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「恒心文庫:誤算(2021年)」の版間の差分

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>チー二ョ
(ページの作成:「__NOTOC__ == 本文 == <poem> 山岡裕明はついに決断した。 この炎上騒動を鎮火せねばならぬと。 刃物で滅多刺しは奴らの思う壺、焼…」)
 
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*[[恒心文庫:誤算(2015年)]] - 同タイトル
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2021年8月20日 (金) 03:06時点における最新版

本文

山岡裕明はついに決断した。
この炎上騒動を鎮火せねばならぬと。
刃物で滅多刺しは奴らの思う壺、焼き殺すのもこの炎上騒動を彷彿とさせるのでNGだ、自殺に見せかけて絞殺するのも奴の弟との関係が取り沙汰されそうだ。沈めて殺そうと思ったが、さるお方を刺激しそうなので断念した。仕方がないので裕明は鍛えた己の肉体で滅多打ちにして殺すことにした。

あのパカデブはボンクラで単純だ、ラブレターに見せかけてある部屋の一室に貴洋を呼び出した。
ウキウキで踊るような足でこちらにやってくるデブを確認した後、部屋の鍵を開け、貴洋に姿が見えないように別室で息を押し殺す。
パカデブには部屋の一室で待つように指示してある。
貴洋が部屋の真ん中でキョロキョロしているのを確認した後、さっと部屋に入り入り口の鍵を閉める。
キョトンとする貴洋をみて笑みが溢れる、今からこいつは俺に撲殺されるのだ、ネット史に残る大炎上は俺の手で遂に終わりを迎えるのだから。

「唐澤貴洋、あんたはここで死ぬんだ」
相変わらずキョトンとする貴洋。
するすると裕明は近づき貴洋の二重顎に自慢の一撃を叩き込む。
床に倒れ込んだ貴洋の頭にひたすらストンピングを決めて確実に殺す、その手筈だった。しかし先に床に倒れ込んだのは裕明だった、貴洋の右フックが裕明の細い顎を先に捉えたのだ。無機質な目で裕明を見下ろす貴洋、すぐさま立ち上がる裕明だが足元がおぼつかない。一体何が起こったんだ?なぜあのデブがあんなタイミングで右フックが打てる?

このままやられてなるものかと裕明は貴洋に殴りかかる、しかし裕明の連打は全て貴洋の必要最低限のバックステップとパリングによって無効化された。それどころか貴洋の強烈な踏み込みとパンチのコンビネーションに裕明はガードを固めて下がるしかなかった。貴洋と裕章の体重差は30キロ以上、手打ちのパンチですら裕明にはかなりの威力に思えた。
完全にせめあぐねる裕明がそこにいた。
自分より小柄なデブがやたら機敏かつ高速で動くため的が絞れない、やたらと足が短く頗るボディを叩きにくい。おまけにサウスポーである、こんな親の脛を齧っていたクソデブがこんなに強いだとは、誤算だった。

蹴りを入れようにも全てサイドステップでかわされ、貴洋が軽快なフロントステップをしつつ自分の懐に入り込んでくる、ヘッドスリップをしながら放つ貴洋の左ストレートに裕明は全く反応できず何度も顔を跳ね上げられた。
闇雲にうつ裕明の左のパンチに貴洋が凄まじいタイミングでクロスカウンターをたたき込み、糸の切れた人形のように裕明は再び床に倒れ込んだ。
なぜこんなデブがこんなに早く動けるんだ、こんな筈では、さまざまな思考が頭の中をぐるぐると回る。
その間、貴洋はベルトをカチャカチャと外していた。
そのまま馬乗りになり裕明の首に徐にベルトをかけると全力で首を締めはじめた、暴れる裕明の力なぞ歯牙にも掛けないのだと言わんばかりに貴洋は建物のむき出しの鉄骨にベルトを引っ掛けそのまま裕明を宙吊りにした、すぐに動かなくなる裕明。
貴洋はその様を見て歓喜していた
「目から光が消えていく瞬間も大好きです!命の終わりも大好きです!」
廃墟ビルの一室でぶらぶらと揺れる己の骸を残しある男の野望は潰えた。

挿絵

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