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*[[自然の理に反した行動には明日がない]] - 「ユーモア対談」産業新潮
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2021年11月9日 (火) 21:52時点における版

アメリカ合衆国の活力根源について(あめりかがっしゅうこくのかつりょくこんげんについて)は、河野一英が寄稿したコラムである。

概要

「月刊国際税務」内の「INTERNATIONAL TAXATION」に掲載される。

全文

アメリカ合衆国の活力根源について

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 INTERNATIONAL TAXATION

随筆

アメリカ合衆国の活力根源について

 河 野 一 英

*アメリカとヨーロッパとの相違点

 古い伝統のなかに沈静するヨーロッパ諸国においては,永年の宗教的な影響からきた土地と主食と医療とは営利的な商品化しないという風土が見受けられる。
 それはイギリスにおける女王の王地所有制度,ヨーロッパ各都市の近い公園と,5階建の市街地住宅のアパート化現象,安い肉とパン,企業の同業組合を保護するための強い営業時間規制,教会とか公共の経営する古めかしい大規模施設などがそれである。
 一方のアメリカにおいても、こうしたヨーロッパ的な面があるほか、もう一つ別な近代的,効率的な側面が多様的に併存していることに気がつく。
それは、土地と主食と医療も営利的な商品化が行われ,大規模な不動産開発事業の展開とか,シカゴを中心とした世界の穀物・食肉の商品化,上場した株式会社が運営する病院,また小企業保護のための営業時間規制が少ないといった諸点である。

*大恐慌(1929)以後の社会制度の変化

 第一は,銀行制度の変化であろう。将来の恐慌作用を州ごとに限定しようとして銀行活動を1州内に法的に局限したことである。
世界一の資金量を誇るバンク・オブ・アメリカ銀行もカリフォルニア州内でしか営業出来ないし,あの有名なチェス・マンハッタン銀行もニューヨーク州内しか営業が出来ないのである。
それにひきかえ,アメリカの証券会社は合衆国全州で営業が出来るため,証券会社の巨大化と大企業の資金が証券市場の金利の安い時価発行増資に依存しているのが実情である。
近年のアメリカの高金利においても,大企業は自社の能力に応じて,年利1~3%程度の低金利資金を証券市場から時価発行等により調達し,あの13~20%の公理は一般の消費者や農民が借り入れる住宅・自動車・農機・クレジットのローン金利や国債等の債権金利であって,明暗を異にする二重構造となっている。
 第二は,個人の所得税(サラリーマンを含む)で,すべての現金の支払利息が課税所得から経費控除される税制をとっていることであり,住宅・自動車・農機の買入れのためのローンの高金利も,課税される所得さえあればサラリーマンでも減税メリットが受けられるのである。
 このため,高金利は合衆国の連邦所得税の大減収の原因となって,あのとし2,600億ドルをこえる赤字財政を生来している因となっている。
しかしこのことは,住宅や自動車の個人消費に対して大きな活力を与えている。
 第三は,州税の大黒柱である土地・建物等,不動産に対する固定資産税の課税が,他国と異なり,時価に近い高額な課税標準で試算されているため,年々の不動産の値上がり(過去10年で,約5倍に値上がりした)で固定資産税が大増収となり,各州の財政は現在,年1,000億ドルに近い黒字となっているとのことである。
 この時価の値上がりに正比例した固定資産税の高騰に対して,その負担に堪えられないとして,1978年6月にカリフォルニア州で「プロポジション13号」(提案13号)が住民投票で63%の大衆の圧倒的な支持を得て成立し,税率を大幅に引き下げたほどである。
 この時価に近い基準で固定資産税を課税するため,所得の少ない人は,必要以上に大きな土地・建物を保有し続けることが出来ないため,早目に売却し,不動産の供給を増加させ,不動産価格の上昇を防ぐ機能を働かせている。
日本では,父親が死んでも母親の生存中には,安い固定資産税のため不動産を持ち続け,母親が死亡して初めて,売却し,子供に分配相続が行われているが,アメリカでは固定資産税が高額のため,高額所得の父親の死亡直後に売却することが多く,不動産市場の回転が活発であり,民間活力の源泉ともなっている。
 しかも,支払利息と同様に,この固定資産税が個人の所得税計算上,毎年の経費として控除出来るので,所得の多い人は所得の大きさに応じた大住宅,大別荘,高額自動車を購買するための刺激となっている。
また,1978年の提案13号の成立のときに,カリフォルニア州の州税・市町村税の地方税が大減収となったが,この反面,合衆国に納める連邦所得税が経費控除の大減少により,大増収となり,州税と連邦税とが正反対の利害関係をもつ対立した関係に仕組まれていることも,アメリカの活力の一つである。
 第四は,アメリカの個人所得税においては,社宅の家賃は時価の家賃見込額で,現物給与として所得税課税が行われている。
これに対しイギリスおよびそのコモンウェルズ各国においては,社宅の家賃は,時価家賃がいかに高くとも,支給給料額の約10%の現物給与として,個人の所得税課税計算をしている場合には容認しているのと,まことに対照的な差異がみられる。
アメリカにおいて,住宅は借金をし固定資産税を払って自己住宅とした方が税制上有利であり,一方のイギリスとそのコモンウェルズは,会社の社宅を住居とした方が税制上有利になる正反対の税制である。
 第五は,大恐慌の遺物として,アメリカとヨーロッパで共通している悩みとして,若年の失業者が多いことがある。
それは,同一労働種目について先任権という労働慣行が大恐慌以降確立してしまったためである。
これは,人員整理をする場合に,後から採用した後任者から解雇しなければならないという慣行であり,このため不景気になると,ヨーロッパやアメリカでは街頭に若者の失業者が溢れ,社会不安をかもし出している。
これも,大恐慌対策から生活責任の大きい先任者を保護する福祉政策から出たものであろう。
 この点は,わが国においては,低能率の中高年の人から人員整理が出来るので,職場活力が高く,かつ若年失業者は少なく,社会不安は起こらない点が相違点である。
 第六は,1929年の大恐慌対策として,1922年アメリカ証券法が成立し,証券市場における株価形成システムが新発足した。
新しい株価形成方法は,まず公正妥当なる会計原則に基づく「1株当たり利益」の金額を求め,この「1株当たり利益」の過去5年間とか,10年間の上昇下降の時勢傾向によって株価収益率(1株の株価(時価)を「1株当たり利益」で除した倍率)を投資家に決定させるというシステムである。
しかも,この「1株当たり利益」について,外部監査人である公認会計士の監査証明を必要としている。
 証券会社を中心とする民間活力の根源の一つが,この「1株当たり利益」を基底とした株価の自主形成構造にもあるのである。
 第七は1929年以降の1932年に創出されたラッカー・プラン(アレン・W・ラッカー)である。
それまでは,企業内で働く人達は各人のもつ能力の10%か30%ぐらいしか発揮していないといわれていたのを,残余の大きな潜在能力を引き出し開拓した賃金分配率(生産付加価値の39.395%)を労使協力システムとして創造したことである。
 第八は,大恐慌が産業革命以降の工業生産力の過剰生産恐慌であることから,これを解消させるために消費の拡大につながる学問として,科学的販売管理論としてマーケティングが誕生し,大恐慌が企業の経済変動に迅速に対応する経営者能力がもろかった点にあるので,これに対する学問としての原価管理とか管理会計論が大きく躍進し,
さらに消費の拡大をポリシー・ミックスによる経済政策論や社会福祉制度の拡充に伴う更生経済学等の経済理論が発展し,また,最近のレーガン政策のように,消費拡大政策として所得税率の累進税率限度を大幅に引き下げたり,小売税,付加価値税等の間接税に移行したり,消費拡大のための大幅な企業の投資減税を実施する等が,活力の源泉としてあげられる。
 以上のようなアメリカ合衆国の活力のすさまじい渦巻きは,目を見張るものがあり,対立した毒と薬との大幅なバランスの上に諸方策がドラスティックに実験・展開されていることは,注目に値するところであろう。
(第一監査事務所代表社員 公認会計士)

「日本企業に米国式会計を導入せよ」

「日本経済研究センター会報」1996年10月15日号掲載。

日本企業に米国式会計を導入せよ

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脚注


関連項目