恒心文庫:復讐
本文
「これで、これで終わりだ。」
俺は、目の前に横たわったその体にナイフを何度も何度も突き刺した。
まだ2人目。駄目だ。駄目なんだ。俺の人生を破壊した奴らはまだまだいるんだ。これだけじゃ終われない。
俺が最初に殺したのは俺の人生を狂わせた歯車の一つである弁護士。
無能デブが、結局問題は何一つも解決しなかったじゃねぇか。
実は俺はこいつを雇うのには反対だったんだ。
何か嫌な予感がしていたから。だが、両親達は言うことも聞かずに雇い、その結果炎上は拡大した。
多くの人に飛び火した。
多くの人との関係が壊れた。
俺は悪くない。
アイツを雇った俺の家族が悪いんだ。
俺は何年も前に特定されてしまった。
mixiやtwitterから本名も暴かれ自宅に何度も何度も嫌がらせを受けた。
でも、俺は悪くないよな?
暴走したあいつらが悪いんだ。
いくら何でもやり過ぎだ。
あいつら無関係な人間まで攻撃しだすんだ。やめろ、関係ない人間まで攻撃するな。元凶だけ叩いて満足しろ。関係ない人間を巻き込むな。
そうだ、あいつらが悪いんだ。俺は悪くない。なにを反省しろと言うんだ。反省なんてする訳がない。
あいつらのせいで俺の人生滅茶苦茶だ。
何だかんだで大学生活は充実していたと思う。多くの人との関係が壊れたが、ネットでの俺のことを知らない友人とは仲良くできた。
しかしネットに流出した名前と顔は絶対に消せない。就活は惨敗だった。俺は実家に帰り親の脛を齧って暮らした。
少し前に父が死んだ、嫌がらせに耐えかねて自ら命を絶った。収入源は断たれた。
バイトを始めてもすぐに見つかりネット上で拡散される。いつの間にか怖くて家から出られなくなった。
俺はふと部屋の鏡を覗いた。
昔の俺は嵐の相葉君みたいなイケメンだったのにな。
今は見る影もねぇや、ストレスで老け込んで、不潔で、黒くてブサイクで。
昔は彼女もいたなぁ。今はどうしてるのかな。
もう俺に未来はない、オッサン無職、人生敗北、一生ネットの晒し者。
だから俺は殺すことに決めた。俺の人生を狂わせたあいつらに復讐するんだ。
ガチャッ
突然部屋の扉が開いた。
「これ......あなたがやったの?」
母の幸恵だった。
「.............母さん.................ごめんな」
「..........もういいの。もう苦しまないで」
「.......警察が来てるの。あの弁護士さんを殺したの、あなたなのね?」
「......」
「いいのよ、あなたは何も悪くないわ..........もういいの、だから私と一緒に終わりにしましょう。今やこの世に残った唯一の息子だもの」
「ねぇ、裕太?」
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