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恒心文庫:ハッセ(75)「70年契約もそろそろ終わりか...」

提供:唐澤貴洋Wiki
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本文

長谷川亮太ことハッセは病室のベットの上で小さく呟く。
看護士さん「長谷川さーん!!点滴替えますよー」
ハッセ「あっ...は、はい..」
彼は最近健康診断で前立腺癌と診断され、入院する事になったのだ。

初期の段階だった為と老年の為、治療を一切行わずに、定期的に血液検査でPSA値だけを測定し、経過観察をだけを行なっている。
看護士さん「長谷川さん!!ご飯ちゃんと食べられましたかぁ~」
ハッセ「は、はい、ち、ちゃんと、た、食べられました...」
相も変わらずハッセは吃音気味でコミュ障だった。

彼が面と向かってスラスラ喋れる相手は家族とマンフェ、そして今は行方不明の唐澤弁護士だけである。
ハッセ(慣れないなあ...この環境...)
朝のチェックが済んで看護士さんが出ていくと、ハッセは一息つく。
ハッセ(この病院にもなんJ民やら恒心教徒が潜んでいるかもしれんし...)

彼は未だにネット民の攻撃を恐れていた。自業自得とは言え大炎上を引き起こし、ハセカラという巨大なコンテンツを作り上げてしまったハッセ。彼には何処にも行き場などなかった。
家族は次々と凸の対象とされ、一家は離散した。
松戸に残った一軒家も父満孝が守っていたが、彼亡き後はすぐに撤去されたのだ。
満孝は門番の如く玄関前に張り付いていた所を、愉快犯に刺し殺されたのだ。
母幸恵は度重なる家族に対する悪戯から心を病んでしまった。薬に依存する様になり、その内に川に飛び込み自殺したのだ。
弟の祐太は顔写真もTwitter垢も晒されてしまい、仲間内から疎まれる様になった。面接先でも兄の悪評から弾かれる様になり、その内に彼は失踪したのだ。今は何処で何をしているやら。

ハッセ(取り敢えず売店にでも行くか...)
過去の嫌な思い出を振り返っても仕方ない。
気持ちを切り替えるために地下にあるコンビニへと向かう。
...売店...
安藤良太「やあ!久しぶりですね長谷川さん」
ハッセ「お、お前は...安藤良太!!」

嫌な奴に再会してしまった。
安藤良太は過激派恒心教徒の一人であり、多くの場所に唐澤貴洋名義で爆破予告をしたり、長谷川邸にけんまをした事で有名だ。
こんな場所で会うのも奇妙な話だが、それ以上に目を疑うのは安藤の外見である。
昔とちっとも変わっていないのだ。長谷川は老いているのに彼は昔のままなのだ。眼鏡をかけて尿道の様なねっとりした声、顔立ちが若いままなのだ。

安藤「長谷川さんもお元気そうでナリよりですよ」
ハッセ「何がお元気だ!!俺は入院してんだよ!!」
思わず強い口調で怒鳴り散らす。やっぱりこいつとは相容れない。
ハッセ「それよりてめえは何で若いままなんだよ!!また企んでやがるのか!!ゔぐっ...ゴホッ!!ごほっ!!」

間髪入れずに喋る長谷川。入院して体力が衰えた事もあり咳き込んでしまう。
安藤「長谷川さん大丈夫ですかぁ?なんかしんどそうですねえ」
彼は苦しむ長谷川を見下ろしながらニヤニヤ笑う。
安藤「僕はね...いつまでも生き続けますよ...貴方達の事を後世に語り継ぐ為にね...」
そう言うと安藤は背を向けて何処かへと立ち去っていった。
ハッセ「...待ちやがれ...」
長谷川は引き止めようとするがそれは叶わなかった。彼の移動スピードは早く、病気の体では追いつけなかった。

長谷川(嫌な奴に会っちまったなぁ...2、3聞きたい事があったんに...)
彼はモヤモヤした気持ちのまま、カントリーマアムとオランジーナを購入して病室に戻る。
戻るとルームプレートに一名追加されていた。
田所浩二と。

田所「93歳病人です!!よろしく頼みますよぉー!!よろしく!!」
長谷川「よ.よろしく」
濃い顔の皺皺の老人が入院する事になった。
長谷川とは違い積極的かつ社交的な性格の様で、よく話しかけてくれたのだ。

田所「長谷川さんはー、水着の男の子とか好き...好きじゃない?」
長谷川「い、...いえ(好きな訳ないだろ!!このホモ野郎!!)」

長谷川「え、AVあ、あるけっけど見る?」
田所「見ますねえ!!見ます!見ます!」

田所「イイよこいよ!!」
長谷川「ほんと田所さん、ほんとちょっとやめてください、アッ~!!」
お互いの尻を掘り合う程に彼らは仲良くなっていった。その内に長谷川は田所に気を許す様になったのだ。

そんなある日
長谷川「田所さんは心臓の調子が悪いんですか?」
田所「そうなんすよね。後一回発作が来たら死ぬとお医者さんに言われたんすよ」
長谷川「そうなんですか...俺も前立腺に癌が出来てしまって...」
田所「お互い歳取ると大変っすね」
互いに自分の症状を教えあった。
田所「俺はなー若い頃に戻りてえなぁっていつも思ってるんだよ」

最初は一作品だけ出るつもりだったが30分で5万という業界の金回りの良さにドンドン沼に嵌っていく。
昔の田所「24歳学生です!!」
昔の田所「イキスギィ!!イクイク!!」
生活のためにホモビに出ていたはずがホモビの為に生きる様になってしまった。
だがそんな生活も長くは続かなかった。
ホモビ監督「もう田所、お前はクビだよ。さっさと出てってどうぞ」
田所「そんな...俺の何が悪いんですか!!」
ホモビ監督「まず顔が悪いし突然変なアドリブを入れてくるだろ。お前のお陰で売り出そうとしてた木村と豪が台無しなんだよ」
戦力外通告に田所は絶望した。それどころか自分がホモビ俳優として三流であった事、現場ではお荷物どころか疫病神扱いされた事を知ったのだ。

ホモビ活動に時間を費やしていたせいか、就職先もまともな場所ではなかった。
それでも頑張っていた矢先に衝撃的なものが彼の目に飛び込む。
野獣先輩「「アイスティーしかなかったんだけど、いいかな?」」
野獣先輩「もっと舌使って舌。アアーイィ!アッイイヨイイヨイイヨ~。ちょっと歯ぁ当たんよ~(指摘)当てないで(小声)」

ステハゲ、昏睡レイパー、汚物、捨てるところないゴミ、四章の眠らせてくる奴、おしゃべりうんち
田所「何なんだこれは...」
田所は驚愕した。自分の体のパーツ、挙動、台詞、一つ一つが切り抜かれネットで玩具にされていたのだ。
淫夢という一つのコンテンツの主役として、自分は君臨していたのだ。
野獣先輩という名前で。

田所はそれを知ってから何もかもが恐ろしくなった。周りの人物に自分がホモビに出ていた事実が露見する事や、淫夢内で良いように使われている事実がバレるのが。
田所はそれから各地を渡り歩きながら他人の目を気にして生きる様になった。
老齢になり心臓に病気があることが発覚してから、老人ホームと病院を行き来する日々を送る様になった。

長谷川「それは辛いなぁ...俺も昔炎上を起こしてなぁ...」
長谷川はかつてのハセカラ騒動を話し始めた。自分の身勝手な行いのせいでたくさんの人を巻き込み傷つけた事、家族の人生を台無しにしてしまった事。
田所「たまげたなぁ...」
田所は長い所ネットを見ない様にしていた為、そんな騒動が起こっていた事を知らなかったのだ。

長谷川「しかも俺はなんJ民に70年契約をしてしまったんだ。だから今でも何処らから狙われてるんだ...」
長谷川は頭を抱えながら髪を掻いた。床に白髪がポロポロ落ちていく。
田所「心配すんなって!!」
田所は長谷川の背中を叩く。
田所「俺達はどうせ長くないんだしさ!!それなら暗い事考えないで楽しもうぜ!!」
長谷川「あっ、ああ...」

長谷川は力なく笑った。
今から何を楽しめばいいと言うのだ。
長谷川はその夜に夢を見た。
唐澤「久しぶりだね。長谷川君」
あの頃の太った陰気な顔をした唐澤が、安藤と同じく若い時のままで夢に出てきたのだ。
長谷川「尊師!!なんやお前消えたと思えばいきなり現れて!!」

唐澤貴洋はハセカラ騒動の最中に、突如として行方を晦ましたのだ。
唐澤「ごめんよ...僕はもう人じゃないんだ...だから君とはもう会えないんだ...」
長谷川「ちょっ...待て尊師!!」
長谷川は唐澤を呼ぶが、彼は暗闇の中に消えていった。
ガバッ!!
長谷川「ハァ...はぁ...なんだよ今のは..」
長谷川は汗だくになって目が覚めた。
唐澤といい安藤といい自分に何を伝えたいのか...

それから暫く経って。彼らにも新しい仲間が出来た。

syamu「ウィイイイイイッス!
どうも~syamuで~す
あっ、今日は、お楽しみ会当日ですけども、参加者は、長谷川君と田所さんしか来ませんでした…残念ながら…はい」
長谷川「おっ、俺はざっ、残念な奴じゃ、ない」

田所「この部屋の患者は俺と長谷川しかいないってはっきりワカンだね」
syamu_gameこと浜崎順平
彼も二人と同じくインターネット上で一つのコンテンツが勝手に築かれた人物である。

syamu「二人とも暇そうやし本を持ってきたで」syamuは水泳選手の雑誌とAV大全集を彼らに手渡した。
長谷川「あっ、ありがとう、こっこれで色々捗るよ」
田所「イキスギィ、やっぱり海パン履いてる男の子は可愛いってはっきりわかんだね。」
syamu「二人とも、とりあえず落ち着け。まあいいんだけどさ、いいんだけど病院やし人様に迷惑かけちゃダメやろ。あっ、おほ~」
syamuは親切な男で、病院では入手が困難な物資を届けてくれるのだ。

田所「あ、お前さ、syamuさ、これから何をすんのよ。お前も暇じゃないだろ」
syamu「シバターさんの墓参り行きますぅぅ」
長谷川「く、車には、きっ、気をつけろよ」
syamu「ラジュ!!OKわかったぜ!!」

長谷川はこの日々思う。唐澤と安藤が自分の前に現れたのは、あの騒動を忘れるなという事だろう。
自分の癌もゆっくりとだが体を蝕み転移していく。
残された日々を仲間と過ごし自分と過ちと向き合う。
それが今の長谷川にできる事なのだ。

おしまい

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