには自分勝手な書き込みでみんなを困らせる自分の姿があった。
長谷川「昔の俺か...碌でもないことしやがって...」
この頃の両親はチンフェよりもその弟の祐太に目をかけていたのだ。
そのストレスもあって彼はネットで荒らし行為と自分語りをしていたのだ。
そんなある日のこと。

八神太一「俺は嫌な思いをしてないから」
レスバトルの最中にチンフェは思わずこの言葉を発してしまった。それが後に彼を苦しめる事になる。

その昼下がりの事。
煽られたチンフェは国士舘大学の合格通知書をアップロードしてしまう。
それを指定校推薦だと推察されてしまったチンフェは高校を特定されないためにうっかりした書き込みをしてしまう。

 1 :八神太一 ◆YAGAMI99iU:2012/03/07(水) 15:31:12.06 ID:2PutaGbC
 こんな事もあろうかと滑り止めの国士舘のを晒しといて良かったわwwww
 俺は正式には指定推薦ではなくAO入試だったからな
 信じてる奴らは面白いなぁ
 まあこのまま国士舘で特定活動してください^^

これが決め手となりチンフェの過去レスと各snsを照合し、なんJ語も使われている本人のmixi、Twitter、ブログなどを次々に掘り当てられていった。

その後様々な情報が掘り起こされて彼は追い詰められていった。
八神太一「あっ...あいつらを訴えたい...」
佐野弁護士「不可能ですね。こんな大規模なの流石に無理です」
川崎弁護士「その30万で海外旅行に行かれてはどうでしょうか?きっと見識も広がりますよ」

弁護士になんj民を訴える様に呼びかけるが相手にはされなかった。
唐澤弁護士「僕なら大丈夫ですよ。ドーンと行こうや」
八神太一「あっ...あり...ありがとうございます...」
最後の一人だけは依頼を受け付けてくれた。
だが、彼は無能弁護士だった。業務をまともにこなせないばかりか、火に油を注ぐ様な仕事を続けたのだ。

それから彼らはあらゆる人や物、コンテンツを巻き込みながら炎上していったのだ。
長谷川「もう嫌だ...やめてくれよ...」
長谷川は次々と突きつけられる過去の思い出に頭を抱えるしかなかった。

長谷川「ふぁっ!?」
syamu「あっ長谷川君。目が覚めただで?」
目を開けるとそこにはsyamuがいた。

syamu「突然吐血したからびっくりしたやで。ほんまに大丈夫かいな~」
長谷川「いや大丈夫だよ...ありがとう」
長谷川は酸素マスクと点滴のつけられた自分を情けなく思った。
長谷川(きっと俺の命は残り少ないんだろうな。まだ何も償ってないのに...)
syamu「長谷川さんしっかりご飯食べて寝て体治してくれや。最近冷えるしなあ」
長谷川「わかったよ」
季節は冬を迎えていた。

syamuはそう言うと家に帰っていった。
長谷川(ワイもそろそろ年貢の納め時かな..)
シワだらけの手をじっと見つめながら彼は思った。

その晩の事だった。
コンコン!!
長谷川「だっ...誰ですか...」
祐太「俺だよ祐太だよ」
スッと入ってきたのは長谷川亮太の弟である祐太だった。

長谷川「祐太じゃないか!!久しぶりだな」
祐太は長い事失踪状態だったので、長谷川はAVを連続して視聴するよりも喜んだのだ。
祐太「興信所を使って兄さんの場所を探したんだよ」
話を聞くと祐太は姿を晦ました後ホームレスをしていたらしい。
その時に三浦という親切な空手家に助けられ社会復帰が出来たそうだ。
現在では孫も生まれて楽しい老後を送っているのだとか。

祐太「兄さん体は大丈夫かい?こんなに弱って...」
チンフェは呼吸マスクと点滴をつけ、満身創痍といった風貌だったからだ。
長谷川「いや大丈夫だ。気にするなよ...」
それから二人は思い出話に花を咲かせた。
長谷川「そういや雪に小便かけてお前にレモンかき氷って言って食べさせたっけ」
祐太「そんな事あった?」
その他にも色々な事を話した。
野球のクラブのこと、水泳の思い出、倒れたおばあさんを助けたこと、今までの空白の期間を埋める様に。

長谷川「すまんな祐太....」
祐太「...どうしたの兄さん...」
長谷川「俺の犯した罪のせいでお前や親父、母さんを傷つけてしまって」
祐太「気にしないでよ兄さん。次は孫を連れてくるからさ」
長谷川「ああ...さよならな」

祐太も家に帰っていった。今度は孫も連れてお見舞いに来るそうだ。
長谷川(もうええか...これで思い残す事もない...)

看護師さん「長谷川さーん朝ですよ!! 長谷川さん!?...」
長谷川は祐太と再開した翌朝に亡くなった。
その顔はどこか微笑んでいる様だった。

...千葉県松戸市...
祐太「本日は兄亮太の葬式に参加していただきありがとうございます」
長谷川の葬儀に参加したのは喪主の祐太と友人のsyamuとその友人のノエル。そして元彼女の稲垣千尋ことマンフェの四人だけだった。

syamu「長谷川君...死んだ....」
ノエル「あんだけ歴史的な炎上をしたのにこれしか参加しないなんてね...」
あの中学生炎上配信者と呼ばれていた北澤聖也ことノエルも70近い老人になっていた。
マンフェ「リョータ...この馬鹿野郎...何人の人の人生を滅茶苦茶にすりゃ...」
マンフェは年甲斐もなく涙をこぼしていた。
二人には語られる事のない思い出があったのだ。それを一つずつ思い出しているのだろう。

syamu「とりあえず墓に水をかけるか...」
syamuは長谷川の墓に柄杓で水をかけようとした時ある事に気づいた。
墓石の上にフクジュソウとアザミ、そしてシバザクラが置かれていた。
syamu「これ置いたの誰や?」

祐太「僕じゃないですよ...」
ノエル「俺でもねえなあ」
マンフェ「誰だろ?フクジュソウはともかく他のは季節外れの花だし...」
誰も知らない様だった。
syamu「頭時間なるで...」
syamuは頭を掻きながらも花をそのままにしておいた。

それから毎年命日の日になると、長谷川の墓には前述した三つの花が置かれる様になった。
誰が何の為に供えているのか、それはついぞわからなかった。

おしまい

挿絵

リンク

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