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恒心文庫:僕は山岡裕明だ。

提供:唐澤貴洋Wiki
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本文

僕は山岡裕明だ。
有能弁護士として名高い先生と共同で法律事務所を構えている。

僕みたいなペーペーの実績もない弁護士が恐れ多くも尊敬する先生と共に働けるなんて幸せだなあ。

先生はかなり有能だ。
高学歴で弁護の手腕もあるし、人生経験も僕なんかよりかなり豊富だ。

僕はかなり無能だ。
先生と違ってパソコンの操作もうまくいかないし、インターネット事情にも疎い。
そんな僕は未熟過ぎるあまり、依頼人を未だ炎上させ続けてる。

先生を見習わなきゃ。

また、先生はルックスもかなりいい。
すらりとしたモデル並の背丈に甘いマスクも相まって若い女性に絶大な人気を誇っている。
いやルックスだけではない。
人格者で性格もとても素晴らしいから、最早人気は老若男女問わないのだ。

僕なんか性格が卑屈でブサイクで小太りで背が低くて何の取り柄もないのだ。恥ずかしながら未だに童貞で。

そんな僕に比べて先生は。
先生は。

拳を強く握った。

僕は山岡裕明だ。自分を強くもて。
憧れの存在へと昇華したはずの僕は何故まだ羨んでいるのだろうか。

嗅覚が刺激臭を感じ取る。
思わず顔をしかめた。

ぺりぺりと綺麗に懇切丁寧に剥ぎ取って消臭までしっかりしたはずなのにまだ強烈な臭いがする。

それに邪魔されて、だからまだ当職は僕になることができないのか。

「た、貴洋、お前何をやって」

洋、じゃなかった、唐澤先生のお父様の有能会計士の唐澤洋さんが腰を抜かしていた。発作を起こしたのか知らないけれど洋さんは吐瀉物を巻き散らかしている。

「やだなあ、洋さん。僕は山岡裕明ですよ。唐澤貴洋なんかという無能と混同しないでください。」

鏡にボロボロの山岡裕明の生皮を被った当職が映っていた。

そう、僕は山岡裕明だ。

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