「唐澤貴洋の裁判一覧/東京地方裁判所平成24年(ワ)第27652号」の版間の差分
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2019年9月6日 (金) 13:49時点における最新版
全文
原告 a
同訴訟代理人弁護士 唐澤貴洋
被告 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ
同訴訟代理人弁護士 上田雅大
同 上村哲史
同 横山経通
主文
1 被告は,原告に対し,別紙情報目録記載の投稿記事にかかる別紙発信者情報目録記載の各情報を開示せよ。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
主文同旨
第2 事案の概要
本件は,インターネット上の掲示板において,別紙情報目録記載の投稿がなされたことが,原告に対する名誉毀損に当たるとして,
原告が,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項に基づき,
上記投稿をした者にインターネット接続サービスを提供したプロバイダである被告に対し,別紙発信者情報目録記載の発信者情報の開示を求めた事案である。
1 前提となる事実(特に証拠を摘示していない事実は,当事者間に争いがない。)
(1)原告は,千葉県柏市αにおいて,教育指導研究会という屋号で学習塾を個人で経営している(甲4,6,7)。
被告は,電気通信事業を営む株式会社であり,プロバイダ責任制限法4条にいう「開示関係役務提供者」に該当する。
(2)氏名不詳者(以下「本件投稿者」という。)は,別紙情報目録記載の投稿日時において,URL(http://<以下略>)で表示されるウェブサイトの電子掲示板にアクセスし,
「○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○」というスレッド(以下「本件スレッド」という。)に対し,同目録記載の投稿(以下「本件投稿」という。)を行った(甲1)。
(3)教育指導研究会は,そのホームページにおいて,インターネットの検索キーワードで「教育指導研究会 盗聴器」という表記があることや,
一部の掲示板で教育指導研究会を中傷する書き込みがあるのは,平成19年10月当時在籍していた講師が,教え子とプライベートで出かけたり不信な言動があったため,
生徒の安全を考えて同講師の授業を録音したことにつき,同講師がこれを「盗聴行為」と称して自らのブログなどで配信したことによるものである旨説明した(乙3)。
2 争点
本件投稿が原告の権利を侵害することが明らかであるといえるか。
(1)原告の主張
ア 原告の権利侵害について
本件投稿は,一般の閲覧者の普通の読み方を基準として読んだ場合,「英検だったか漢検だったかの不正合格」「盗聴器事件」という記載により,原告が個人事業として運営する教育指導研究会において,検定試験に不正なことをして生徒を合格させたとか,盗聴器をおいて生徒のプライバシーを侵害しているとの事実を摘示して原告が違法行為をしていると誤信させ,もって原告の社会的評価を低下させるものである。
なお,被告の主張するように,一般の閲覧者が直ちに具体的な個人名まで同定できなければ同定可能性が認められないものではない。
よって,本件投稿によって,原告の権利(名誉権)が侵害されている。
イ 違法性阻却事由の存在を窺わせる事情の不存在について
本件投稿は真実でない上,本件投稿で描写の対象となっているのは,小規模な一個人経営の塾の問題であり,かかる問題に何ら民主主義的意義は見出すことはできないため,到底公益目的は観念し得ず,公共の利害に関するものでもない。
なお,原告において「合格実績ねつ造」「盗聴器事件」について過去に認めた事実はない。また,本件投稿者が本件投稿を行う際,原告に事実関係を確認するなど適切な取材をした事実は存在せず,本件投稿者が「合格実績ねつ造」「盗聴器事件」という記載について真実と信ずるに足りる相当の理由があったとはいえない。
よって,本件投稿は,違法性阻却事由の要件を満たすものではなく,原告が名誉権の侵害を受けていることは明白である。
(2)被告の主張
ア 原告の権利侵害について
本件投稿には,原告の名前及びそれに関連するものは全くないから,一般の閲覧者をして,本件投稿が原告についての投稿であるとは受け取られないし,「Y先生が生徒に抱きつき事件」「英検だったか漢検だったかの不正合格」「盗聴器事件」との記載だけでは,原告自身に何か問題があるとも読み取れず,原告の社会的評価を低下させるものとはいえない。
また、本件投稿は,そもそも「ここまだ潰れてなかったんだ」「もう長くないと思ったけどな」といった投稿者の単なる感想を述べたものであり,原告の名誉を毀損するものとはいえない。
イ 違法性阻却事由の存在を窺わせる事情の不存在について
子供の教育に関わる塾に対しての意見は,公共性及び公益目的があるといえる。また,教育指導研究会については,過去にも「セクハラ」「合格実績ねつ造」「盗聴器」についてインターネット掲示板で書き込みがあり,また,ある程度の部分については,教育指導研究会自身が認めていることからすれば,本件投稿の意見の前提としている事実の重要部分が真実であるか,又は投稿者が真実と信ずるに足りる相当の理由があった可能性がある。
よって,仮に,本件投稿が原告の名誉を毀損するとしても,本件投稿についてはいずれも違法性阻却事由が存在する可能性があり,原告に対する権利侵害が明白であるとまではいえない。
第3 当裁判所の判断
1 プロバイダ責任制限法4条1項1号は,発信者情報開示請求の要件の一つとして,「権利が侵害されたことが明らかであるとき」(権利侵害の明白性)と定めているところ,これは,発信者のプライバシー及び表現の自由と開示請求者の権利回復の必要性との調和を図るため,その権利が侵害されたことが明らかである場合に限って発信者情報の開示請求を認めることにしたものと解されるから,開示請求者は,権利侵害にかかる客観的な事実が存在することのみならず,その侵害行為に違法性阻却事由の存在を窺わせる事情が存在しないことをも主張立証する必要があると解するのが相当である。
2 以上の見地から,本件投稿が原告の名誉を毀損することが明らかであるか否かを検討する。
(1)原告の権利侵害について
ア インターネット上の掲示板に掲載された情報が他人の社会的評価を低下させるものであるか否かは,一般の読者の普通の注意と読み方とを基準に,前後の文脈等を考慮し,当該情報全体が読者に与える印象によって判断するのが相当である。また,当該情報の特定の表現が事実の摘示を含むか否かも,一般の読者の普通の注意と読み方とを基準として,証拠等によりその存否を決することが可能な特定の事実を摘示しているか否かによって判断すべきである。
イ そこで,本件投稿を一般の読者の普通の注意と読み方とを基準に判断すると,本件投稿のうち,原告が指摘する「英検だったか漢検だったかの不正合格」という記載は,本件スレッドのタイトルと併せて読めば,学習塾である教育指導研究会において検定試験で不正なことをして生徒を合格させたという事実を摘示することにより,教育指導研究会の社会的評価を低下させるものと認められる。
また,本件投稿のうち,原告が指摘する「盗聴器事件」という記載については,必ずしも明確ではないものの,本件スレッドのタイトル及び前後の文脈等も考慮すれば,学習塾である教育指導研究会において盗聴器が仕掛けられる事件があったという事実を摘示することにより,教育指導研究会の社会的評価を低下させるものと一応認められる。
そして,教育指導研究会は原告が個人で営む学習塾であるから,教育指導研究会の名誉を毀損することは,すなわち,原告の名誉を毀損するものと認めるのが相当であり,本件投稿の中で原告の個人名が明らかにされることは必要ではないというべきである。
ウ よって,本件投稿により,原告の権利(名誉権)が侵害されていると認められる。
(2)違法性阻却事由の存在を窺わせる事情の不存在について
ア 民事上の不法行為たる名誉毀損については,その行為が公共の利害に関する事実に係り,専ら公益を図る目的に出た場合には,摘示された事実の重要な部分につき真実であることが証明されたときは,上記行為には違法性がなく,不法行為は成立しないものと解するのが相当であり,もし,上記事実が真実であることが証明されなくても,その行為者においてその事実の重要な部分を真実と信ずるについて相当の理由があるときには,上記行為には故意もしくは過失がなく,結局,不法行為は成立しないものと解するのが相当である(最高裁昭和41年6月23日第一小法廷判決・民集20巻5号1118頁参照)。
イ これを本件についてみるに,子供の教育に関わる学習塾に関する本件投稿は,公共の利害に関する事実に係り,専ら公益を図る目的に出たものと認める余地があるといえる。
しかしながら,本件記録上,教育指導研究会が検定試験で不正なことをして生徒を合格させたり検定試験の合格実績をねつ造した事実を窺わせる証拠は見当たらない。
なお,証拠(乙1)によれば,教育指導研究会については,過去にもインターネット掲示板で「合格実績ねつ造」という書き込みがなされたことが認められるものの,これをもって「英検だったか漢検だったかの不正合格」という事実の重要な部分につき真実であることが証明されたということはできず,本件投稿者において上記重要な部分を真実と信ずるについて相当の理由があるということもできない。
他方,「盗聴器事件」という記載については,前記第2の1(3)に記載した事実を前提とすれば,教育指導研究会が講師の了解なく授業を録音した事実が認められることからすれば,摘示された事実の重要な部分につき真実であるか,または,本件投稿者においてその事実の重要な部分を真実と信ずるについて相当の理由があった可能性があり,違法性阻却事由の存在を窺わせる事情が存在しないことを認めるに足りないというべきである。
(3)以上によれば,本件投稿のうち「英検だったか漢検だったかの不正合格」という記載については,原告の権利を侵害することが明らかであると認められることになる。
3 よって,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第7部
裁判官 大須賀綾子
(別紙)発信者情報目録
別紙情報目録記載の投稿日時における別紙情報目録記載のドコモUIMカード(FOMAカード)製造番号の契約者についての次の情報
1 氏名又は名称
2 住所
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