「唐澤貴洋の裁判一覧/東京高等裁判所平成27年(ネ)第1347号」の版間の差分
*>異教徒に強い弁護士 細編集の要約なし |
>唐澤貴洋が人間革命燃やしつつ創価学会インターナショナル馬鹿にした 編集の要約なし |
||
83行目: | 83行目: | ||
裁判官大竹優子は,転補のため署名押印することができない。裁判長裁判官 石井忠雄 | 裁判官大竹優子は,転補のため署名押印することができない。裁判長裁判官 石井忠雄 | ||
==医事法令社「医事判例解説」による説明== | |||
医事法令社「医事判例解説」8月号において、この裁判の判例が「指標事例 5選」のうちの一つに選ばれた。 | |||
<gallery widths="200px" heights="200px" perrow="8"> | |||
ファイル:Ijihanrei_1.jpg|目次 | |||
ファイル:Ijihanrei_2.jpg|判例5選 | |||
ファイル:Ijihanrei_3.jpg|要約 | |||
ファイル:Ijihanrei_4.jpg|概要(1) | |||
ファイル:Ijihanrei_5.jpg|概要(2) | |||
ファイル:Ijihanrei_6.jpg|概要(3) | |||
ファイル:Ijihanrei_7.jpg|概要(4) | |||
ファイル:Ijihanrei_8.jpg|医師のコメント(1) | |||
ファイル:Ijihanrei_9.jpg|医師のコメント(2) | |||
ファイル:Ijihanrei_10.jpg|医師のコメント(3) | |||
</gallery> | |||
==関連項目== | ==関連項目== | ||
*[[唐澤貴夫]] | *[[唐澤貴夫]] |
2016年8月31日 (水) 15:04時点における版
東京高等裁判所
平成27年(ネ)第1347号
平成27年07月08日
東京都(以下略)
控訴人 X
同訴訟代理人弁護士 唐澤貴洋
東京都(以下略)
被控訴人 学校法人Y大学
同代表者理事長 C
同訴訟代理人弁護士 木﨑孝
同 城石惣
主文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人は,控訴人に対し,1000万円及びこれに対する平成26年2月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 仮執行宣言
第2 事案の概要(略語は,原判決の例による。)
1 本件は,控訴人(昭和39年(以下略)生まれの女性)が,右肩関節痛を訴え,被控訴人の開設に係る本件病院の整形外科を受診したところ,担当医であるD医師らは,控訴人にステロイド薬であるプレドニン錠を処方するに際し,その副作用を説明すべき注意義務があるのに,これを説明せず,また,その適正量を処方すべき注意義務があるのに,過剰な量を処方したことにより,控訴人に右上腕色素沈着,両母趾MTP関節痛,パニック症状を発生させ,控訴人に肉体的精神的苦痛を与えたと主張して,被控訴人に対し,債務不履行又は不法行為を理由とする損害賠償請求権に基づき,慰謝料1000万円及びこれに対する不法行為のあった日の後で,訴状送達の日の翌日である平成26年2月15日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
2 原審は,D医師の説明義務違反は認められない,D医師の処方上の注意義務違反があるというには疑義があるが,仮に処方上の注意義務違反が認められるとしても,控訴人主張の症状との間の相当因果関係があるとは認められないと判断して,控訴人の請求を棄却した。
3 これを不服とする控訴人が本件控訴を提起した。
4 前提事実,争点及びこれに関する当事者の主張は,原判決5頁2行目及び同頁7行目の各「平成26年6月25日」をいずれも「平成25年6月25日」と改め,後記5において当審における当事者の新主張を加えるほかは,原判決の「事実及び理由」の「第2 事案の概要」1及び2並びに「第3 当事者の主張」1ないし4(原判決2頁6行目~6頁25行目)に記載のとおりであるから,これを引用する。
5 当審における当事者の新主張
〔控訴人〕
ステロイド服用の即時中止は推奨されておらず,2週間で10%ずつ減量するのが一般的な漸減中止方法であり,これと異なる不適切な減薬が行われると,離脱症候群(食欲不振,全身倦怠,悪心,体重減少,頭痛など)が発生することがあるから,D医師は,控訴人にプレドニンを処方するに際し,この一般的な漸減中止方法に従った減薬を行うべき注意義務があった。
ところが,D医師は,上記注意義務に違反して,1週間で60%もの過度な減薬(平成25年6月25日に処方した1日合計50mgから同年7月2日に処方した1日合計20mgへの減薬)をし,これにより,控訴人に離脱症候群が発生したのであるから,被控訴人は,控訴人に対し,債務不履行責任又は不法行為責任を負うというべきである。
〔被控訴人〕
控訴人の上記主張は否認し,争う。
第3 当裁判所の判断
1 当裁判所は,D医師の説明義務違反も処方上の注意義務違反も認められず,控訴人の請求を棄却すべきものと判断する。その理由は,次のとおり改め,後記2において当審における当事者の新主張に対する判断を加えるほかは,原判決の「事実及び理由」の「第4 当裁判所の判断」1及び2(原判決7頁1行目~10頁24行目)に記載のとおりであるから,これを引用する。控訴人が当審において種々主張立証するところを検討しても,上記判断は何ら左右されない。
(1) 原判決7頁24行目の「しかしながら,」から8頁6行目末尾までを次のとおり改める。
「しかし,右上腕色素沈着,両母趾MTP関節痛及びパニック症状が,プレドニンの出現頻度の高い副作用であるとも,一定の出現頻度があり,かつ,重篤な副作用であるとも認めるに足りる証拠はないから,D医師が,控訴人にプレドニンを処方するに際し,これらの症状についてまで説明する注意義務はなかったというべきである。」
(2) 原判決8頁末行の「大腿骨壊死との掲載はない上に,」を削る。
(3) 原判決10頁10行目末尾に次のとおり加える。
「なお,D医師が平成25年7月2日時点においても当初予定していた投与量(1日合計10mg)を超える量の処方(1日合計20mg)をしたことはあったものの,上記処方は長期内服を前提とした漸減よりも減量後早期内服中止が相当であるとの医学的判断(乙A1)に基づくものであり,その処方期間も4日間に短縮されており,「短期使用ですむ場合は多量投与しても可」,「初期投与量の投与期間が短い場合は早く減量できます」との医学知見もあること(甲B1,甲B5)に照らせば,上記時点における処方が過剰な量の処方であったということもできない。」
(4) 原判決10頁20行目から同頁24行目までを次のとおり改める。
「以上のような事情を総合的に考慮すれば,D医師は,控訴人に対するプレドニンの処方上,当初は自らの医学的診断に基づく適正量(1日合計10mg)を大幅に超過する過剰な量の処方(50mg)をしてしまったというのであるから,その医療行為に適切を欠くところがあったことは否定し難いものの,D医師によるプレドニンの処方により,控訴人の訴えていた症状(右肩関節痛)が改善されたというのであり,他方,控訴人が顔のむくみや足の裏の異常を感ずることがあったとしても,これらの症状が悪化ないし長期化したことを認めるに足りる証拠はないのであるから,D医師の当該医療行為が著しく不適切であったとはいうことができない。
したがって,上記のような本件の事実関係の下においては,D医師に処方上の注意義務違反があったとまでいうことはできず,被控訴人は,控訴人に対し,債務不履行責任,不法行為責任を負うものではないというべきである。」
2 当審における当事者の新主張に対する判断
控訴人は,D医師には一般的な漸減中止方法に従った減薬を行うべき注意義務違反があり,これにより,控訴人に離脱症候群が発生した旨主張する。
しかし,証拠(甲B1,甲B5~甲B8)によれば,長期間の大量投与を予定する重篤な疾患,例えば,臓器障害のある膠原病疾患では初期投与量を2~4週間続け,その後1,2週間ごとに10%程度減量すべきであるものの,一般的なステロイド療法では,投与開始時に疾患活動性を抑制し得る必要十分量を投与し,徐々に減量していくのが原則であるにとどまり,具体的な投与量は,疾患,病期,活動性などによって大きく異なり,減量法に明確なエビデンスはないこと,かえって,「短期使用ですむ場合は多量投与しても可」,「初期投与量の投与期間が短い場合は早く減量できます」との医学知見もあることが認められる。なお,本件において,D医師の処方に係る減薬により控訴人に離脱症候群が発生したことを認めるに足りる証拠はない。
これらの事実によれば,重篤な疾患にり患していたわけではない控訴人に対する短期間のプレドニン投与にとどまった本件について,控訴人の主張する「一般的な漸減中止方法」が妥当するというには疑問があるから,控訴人の上記主張は,その前提を欠き,採用することができない。
第4 結論
以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,控訴人の請求は理由がないから,控訴人の請求を棄却した原判決は結論において正当であり,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第1民事部
裁判長裁判官 石井忠雄
裁判官 田中秀幸
裁判官大竹優子は,転補のため署名押印することができない。裁判長裁判官 石井忠雄
医事法令社「医事判例解説」による説明
医事法令社「医事判例解説」8月号において、この裁判の判例が「指標事例 5選」のうちの一つに選ばれた。