「唐澤貴洋Wiki:チラシの裏/プロバイダ責任制限法改正案」の版間の差分

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>長谷川良平
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{{注意|{{wpl|Wikipedia:独自研究は載せない|独自研究}}が含まれているおそれがあります。}}
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'''記事タイトル未定'''とは、[[唐澤貴洋]]の主張する「{{wpl|特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律|プロバイダ責任制限法}}」の改正とその内容である。<br>
当記事では、[[唐澤貴洋]]の主張する「{{wpl|特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律|プロバイダ責任制限法}}」の改正とその内容について、断片的に行われてきた唐澤貴洋の主張を綜合するとともに、その内容に対する検証・批判を行う。
 
当項目では、断片的に行われてきた唐澤貴洋の主張を綜合するとともに、その内容に対する検証・批判を行う。


== 唐澤貴洋による主張 ==
== 唐澤貴洋による主張 ==
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== 【問題点1】そもそも改正の必要があるのか ==
== 【問題点1】そもそも改正の必要があるのか ==
尊師はTwitter上で「プロバイダ責任制限法改正」というフレーズを念仏のように唱えているが、これまでの発言から確認できる範囲では、現行法のどこに問題がありどう改正すればよいのかを一切述べていない。
尊師はしばしば、「開示の基準が高く、また作業も莫大なため、十分な対応を取ることが困難である」と主張している。果たしてこの主張は正しいのだろうか。
 
現在のプロバイダ責任制限法の下で、中傷動画の削除・抑制に成功した事例として、「エアコースト」として知られる一連の{{nicodic|エア本さん|エア本}}動画への対応がある。
 
一連の動画の元ネタである宗教団体は、有能な弁護士を起用。著作権侵害を理由として[[niconico|ニコニコ動画]]に投稿者のIPを任意開示させた上で各プロバイダに訴訟を起こし、エア本動画の投稿者の発信者情報を開示させた。その結果、開示を恐れた他のエア本動画投稿者が自主削除するなどしたため、エア本動画は急速な勢いで衰退した<ref>これらの発信者情報開示裁判により、著作権法の専門書や雑誌に掲載される判例に「チキ本さん~呪われしモザイク事件」などいったエア本動画のタイトルが残ることになった。</ref>。
 
この一連の開示ラッシュの中で損害賠償請求まで至った者、あるいは逮捕者は存在せず、いわゆる「[[丸の内OCN|空のピストル]]」としての開示であったと言える。この点までは尊師と同様であるが、一方は動画の投稿が激減し、一方は今日に至るまであらゆる手段で誹謗中傷が続けられている。
 
宗教団体側の対応において、唐澤貴洋との大きな違いは、客観的に認定の容易な'''著作権侵害'''としてニコニコ動画に訴えた点にある。「明らかに違法な」動画の投稿者のIPは任意開示のハードルが低かった。
 
任意開示を引き出すことでIPの開示に手間を要しなかったため、弁護士はプロバイダへの契約者情報開示請求に注力することができ、結果大量の契約者情報を開示することに成功。


現在のプロバイダ責任制限法の下で、違法な動画をアップロードした投稿者の発信者情報開示に成功した例として、一連の{{nicodic|エア本さん|エア本}}動画に対する{{wpl|創価学会|某宗教団体}}の対応がある。
いつでも敗訴確定の裁判にかけられかねなくなった投稿者らは萎縮、「消せば増える」と言われた削除→再投稿のイタチごっこは終わり、動画投稿の極端な縮小に至った。


同団体はきわめて有能な弁護士と連携し、同団体が著作権を保有する動画の著作権侵害を理由として[[niconico|ニコニコ動画]]<ref>自らに対する名誉毀損に該当するはずの多数の[[パカソン]]やMMDを削除せずに放置しているニコニコ動画運営に対して、尊師は不思議なことになぜか怒りを一切示していない。挙句の果てには、ニコニコ動画の運営会社のトップだった[[川上量生]]が起こしたスラップ訴訟の弁護まで行っている。</ref>に投稿者のIPを任意開示させた上で各プロバイダに訴訟を起こし、エア本動画の投稿者の発信者情報を開示させた。その結果、開示を恐れた他のエア本動画投稿者が自主削除するなどしたため、エア本動画は急速な勢いで衰退した<ref>これらの発信者情報開示裁判により、著作権法の専門書や雑誌に掲載される判例に「チキ本さん~呪われしモザイク事件」などいったエア本動画のタイトルが残ることになった。</ref>。
このように、'''有能な弁護士が筋の良い主張をすれば誹謗中傷の抑制は可能'''であり、唐澤貴洋の主張するような法改正は不要であると思われる。


これは決して依頼者が巨大組織であったから開示されたということではなく、'''有能な弁護士がニコニコ動画における不法行為を的確に指摘して、ニコニコ動画側に動画投稿者のIPを任意開示させ、プロバイダに対してプロバイダ責任制限法と不法行為を根拠として発信者情報開示を求める裁判を起こしたからこそ、なし得たことである'''。逆に、尊師のような無能弁護士に同様の内容を頼むと、着手金だけ取られて全面敗訴した[[川上量生]]のような結末となる。
とはいえ、これは著作物を持つ、資金力に優れる宗教団体の事例であり、小規模事業者や個人の訴えに対応するには、唐澤の主張する「第三者に開示させる」ことは有効であるように思われる。
 
 
'''以下は削除ないし節移動予定'''


総務省では現在、プロバイダ責任制限法の改正を検討しているが、不法行為の類型のうち、特に名誉毀損については、上述の川上vs山本裁判からも分かるように、文脈によって不法行為の認定が変わりうることもあり、専門家でも判断が難しい<ref>某宗教団体は、仮に名誉毀損で開示申請をした場合には不法行為認定が困難になることを踏まえ、客観的に不法行為の認定が容易で、コンテンツプロバイダ側が任意開示を拒むことが困難な著作権侵害を元にエア本動画の発信者情報開示を行ったのではないかと考えられる。</ref>。
総務省では現在、プロバイダ責任制限法の改正を検討しているが、不法行為の類型のうち、特に名誉毀損については、上述の川上vs山本裁判からも分かるように、文脈によって不法行為の認定が変わりうることもあり、専門家でも判断が難しい<ref>某宗教団体は、仮に名誉毀損で開示申請をした場合には不法行為認定が困難になることを踏まえ、客観的に不法行為の認定が容易で、コンテンツプロバイダ側が任意開示を拒むことが困難な著作権侵害を元にエア本動画の発信者情報開示を行ったのではないかと考えられる。</ref>。
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このように、感情的かつ非論理的で場当たり的な主張を行う尊師とは冷静な法的議論が行えるわけもなく、尊師とネットの法規制を議論する法曹関係者の存在は、今のところ確認することができない。
このように、感情的かつ非論理的で場当たり的な主張を行う尊師とは冷静な法的議論が行えるわけもなく、尊師とネットの法規制を議論する法曹関係者の存在は、今のところ確認することができない。


== 【問題点1】不法行為の成立について ==
== 【問題点2】不法行為認定の難しさ ==
尊師は弁護士ドットコムニュースにおいて'''「ネット上の名誉毀損行為、執拗な侮辱行為について、傷害罪と同程度の罰則にすることを提案します。」'''と主張している。
問題点1では、サービス事業者から任意開示を引き出すことで効率よく誹謗中傷に対応した事例を紹介した。
 
現行の刑法204条で定められている傷害罪の法定刑は'''15年以下の懲役または50万円以下の罰金'''である。一方、刑法230条で定められている名誉毀損の法定刑は'''3年以下の懲役若しくは禁錮または50万円以下の罰金'''である。
 
よって、尊師の主張を言い換えると'''「刑法を改正して名誉毀損罪の法定刑の上限を懲役15年まで引き上げろ」'''ということになる。
 
しかし、インターネット上の書き込みによって裁判所が発信者情報の開示を認めるのは刑事・民事を問わず、{{wpl|不法行為}}が成立している、もしくは成立している蓋然性が高い場合に限られるのである。(プロバイダ側のIP自主開示については問題点2~3を参照)


尊師はなぜか刑法改正による名誉毀損の重罰化のみに固執しているが、名誉毀損以外にも侮辱、脅迫、威力業務妨害、著作権侵害などの様々な不法行為が存在する。また、不法行為は刑事だけでなく民事でも同様に成立する。
では、サービス事業者や第三者機関が明らかな誹謗中傷に対してより積極的な任意開示を行えば誹謗中傷は抑制されるのではないか、という考え方ができる。


仮に、尊師が主張するように特定の不法行為における刑事罰の上限を引き上げたところで、該当の事件を起訴するかどうかは検察の判断に委ねられるし<ref>不思議なことに、尊師はこの点を完全に無視している。</ref>、裁判所が認定する不法行為の程度により量刑は変動する<ref>これまで判明している限りでは、尊師は刑事裁判の実務経験が全くない。そのため、不法行為の認定や量刑の相場に関する状況などの実際の刑事裁判が抱える難しい課題を考慮せずに、名誉毀損の法定刑引き上げばかりを声高に主張しているのではないかと推測される。</ref>。すなわち、尊師が主張するような「名誉毀損の法定刑上限引き上げ」は「名誉毀損の重罰化」と同義ではないので、ネット上の誹謗中傷行為のブレーキになる可能性は低い。
しかし、この「明らかな誹謗中傷」の線引きが非常に難しい(故に事例ごとに裁判所の判断を要する)、というのが実情である。


不法行為の成立要件は、民事事件でも基本的に刑事事件と概ね同一である。[[川上量生]]{{wpl|山本一郎 (実業家)|山本一郎}}を相手取って起こした民事裁判(平成30年(ワ)第38265号)では、尊師が川上の代理人を務めており、法廷において名誉毀損や侮辱を主張したが、東京地裁は2020年3月、原告(川上)全面敗訴の判決を言い渡した。この裁判は名誉毀損ならびに侮辱の不法行為成立における尊師の法的知見の乏しさが露呈しており、本項における教材としてきわめて有用なので、該当の判決内容を引用する。
明らかな誹謗中傷と思われるものに対して、不法行為が成立しなかった事例として、唐澤貴洋の担当した[[川上量生]]vs{{wpl|山本一郎 (実業家)|山本一郎}}の裁判(平成30年(ワ)第38265号)がある。


山本の書き込みのうち、尊師が不法行為を指摘したのは以下の3件である。(太字強調は引用者による)
山本の書き込みのうち、尊師が不法行為を指摘したのは以下の3件である。(太字強調は引用者による)
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  3 '''貴公の首は柱に吊るされるのがお似合いだ'''
  3 '''貴公の首は柱に吊るされるのがお似合いだ'''


これらの山本一郎の書き込みを見ると'''「狂ってる」「馬鹿」'''に加えて、'''「貴公の首は柱に吊るされるのがお似合いだ」'''という、一見すると[[神聖六文字]]にも似た内容の文章があるため、外形的には不法行為が成立するように見える。しかし、'''東京地裁は下記の理由で、尊師の主張を全て却下した'''。(以下は判決の要点を要約したものである。判決文全文は山本一郎のブログ<ref>{{archive|https://lineblog.me/yamamotoichiro/archives/13248908.html|http://archive.vn/EDPXG|やまもといちろうブログ 川上量生さん、盛大に批評されてムカついても裁判起こしても1円の名誉毀損も勝ち取れず}}</ref>を参照されたい)
これらの山本一郎の書き込みを見ると'''「狂ってる」「馬鹿」'''に加えて、'''「貴公の首は柱に吊るされるのがお似合いだ」'''という殺意の表明とも取れる文言があり、非常に強い中傷、脅迫であるように思われる。しかし、'''東京地裁は下記の理由で、尊師の主張を全て却下した'''。<br>(以下は判決の要点を要約したものである。判決文全文は山本一郎のブログ<ref>{{archive|https://lineblog.me/yamamotoichiro/archives/13248908.html|http://archive.vn/EDPXG|やまもといちろうブログ 川上量生さん、盛大に批評されてムカついても裁判起こしても1円の名誉毀損も勝ち取れず}}</ref>を参照されたい)


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'''尊師の渾身の主張は、東京地裁によって法的観点からあっさりと全否定されるに至ったのである'''
こうして'''上記すべての文言は誹謗中傷には当たらない'''という判断が下ることとなった。


この判決において、'''「社会通念上許される限度を超える」「人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評のしての域を逸脱したもの」'''という点は名誉毀損裁判における不法行為の重要な判断ポイントである。
このように、誹謗中傷による不法行為の判断は、文脈、両者の関係などの様々な要素が考慮されるため、パッと見て「死ね」と書いてあれば違法、というような簡単なものではないのである。
 
このように、名誉毀損については不法行為の認定がきわめて難しい。よって、尊師が主張するように、仮に刑法を改正して名誉毀損などの罪を重罰化したところで、'''不法行為が成り立たない場合は発信者情報の開示自体が認められないのである'''。


名誉毀損とは異なり、「殺す」「爆破する」などのわかりやすい犯罪予告は脅迫や威力業務妨害に該当するので、刑事事件として処理しやすい。しかし、単純に神聖六文字を書き込めば脅迫になりうるが、例えば「「[[唐澤貴洋殺す]]」とネット上で大量に書き込まれているかわいそうな弁護士がいる」といった表現であれば、文脈にもよるが同じ神聖六文字でも違法性が阻却され、名誉毀損や脅迫にはならない可能性が高い。また、「殺す」と類似した内容で、書き込まれた対象者に精神的苦痛を与えかねない'''「死んでくれ」については脅迫に該当しないとされるため、警察も全く動かないという'''<ref>{{archive|https://www.bengo4.com/c_23/n_11458/|https://archive.vn/w60fA|ネットの中傷地獄で自殺未遂、そして出家…元女性アナ、執念で加害者を特定 「被害者の駆け込み寺つくりたい」弁護士ドットコムニュース、2020年7月11日}}
名誉毀損とは異なり、「殺す」「爆破する」などのわかりやすい犯罪予告は脅迫や威力業務妨害に該当するので、刑事事件として処理しやすい。しかし、単純に神聖六文字を書き込めば脅迫になりうるが、例えば「「[[唐澤貴洋殺す]]」とネット上で大量に書き込まれているかわいそうな弁護士がいる」といった表現であれば、文脈にもよるが同じ神聖六文字でも違法性が阻却され、名誉毀損や脅迫にはならない可能性が高い。また、「殺す」と類似した内容で、書き込まれた対象者に精神的苦痛を与えかねない'''「死んでくれ」については脅迫に該当しないとされるため、警察も全く動かないという'''<ref>{{archive|https://www.bengo4.com/c_23/n_11458/|https://archive.vn/w60fA|ネットの中傷地獄で自殺未遂、そして出家…元女性アナ、執念で加害者を特定 「被害者の駆け込み寺つくりたい」弁護士ドットコムニュース、2020年7月11日}}
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「明らかな誹謗中傷を第三者に開示させる」という唐澤の主張は、このような不法行為認定の難しさを無視した荒唐無稽な主張であると言える。
== 【問題点3-1】事業者の負担 ==
ではここで、仮に唐澤の主張する「通信ログの保存期間の法規定」「第三者、サービス事業者による開示」が法制化されたとする。
当然唐澤はログの保存期間をより長くすることを意図していると思われるため、サービス事業者は莫大な量の通信ログを保存しておかなければならない。
保存容量を確保するための設備投資はもちろん、個人情報であるこれらの情報を保全・管理するための人材も必要とされ、事業者への重い負担が予想される。
「第三者による開示」について考えると、これには「投稿内容の確認」及び「違法性の検証」という作業が必要である。
つまり、[[Twitter]]であれば、「Twitter社は、Twitterにおけるすべての投稿を閲覧し、その違法性を検証し、開示をせよ」ということになる。
これには中国のインターネット検閲システム「金盾」並みの大規模な監視体制が必要と考えられ、要する設備・人材の規模は非現実的なものである。
さらに、金盾は国家事業だが、私企業である事業者が「IPを開示したが違法性なしとされた」、いわば「誤開示」をした場合、事業者は個人情報保護法違反、プライバシー漏洩などの法的責任を当然追及されることになる。
仮に税金を使って運用する国家機関であったとしても、プライバシー保護、通信の秘密の保護、検閲の危険性、また事業規模が莫大であることなどから現実的であるとは言い難い。


こうした負担ないしリスクの大きさは、現在のインターネットの規模を考えれば一企業が負うのは到底不可能であり、唐澤の改正案は願望の域を出ていない。


== 【問題点3】プロバイダ責任改正法のスラップ訴訟への悪用の危険性 ==
== 【問題点3-2】プロバイダ責任改正法のスラップ訴訟への悪用の危険性 ==
「プロバイダ責任改正法」についてはTwitter上で[[道端にしか熱量は存在しない。|謎ポエム]]などを書くばかりで、改正を求める具体的な根拠や目的を何ら示さない尊師であるが、これまでの発言を総合すると'''「日本政府はプロバイダ責任改正法を早急に改正して弁護士が発信者情報を開示しやすくしろ」'''(=[[パカ弁|パカビジ]]をやりやすくしろ)ということになる。
「プロバイダ責任改正法」についてはTwitter上で[[道端にしか熱量は存在しない。|謎ポエム]]などを書くばかりで、改正を求める具体的な根拠や目的を何ら示さない尊師であるが、これまでの発言を総合すると'''「日本政府はプロバイダ責任改正法を早急に改正して弁護士が発信者情報を開示しやすくしろ」'''(=[[パカ弁|パカビジ]]をやりやすくしろ)ということになる。