恒心文庫:炎上弁護士
本文
当職は炎上した。
今も炎上し続けている。
当職が何をしたというのか。
当職はただ当職らしく弁護士!の仕事をしているだけなのに。
悪意という名の炎が燃え上がり、当職の脂ぎった肌を舐めた。
ああ、悪いものたちの声が聞こえる。
「ヌードで詫びろ唐澤貴洋」
「乳首を見せろ唐澤貴洋」
なんという卑猥な誹謗中傷だろう。
到底許されるものではない。
乳首を見せるべきなのは山岡だろう。
この高貴な身が山岡程度と同様の扱いを受けるなど、とても我慢できない。
しかしあまりに暑かったため、当職はやむなく服を脱いで全裸になった。
もちろんこんなことで炎が消えるはずもない。
当職には当然予見できた事象である。
当職は悪いものたちに会いに行くことにした。
1.あいぴー開示をする
2.プロバイダと裁判をする
3.すべてうまくいけば悪いものの個人情報が手に入る。
すべてうまくいかなかった。
開示対象となるレス番号を間違えた。意図的にわかりにくい方法になっている。きっと当職に対する陰謀だ。
ログが残っていなかった。法整備の必要性を感じる。広く世間に訴えなければならない。
プロバイダとの裁判はうまくしゃべれなかった。プロバイダのやつらが当職を過剰に威圧したせいだ。
これらの当職の一挙手一投足は、すべて悪いものたちに見られていた。
当職に対する誹謗中傷はとどまるところをしらない。
当職は炎上弁護士だ。
今も炎上し続けているが、
もちろん当職は悪くない。
当職は炎上した。
今も炎上し続けている。
当職が何をしたというのか。
当職は正義の弁護士!の仕事をしているだけである。理不尽を感じる。
嫉妬という名の火花が延焼し、当職のふくよかな肌を焼いた。
ああ、未熟で幼いコミュ障どもの声が聞こえる。
「唐澤貴洋はアイドルオタク」
「唐澤貴洋はロリドルオタク」
なんという卑劣な誹謗中傷だろう。
当職が当事務所のために営業としてアイドルをフォローしていたのは客観的事実ではあるが当職がアイドルオタクなどという言説は事実誤認も甚だしいのであって、
当職は断じてアイドルオタクなどという人に馬鹿にされるような大人っぽくない趣味ではないということを当職は当職の声を大にして主張するものである。
到底許されるものではない。
アイドルオタクなのはむしろ山本だろう。
あいつは女好きでチャラチャラした非童貞で、アイドルの話をよくしている。
この素心弱雪のように清廉な身が山本と同様の扱いを受けるなど、とても我慢できない。
我慢できなくなった当職は、世にはびこる悪いものたちと戦うため、当職は一生懸命仕事をした。
生徒の立場に立ち学校と戦い、医療過誤の被害者の立場に立ち病院と戦い、労働者の立場に立ち、企業と戦った。
すべて負けた。頑張ったけど負けた。
しかし重要なのは勝ち負けではない。依頼人でもない。金でもない。
世の中の不条理と戦い、この世に正義を体現することこそ当職の使命なのだ。
当職の正義は唯一絶対の真理であり、法である。
つまり裁判に勝てないのは法律が悪い。当職のための法律を作って当職が大活躍できるようにしたい。
当職は炎上弁護士だ。
当職に対する誹謗中傷は収束しつつあるものの、
今も炎上し続けているが、
当職は正義であるため、
悪いのはあいつらである。
タイトルについて
この作品は公開された際タイトルがありませんでした。このタイトルは便宜上付けたものです。
挿絵
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- 初出 - デリュケースレinエビケー 炎上弁護士(魚拓)