恒心文庫:非凡のAV評論家・長谷川亮太氏(30)の仕事場に突入
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千葉県内某所、閑静な住宅街。
指定された住所に向かうとすでに長谷川氏が玄関の前に立っており、我々取材班を温かく出迎えてくれた。
長谷川(以下、長)「お待ちしていました、どうぞお上がりください」
今回我々が仕事場にお邪魔するのは、AV評論サイト『ハッセAVインフォ』を運営する長谷川亮太氏、30歳。
中立で視聴者の視点に立つ鋭い評論は高い信頼性を誇り、現在長谷川氏のウェブサイトは月間数百万PVを超える。
一方、彼は高校生時代にインターネット史最大の炎上事件の中心人物として名を馳せたことでも広く知られている。
一体彼はどのようにして"炎上高校生"から"非凡のAV評論家"へと成り上がったのか。
長谷川氏のインタビューに先立ち、我々は彼の仕事場を覗かせていただけることになった。
仕事部屋は家の2階。ドアを開けると真っ先に大画面のモニターが目に入る。長谷川氏はこのモニターでAVを視聴するようだ。
長「精確な批評のためには細部まで見る必要がありますから、このぐらいは必要なんです」
その手前には高級家具ブランドのオフィスチェアに加え、サイドテーブルの上にはこれまた最高級のヘッドフォンにティッシュペーパーが置かれている。
論評に必要な物に金銭を惜しまない、長谷川氏の職人意識が伺える。
長谷川氏がパソコンを起動し、いつも利用しているというAV販売プラットフォームにアクセスする。
我々を驚かせたのはその購入額だ。
長「サブスクも充実してきていますが、サブスクの範囲外にもいい作品が山ほどあるので(笑)
今は専ら経費で落としてるんですけど、昔は自費だったので苦労しました」
続いて彼のウェブサイトに届く閲覧者からの匿名メッセージを見せてもらった。彼のもとには1日に数百件ものメッセージが届くという。
長「例えばこの作品を批評してくれとか、この批評はどうだとか言う内容が多いですね。
ただ、やっぱり僕の評論が不満で誹謗中傷を送ってくる人もいます。そういうのはやっぱり心にきますね」
しかし、長谷川氏は今でも匿名メッセージを受け付け続けている。自分の性癖がバレてしまうのは恥ずかしいとメッセージを躊躇う人が出ないようにするため、と語った。
ー長谷川氏にインタビュー
――どうしてAV評論を始めようと?
長「そもそも僕はAVを見るのが大好きでしたから(笑)
あとは高校生時代に炎上したときも僕のAVに関する書き込みは結構評価されてたので、これを仕事にしたらいいんじゃないかって思ったのが理由です」
――高校生時代の炎上というのは?
長「僕は2ちゃんねるという掲示板サイトのなんでも実況ジュピター、いわゆるなんJっていう掲示板にコテハン(固定ハンドルネームの略)で書き込んでたんですけど、そこでひどい書き込みをしまくってたんです。
例えば自分の生活を一々書き込んで自慢したりとか、若気の至りで犯罪自慢とかもしちゃってましたね。
それで特定されてしまって、弁護士を雇ったら更に炎上して、気づいたら世界でも類を見ない超大規模炎上に発展しちゃった、って感じですね」
――炎上したことは後悔している?
長「昔はほんと、何であんな書き込みしちゃったんだろうって後悔でいっぱいでしたけど、今はあまり気に病んでませんね。
こうして名前がインターネット上に広まっていたことで、僕のウェブサイトは圧倒的な速度で知名度を上げましたから。
いわゆる『憎まれっ子世に憚る』ですかね(笑)実際、ウェブサイトの名前の"ハッセ"は僕がなんJでつけられたあだ名を流用してます」
一方、長谷川氏は今でも自身の個人情報を秘匿し続けている。
――今まで取材を受けてこなかったのは、身バレ防止のため?
長「やっぱり、住所がバレていたずらされると困っちゃうので。
それに近隣住民もAV評論家が隣に住んでるとは知りたくないでしょう(笑)」
――もし身バレしてしまったら、どうする?
長「その時はすぐに引っ越しますね。仕事道具だけまとめてホテルにこもって、そこで仕事しながら全く違うエリアの物件探すと思います。」
――なるほど。
自身の炎上を名声に換えた長谷川氏。
我々は彼のウェブサイトに関する質問に切り替えた。
――1日で批評するのは何本?
長「大体10本くらいですが、長編モノもできるだけスキップしないようにしてるのでどうしても少なくなっちゃいます。
理想を言えば全AVを批評したいんですが、多分僕が先に死にますね(笑)」
――運営スタッフは何人?
長「批評する人員を増やすのは一時期考えたんですが、やっぱり人によって評価が変わっちゃうっていうのがあるので僕一人でやり切ると決めました。
ウェブサイトの管理だとか、文章の推敲なんかは専門で雇ってる人がいるので合計で5〜6人くらいだと思います。」
――評論を書く上で守っていることは?
長「一番は自分の好き嫌いを反映させないってことですかね。
仕事上自分が苦手なジャンルも見なきゃいけないんことがどうしてもあるんですが、その時も出演している方に敬意を払って出来る限り抜けるポイントを探すようにしています。
あとはAVの中の"一瞬の違和感"を見逃さないことですね」
――"一瞬の違和感"?
長「例えば自分の性癖どストライクのめっちゃエロいAVを見てたらフィニッシュ中の女優の顔が微妙で一気に萎えるって経験、あるじゃないですか。
僕は評論を見てくれている人にそういう思いをさせたくないので、微妙だった点はたとえコンマ1秒以下でもしっかり評価の中に入れるようにしているんです」
――仕事をしていて嬉しい瞬間は?
長「基本自分の好きなもの見てられるのでずっと嬉しいですね(笑)
ただ僕が傑作と評した作品を見た人から感謝のメッセージを貰ったときとか、マイナージャンルから抜ける作品を掘り当てた時とかはやっぱり嬉しいです」
――最後に、長谷川さんにとってAVとは?
長「自分の性癖の新たな可能性という原石が埋まった鉱山です。
掘り当てたときはくすんでいて可能性に気づけなくても、色んな角度から見てみたり磨いてみたりすることでキラリと光る部分を見つけられる。
今でも新しい性癖に目覚める瞬間があります」
――ありがとうございました。
AVに対する愛と、自身の評論に対するストイックさ――
長谷川氏の評論は、彼が持つ仕事へのプライドで強く支えられているようであった。
(文・石渡貴洋)