マヨケーがポアされたため、現在はロシケーがメインとなっています。

「恒心文庫:ケッコンカッコカリ~初霜の場合~ 姉妹への報告の巻」の版間の差分

提供:唐澤貴洋Wiki
ナビゲーションに移動 検索に移動
>Ostrich
(正規表現を使用した大量編集 広告追加)
>Ostrich
(正規表現を使用した大量編集 カテゴリ:恒心文庫を導入)
 
134行目: 134行目:


[[カテゴリ:小関直哉]]
[[カテゴリ:小関直哉]]
[[カテゴリ:恒心文庫]]
{{広告}}
{{広告}}

2019年11月29日 (金) 21:43時点における最新版

本文

「とにかく私は反対だ!初霜と提督が付き合う事なんて!」
「わらわはそうは思わんぞ。こやつならば初霜をどこぞの馬の骨にやるよりかは信頼出来る。それに義弟が増えるというのもまた一興じゃろ。」
「義弟も何もまだ二人は結婚なんてしてないだろ。」
「『ケッコンカッコカリ』なるものならしたらしいがのぅ…まぁ、カッコカリがつこうがつくまいがわらわは提督がこのまま初霜と関係を持って逃げる事などしないと思っておるし、させないが。」
「…子日も初春と同意見かな。それが初霜の答えならそれで良いじゃない。」
「私が言ってるのは初霜が提督と付き合うのは色々と問題があると…」
「お主が初霜の年齢の問題を言っておるのなら問題はあるまい?わらわ達は皆大正・昭和生まれの婆さんじゃぞ?それにこやつらはお互いを好いておる。それをわらわ達が邪魔するのも野暮じゃろ…」
「子日知ってるよ。このゲームの登場人物は全員18歳以上です。ってやつでしょ?」
「実年齢の問題では無い!あと子日姉は少し黙っててくれ。」

かれこれ30分は同じ様なやり取りが続いている。議論が長くなっている原因は私達の付き合いを認めている初春姉さんと認めていない若葉の対立のせいである。子日姉さんはわりとどうでも良い様で私が幸せならそれで良いじゃない。というスタンスである。
私の保護者である姉達への報告と改めての挨拶を兼ねて用意した場である会議室に提督と共に来たのは良いが、開幕これでは先が思いやられる。

「もう良い!勝手にしろ。私は知らん!」
最終的には若葉がこれ以上の議論は不毛、と部屋を出て行ってしまった。そういえば若葉は私が提督に対する恋心を相談した時も反対していた。



「すまぬのう。じゃが、あやつはあやつでお主らの事が心配なんじゃよ…分かってくれ。」
「それに関しては気にするな。若葉の気持ちを考えれば当然だろうし罵倒にも慣れた。」
私の予想通り私達がこういう関係なのが明るみに出るのに時間は掛からなかった。大体青葉のせいである。これだから嫌いなのだ、ブンヤって奴は。
今でこそ多少落ち着いたが発覚直後は鎮守府内がお祭り騒ぎになった。もし、私達がすでに肉体関係になっているとスクープされていたらお祭り騒ぎを通り越してレイテ沖海戦再現祭りになっていただろう、要するに大惨事である。
が、青葉がまだ嗅ぎ付けて無いのか、それとも嗅ぎ付けたがその後の影響を考えて発表を自粛したのかは分からないが、それに関してはまだ特に騒ぎになっていない。もっとも、初春姉さんは何となく察しているようである…長女の勘というやつだろうか?
ちなみに私達の関係を聞いた艦娘の反応は大方4つに分かれる。素直に祝福してくれる娘。無関心な娘。私達の関係に否定的な娘。とりあえず提督を罵ってくる娘。この4つである。ちなみに4番目に該当する娘は曙とか満潮とかである。まぁ、いつもの面子と言えばわかるだろう。とりあえず曙の提督の呼び方が「クソ提督」から「ロリコンクソ提督」になった。
前世の事を考えると私より大和や矢矧の方がよっぽど年下なのだが、艦娘に転生した時にこの姿になってしまった事を恨むしかあるまい。

「提督よ、わらわから一つ約束がある。」
「何だ?」
「…初霜を泣かすような事をするでないぞ。大切な妹を傷つけ泣かすような事があればわらわが承知せん。」
「子日とも同じ約束して。」
「それはわかっている。誓うよ。」
「…なら良い。妹を頼むぞ。」
「任せてくれ。必ず幸せにしてやる。」
「…提督。恥ずかしいですよ。」
嬉しいが、はっきり言われるとなかなかこそばゆい。
「ふむ、ところで提督よ。初霜と一緒になるという事はわらわ達の義弟になるという事じゃ。」
そう言って初春姉さんはニヤリと笑う。
「今後はわらわの事を「姉さま」とでも呼んで慕うと良いぞ。なに、執務中は軍の規律もあるからそう呼ばなくても良いが。」
「っ!?」
「子日は…お姉ちゃんって呼ばれ方が良い!」
提督が動揺している。義理とは言え弟になるわけだし当然と言えば当然なのだが一応上官と部下の関係もあるし、何より姉さんの事を初春姉さまと呼んでいる提督は違和感しかない。

「は、初春姉さま…」

「…」

「…」

「…」

「…」

「…ふむ、想像以上に気持ち悪いのう…」
「呼ばせといてこの言い草か。なかなか君も残酷だな。」
「冗談じゃ、冗談。いや、無論そう呼びたいなら呼んでも良いが…」
「遠慮させてもらうよ。」
「えー、子日は提督に『子日お姉ちゃん』って呼んで欲しいよ。」
初春姉さんと違い子日姉さんは限りなく天然でやっているから質が悪いと思う。

と、まぁ姉妹への挨拶は無事済んだ。だが、私にはまだやる事がある。



姉さんや提督達と別れ目的の人物を探す。彼女は軍港の灯台の上でたたずんでいた。

「ここに居たのね。若葉。」
「何の用だ?愛しの提督とイチャついてれば良いだろ。」
「…あんな風に飛び出していかれてほっとける訳無いでしょ…」
「余計なお世話だ。」
「悪いけど私はお節介な船だからね。迷惑がられようが、人の恋路を邪魔する意地悪な姉が相手だろうがほっとけないのよ。」
「…お人よしだよ、お前は。」
「褒め言葉として受け取っておくわ。」
そして私は若葉の横に立つ。

「…」

「…」

しばらく沈黙が続く。先に沈黙を破ったのは若葉だった。

「なぁ、初霜…私は意味も無くお前と提督がそういう関係になるのに反対しているわけじゃないんだぞ。」
「…へぇ。何かご大層な理由でもあるのかしら?」
「…怒ってるのか?」
「さあね、まぁ今までずっと人の恋愛感情を否定されてきたからね。意地悪な姉に虐げられるシンデレラの気持ちが良く分かったわ。」
「分かった分かった。私が悪かったよ。」
憎まれ口を叩きながらも私が聞いてくれている事を確認して若葉は続ける。
「…私が一番恐れている事はだな…お前が提督と付き合うのは良い。だがこのご時勢だ…どちらかが先に死ぬ可能性もある。それを受け入れる覚悟がお前達にあるのか。と、心配になってな。」
「…」
「…大切な物を失って壊れる様な事にはなって欲しくない。お前にも、提督にも…もし後追い自殺なんてされて困るのはこっちだしな。」
「…私もそれについては告白前に何度も考えたんだけどね…」
私は言葉を紡いでいく。

「…覚悟はあるわ。若葉の言うとおりこのご時勢だからね、どっちかが先に死ぬかもしれない。」
もっとも、もしそんな事になったらワンワン泣いて数日は塞ぎこむだろう。が、流石に若葉の言う通り後追い自殺なんて馬鹿な事はしないと思う。多分。

私は言葉を続ける。

「でも、だからこそ私は生きているうちに成せるべき事をしたいのよ。若葉も雪風ちゃんの最期は聞いてるでしょ…不沈艦を謳われた彼女も日本に帰還する事は出来なかった。人や船の最期って本当にあっさり訪れるからね。もしかしたら私も次の出撃で機雷踏んで沈むかもしれないし、深海棲艦を狩りつくして戦争を生き延びても帰還途中に事故で死ぬかもしれない…」

余談だが、雪風改め丹陽は戦後しばらく台湾で旗艦を務めていたが退役にあたり日本へ返還される話があったらしい。だが、直前で台風による損害で破損。そのまま現地で泣く泣く解体され錨と舵輪だけが日本に帰って来たそうだ。スクリューは台湾で保管されているらしい。もっとも以前雪風本人に無念ではなかったか?と聞いたら「日本も台湾も雪風にとっては大切な祖国ですから結果的にはこれで良かったんですよ。」と言っていたが。

「…でも、死ぬ時に後悔はしたくないのよ。これは一度前世で沈んだからはっきりと言えるわ…あの時は後悔と無念しかなかったから。」

正確には私の最期は大破着底だがあの時は竜骨がへし折られ、船として死んだも同然だったから沈んだようなものだ。

「それがお前の答えか…」
「ええ。もちろん死ぬつもりは無いけどね。」
私もあっさり沈むつもりは毛頭無い。仮にそうなりそうでも前世の様に最期まで抗いきってやるつもりだ。
「…」
私の言葉を聞いてしばらく黙っていた若葉だが意を決したように口を開いた。
「お前の覚悟は分かった。提督と付き合うことを私も認めよう。」
「…ありがとう。」
「ただし条件がある。死ぬなよ、お前達二人が生きて幸せになる事が条件だ。」
「前にも言ったでしょ。私はこれでも幸運艦なのよ。」
「余計なお世話だったか?」
「いえ、若葉の言う通り必ず生きて提督と添い遂げる。それを改めて決意させてもらったわ。」
「そうか。悪くない心意気だ。」
と、言って若葉は笑った。

続編

続編の「ケッコンカッコカリ~初霜の場合~ VS提督LOVE勢の巻 前編」は散逸。全文が残るのは続々編で終編の「ケッコンカッコカリ~初霜の場合~ VS提督LOVE勢の巻 後編

リンク

恒心文庫
メインページ ・ この作品をウォッチする ・ 全作品一覧 ・ 本棚 ・ おまかせ表示