恒心文庫:苦悩の林檎
本文
「Three Million Sweets Mafia」
浅草に突如現れた不穏な甘味屋である、という。
「Sweets Mafia」とは何か。
KKKと見紛う怪しい扮装はいかなる理由なのか。
何故メニューにりんご飴しか無いのか。
何故弁護士とコラボレーションしたのか。
まずは名前である。
「Three Million Sweets Mafia」とは、一体何を意味するのか。
麻薬のようなスイーツで人と人を繋ぐ……というような意味など読み取れるはずもない。
普通に考えれば、「Three Million」は、もちろん金のことであろう。上納金か年会費か入会費なのか……。
それを念頭に置けば「Sweets Mafia」の意味も自ずと分かる。頭文字を取れば「SM」となるのだ。
これで、スタッフが異様な覆面をかぶっている謎も解き明かされる。
SMクラブは日常の軛から解き放たれた者たちが、SとMという枠の中で非日常を楽しむ場である。
顔を隠す覆面は、紳士と淑女のマナーなのだ。
……だがしかし、300万円もの会費が発生するSMクラブは尋常のものではない。
SMクラブなどという言葉では済まされない、想像を絶する所業が繰り広げられていてもおかしくはない。
そうであるならば、その覆面はもしや、処刑人か。拷問吏か。
……では、りんご飴とは何を意味するのか。
拷問に使う果実とは?
ああ! なんということか!!
それはきっと「苦悩の梨」ならぬ、「苦悩の林檎」に違いない!!
甘く熱い飴を纏った林檎は、被害者の菊座の奥でそっと花開き、静かに腸を引き裂き焼け爛れさせるのだ!!
おお!
その写真を見るが良い!!
恐ろしき「苦悩の林檎」を携え、怖ろしき覆面を被り、あなたを右手の指で差している、その小太りの男のスーツ姿を!!
それは全ての罪人の肛門を破壊するもの! 全ての善人の口を塞ぐもの!!
優しい世界に新しい秩序を敷くもの。
新世界の神である。
タイトルについて
この作品は公開された際タイトルがありませんでした。このタイトルは便宜上付けたものです。