恒心文庫:古畑任三郎 「無能な殺人者」
本文
えー、職業にはステレオタイプがつきまとうものです。
例えば看護師といったら女性、パイロットといったら男性、銀行員と言ったら堅苦しい、役所の公務員といったらつまらない、まだまだあります。
皆さんは警察と言ったらどんなイメージでしょうか?
では弁護士といったら・・・?
夜、雨が降る河川敷に2つの影がある。どちらも高校生くらいの青年の影だが、一人は倒れ息も絶え絶えである。
顔には無数に殴られたような跡があり、大量に出血していてもう先は長くないことがわかる。
「兄さん、どうして」
倒れた青年は声を振り絞って言うが、雨の音にかき消されてその「兄」の耳には届かないようだ。
「お前が悪いナリよ」
兄は冷たく弟を見つめながらつぶやく。
冷たい雨が弟の血を流し、拡散させ、それらはやがて川に溶けていった。
18年後――
「おい、君あの土地事件の判決今日だろ。どうだったんだ?」
そう聞かれた小太りの男はバツが悪そうに返す。
「い、いま確認しようとしてたところナリ!裁判所に電話してきくナリ!」
それを聞いた上司らしき男の機嫌は悪くなる。
「まったく、自分の担当事件なんだから他人に言われる前に把握すべきじゃないのかね
無能にも困ったものだよ」
小太りの男は下を向いたまま答えない。
「電話かけるんだろ?早くしろよ!」
「わ、わかったナリ」
「おいおいボギー1、今日はだいぶ絞られてたな。
まあ、落ち込むこたぁねーよ。どうだ、いっぱい呑みに行くか?」
小太りの同僚だろうか、髭面のサングラスをかけた男がボギー1と呼ばれた男をなぐさめる。
「そんな配慮いらないナリ!!」
「そんな言い方するこたねーだろ。せっかく誘ってやったのによお。
そういえば、今日所長に詰められてた事件、判決どうだったんだ?」
ボギー1の顔が曇る。
「ん?どうしたんだ?そんな難しい事件じゃなかっただろ?一部認容とられたか?まあそういうこともあるよ」
「・・・けナリ!」
「あ?なんだって?」
「ボロ負けナリ!相手の請求が全部通ったナリよ!」
「ええ!?そんなことあるのかよ?たまげたなぁ・・・
で、それ所長には報告したのか?」
「報告したらまた無能呼ばわりされるナリ!」
「おいおい、こういうのはさっさと報告してケツを拭いてもらったほうが」
「うるさいナリ!当職は弁護士ナリ!お前らとは違うナリ!
相手の弁護士が何か不正したに決まっているナリ!そいつのせいナリ!
もう帰ってアイス食べるナリ!」
ボギー1はそう叫ぶと手ぶらのままピョコピョコと外に飛び出していってしまった。
残されたサングラスはひとり残された事務所で呆れたようにつぶやく。
「いやいや、俺、というかここにいる奴らは事務員除いてみんな弁護士だぜ」
「当職は悪くないナリ!相手のあの女弁護士のせいナリ!」
ボギー1はキュムキュムと音を立てて街をゆく。なにやらひとりごちているボギー1を皆、怪訝そうな目で見ている。
「そうナリ!あの弁護士をポアすればいいナリよ!」
都内のマンションの前にボギー1は立っていた。
「ここがあの女弁護士のマンションナリね」
弁護士として住所を開示しようとしたが失敗し、仕方ないので裁判所の前で待ち伏せ尾行して突き止めたのである。
「こんなセキュリティ無駄ナリよ」
オートロックのマンションではあったが、ボギー1はそういうと空中浮揚をして目的の部屋のベランダに降り立った。
ボギー1にとっては幸運なことに、女にとっては不幸なことに、ベランダの鍵はかかっていなかった。
しかしそれに気がつく知能はなかったので、ボギー1は超越神力を用いてベランダのドアを開けて中に入った。
部屋の中では女が驚いた顔をしてボギー1を見る。
「当職に勝ったのがいけないナリ。
ではさよなら法曹ネキ」
そういうとクリームパンみたいな手で手元のスイッチを押して、核ミサイルを打ち込んだ。
翌朝――
「おいボギー1、聞いたか?あのお前をボコボコにした女弁護士、死んだらしいぞ!」
「そうナリか?初耳ナリ」
「どこのニュースでもやってるぜ」
「当職はイメージビデオしか見ない主義ナリよ」
「おいおい・・・」
「しかしその女弁護士も可哀想ナリね。一体誰がどこ産の核弾頭使って殺したナリかねぇ」
「それはまだわからねえって話だぜ。
ん?って、え?」
「ひどいことするやつもいるナリよね」
「お、おいボギー1、お前なんで・・・」
サングラスの男は顔を引きつらせる。
「い、いやまさかな。しかし・・・」
「ん?どうしたナリか?なんナリか?」
ボギー1は顔を真横にしてサングラスの男に顔を近づける。
「い、いやなんでもないんだ、気にしないでくれ!」
「・・・そうナリか、わかったナリ。業務に戻るナリ」
その日の夜、サングラスの男は一人事務所に残っていた。
「なんでボギー1は、女弁護士が殺されたって知っていたのか。
まあそれはまだ、あの女が若かったし裁判担当するくらい健康だったから死んだと聞いてそう思ったで通用する。
だけど、核弾頭使ったなんて、ニュースみてなきゃ知らないだろう。
まず間違いなくボギー1が女弁護士を殺した」
そう一人でつぶやきながら、サングラスの男は古い新聞の記録を漁る。
「そして、核といえば、前にも事件があった。
特徴的だから薄っすらと記憶に残ってたんだ。
暴行された死体から放射能の反応が出た事件が・・・」
やがてあるページで指が止まる。
「見つけた!これだ!
河川敷で高校生の遺体見つかる。複数の打撲痕。そして、放射能の反応。
普通は死体から放射能反応なんてでてきやしねーぞ!もしかしたらこれも・・・
って、おいおい!この高校生の名字ってボギー1とおなじじゃねーか!
年齢見るとあいつの弟なんじゃねーか?
あいつ、女弁護士だけじゃなくて、18年前に自分の弟もころ」
グシャリ。
サングラスの男は、言い終える前にその頭は潰されてしまった。
「痛いナリ?」
サングラスの男を覗きながら問いかける。しかし返事はない。
「死体に送る言葉。考えてみるとなにもない」
ボギー1は首を横にしながらナリナリと不気味に笑った。
黒い服に見を包んだ男性が自転車を漕いでいる。警察がものものしく規制線を張っているその前で降りて、規制線をくぐる。
「やあえっと・・・」
「古畑さん!お疲れ様です!」
制服の警官は古畑と呼んだ男に敬礼する。
「いや、ここまで出てるんだよ、君の名前」
そう言いながら喉のあたりを指す。
警官が名前を言うとそれを制する。
「ちょっと待った。こういうのは自分で思い出したいんだ。ア行から始まる?」
「いえ!違います!」
警官はニコニコしながら答える。
「カ行?」
「いえ!」
「サ行?」
「違います!」
「ああ、もうお手上げだ。なんだっけ」
「向島です!」
「ああそうだったね、覚えておくよ」
「ありがとうございます!」
二人がそんなやり取りをしているとハゲ散らかした男がやってくる。
「んもう古畑さん、遅かったじゃないですか!」
「ああ、ごめん好きな女優が結婚してそのニュースを見ていて」
「そんなのいいからはやくきてくださいよぉ!」
そう騒ぐ男をなだめながら事件の概要を聞いているようだ。
「ああそうだ今泉くん、喉が乾いたからそのへんの自販機で何か冷たいもの買ってきて」
そういいながら古畑は今泉と呼んだ男に千円札を渡す。
「お茶でもジュースでもなんでもいいから。君も好きなのを買いなさい。それからそこにいる、えっと」
「向島です」
「向島くんにも何か一つ。それからお釣りはくすねちゃだめだよ。後で返すこと」
「そんなあ、僕は古畑さんのパシリじゃないんですよ」
「いいからはやく。ゴー」
古畑は今泉のデコをぱしんと叩く。
「ああもぅ、わかりましたよ!」
事務所の中、応接用だろうか、立派なソファにボギー1が座っている。
警官達が慌ただしく出入りをし、現場の保全と鑑識をしているようだ。
サングラスの男の死体はまだ机に突っ伏したまま残っていた。
「いやあこれはひどい」
古畑は死体を一瞥するとすぐに目をそらす。どうやら死体が苦手なようだ。
ボギー1を見つけると声をかける。
「ああ、どうも夜分遅くにすみません。古畑と申します。
あなたが第一発見者の」
「当職ナリ」
ボギー1は名前を答えずに一人称を答えた。しかし古畑はうろたえることはない。
「お名前は今泉の方から伺っております。ああ、今泉というのは、毛が薄くて落ち着きのない男なんですが」
「先ほど話したナリ。無能そうなやつだったナリ!いろいろ聞かれたナリ。これは事情聴取ナリか?
当職は弁護士ナリ!お前らとは違うナリ!」
「いえいえ、これはあくまで形式的なものですのでお気になさらないでください」
古畑はボギー1をなだめる。
「お手数ですがもう一度死体発見時のことをお伺いしてもよろしいですか?」
「だからそれはさっきも今泉ってやつに説明したナリ!」
「あくまで形式的なものですから。簡潔にで構いませんので」
ボギー1は顔を真っ赤にしているが、まっすぐ見つめてくる古畑の目に観念したのか話し始めた。
「状況も何も事務所に入ったら死んでるのを見つけたナリ!だから警察呼んだナリ!」
「なんで死んでるとわかったんですか?まずは救急車を呼ぼうとは」
「見ればわかるナリ!頭が潰れて脳みそ出てるナリよ?生きてるわけないナリ!」
「なるほど確かにそうですね。では、なぜ夜に事務所に来たんですか?」
「残業をしていて、途中夕食を食べにいっていたナリ!」
「そうですかわかりました。ちなみに夕食はなにを?」
「これは尋問ナリか?」
「いえいえそういうわけではありません。単なる世間話だと思っていただければ」
「不愉快ナリ!」
「それは大変失礼いたしました」
そんな会話をしていると、今泉が帰ってきた。
「古畑さん、飲み物です!」
「ああありがとう。ってなんだいこれは。冷たいものを頼んだろ、これはあったかいおしるこじゃないか」
「近くの自販機それしかなかったんです!ほら、僕も自分の分おしるこです!こんな季節におしるこなんて飲みたくないですよ」
そういって今泉は自分の分のおしるこを見せる。
「冷たい飲み物が全部売り切れなんてそんなことないだろ」
「ほんとなんですってばぁ」
「はあもう君っていう人間は」
「あとお釣りなんですけど全部十円玉で、それに・・・」
「全部十円玉?まったく君は!そんな大量の十円玉持っていたくないから君が持っていなさい。あとで百円玉にして返しなさい」
「そ、そんなぁ」
今泉はじゃらじゃらとポケットから音をたてながら不満を表明する。
「ああ、これはお見苦しいところをお見せしました」
古畑はボギー1に謝るが、悪いとは思ってなさそうだ。
「その人本当に無能ナリね。それにしてもいつ帰れるナリか?もう限界ナリよ」
「あとしばらくお待ち下さい。今泉くん、死体の周り調べるよ。
死体は見たくないからもう持っていきなさい」
「は、はい!わかりました!」
古畑と今泉の現場検証が始まる。
「この机に突っ伏して死んでいたわけだね」
「はい、なにか頭部を鈍器のようなもので殴られて即死だったみたいですよ
古畑さんはちゃんと見てないと思いますけど、の、脳みそが飛び散ってて」
「やめてくれよ、聞きたくないよ」
「なんというか血と合わさっておしるこみたいでした」
「本当に君は素晴らしいね、ただでさえ飲みたくないおしるこ、飲めなくなったじゃないか」
「あ、ありがとうございます!」
「褒めてなんかないよ」
古畑は呆れた様子だ。
「ん?机の上の血の跡、なにか変だとは思わないか?」
「そ、そうですかね?普通の血に見えますが」
「君は何を見てるんだい。血の跡が、まるでなにかもともと本でもあったような形になってるだろ?」
「そうですね、もともと何があったかゴミ箱でも探しますか」
そういって今泉は部屋のゴミ箱をあさり始める。
「そんなところにあるわけないだろ。そのままゴミ箱に捨てるなんて犯人がよほど無能でない限りあるわけ」
「見つかりました!」
「・・・そうかい。で、それは・・・古い新聞のようだね」
「このページに血と脳みそがたくさんついていますよ!」
「そのページを開いて死んだということだろうけど、何が書いてあるんだい」
「はい、血で読みにくいんですが、河川敷で・・・高校生が・・・放射能反応・・・被害者の名前は・・・」
今泉はその記事の内容を読み上げていく。
「ということは犯人は彼で間違いないだろう。しかし確証がまだ」
その時だった。
あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!(ブリブリブリブリュリュリュリュリュリュ!!!!!!ブツチチブブブチチチチブリリイリブブブブゥゥゥゥッッッ!!!!!!!)
男の絶叫と排泄音が響いた。
ボギー1が盛大に漏らしていた。しかも下痢だった。
そしてそれを見た古畑は何かに気づいたような反応を見せ、今泉を引き寄せて体をまさぐる。
今泉はくすぐったそうな反応を見せる一方で、古畑はにやりと笑った。
ええ~皆さん、犯人は間違いなくあの人です。
そして今回の犯人はあまり賢くないようです。
今泉くんが見つけてくれたあの記事を見れば犯人と動機はわかります。
あとは確固たる証拠です。そしてそれは今分かりました。
ヒントは、殺人事件では真っ先に探されるべきなのにまだ話題に上がっていないもの、です。
本当はもっと真っ先に探すべきでした。
それがなにか皆さんも考えてみてください。
どうも、古畑任三郎でした。
「いやー、びっくりしました。そのなんていうかいきなり大声で・・・んふふ」
「うるさいナリ!当職は肛門が弱いナリ!」
警察官たちが床を拭いて処理をしている。下痢自体は消えたがまだ臭いは残っている。はっきり言って異臭だ。
「しかし、今のではっきりしました。あなたの同僚、彼を殺したのはあなた、ですね」
古畑は挑発するような顔でボギー1に言う。ボギー1は明らかに動揺している。
「な、何を言っているナリか?しょしょしょ証拠はあるナリ?そそそそれに動機だってないナリよ!」
「今泉くん、あれ」
古畑はボギー1を見つめながら右手だけを今泉の方に差し出す。今泉は新聞記録を古畑に手渡す。
「今泉くんがゴミ箱の中から見つけてくれました。あなたは彼のことを無能呼ばわりしていましたが、少なくとも犯人のほうが輪をかけて無能だったようです」
古畑はそれをボギー1にみせつける。
「ギギギギギクゥッ!」
「こちらがなにかおわかりですね。死体の倒れていた机の上、そちらに元々置かれていたものです。
そして、このページが開かれていたことが血液の付着具合からわかります」
「それは捨てたはず、いや!なんでもないナリ!そんなの知らないナリよ!」
「こちらを読めばあなたが同僚を殺す動機がわかります。読んで差し上げます。
河川敷で高校生の遺体見つかる。死体からは複数の打撲傷が検出され、高度の放射能反応があることから、被害者は何らかの核物質で暴行を受け死亡したと警察は見ている。
ええ~そしてここからが面白いところです。聞き逃さないでくださいよ
被害者は都内に住む男子高校生の―」
「もういい!やめるナリ!その被害者が当職の弟だとでもいいたいナリね?
そうナリよ!確かに彼は当職の弟ナリ!悪魔が突然やってきて弟をさらっていったナリ!
悪い者たちに暴行を受けたナリ!」
「いいえ違います。あなたが殺したんです。そして、同僚はそのことに気がついた。だからあなたは彼を―」
「そんな証拠はないナリ!当職は燃料棒なんかもってないナリよ!どうやって殴り殺すナリか?」
「ハイ確かにこの被害者は燃料棒で殴り殺されたようです。
しかしこの記事にはそんなこと書いてありません。
未発表で、警察しかこのことを知りません。なぜあなたがご存知なのでしょうか?」
「あああああああああああああああああああ」
ボギー1は絶叫する。古畑は続ける。
「そして、先日、とある女弁護士が核ミサイルを撃ち込まれて殺されました。その方はあなたとの訴訟で、あなたを完膚なきまでに叩きのめしたようですね。
そんな人が核ミサイルで殺される、これは偶然でしょうか?」
「あああああああああああああああああああ」
三度絶叫。
「すべて知られてしまったあなたは同僚を殺害した」
古畑は絶叫しながら踊り狂うボギー1を見据えながら言った。ボギー1は我に返って答える。
「全部憶測ナリ!証拠はあるナリか?」
ボギー1は反論する。
「凶器すら見つかっていないナリ。どうして当職がやったと言えるナリか?」
「凶器なら見つかりました。あなたの絶叫が教えてくれたんです」
そういいながら、古畑は一枚の十円玉を取り出す。
「これが凶器です。血がついていますが被害者の血と一致しました。
こいつは自販機から大量に出てきたようです。今、その自販機を調べさせています。さらに大量の十円玉が見つかるでしょう。
あなたはその大量の十円玉を、なにかビニール袋のようなものに詰めて彼を殺害したんです。
ビニール袋は外にでも捨てれば風に乗ってどこかへ飛んでいってくれます。
しかし十円玉はそうはならない。
処分に困ったあなたはその十円玉を使い切るために、自販機で大量の飲み物を買った。
自販機でお汁粉以外は売り切れていたのはそのためです。そして、冷たいものを飲みすぎたあなたは下痢になり脱糞した。
どうでしょうか?」
古畑は一気にまくし立てる。
「この十円玉があなたのだという根拠はあります。
十円玉にはすべて、このようにあなたの顔写真が貼ってある」
古畑は持っていた十円玉をクルリと回転させて別面を見せる。
「あなたは自分が使うコインはこのようにする習性があると聞いています。
そして念の為、指紋の採取もお願いしています。証拠品を事件現場のゴミ箱に捨てるような犯人だ、指紋も残っているでしょう」
古畑がそこまで言うとボギー1は観念したようだ。
「・・・はあ・・・そうナリよ。全部当職がやったナリ。
弟は燃料棒で殴り殺し、当職に恥をかかせた弁護士は核ミサイルで撃ち殺し、そしてそのことに気がついたあいつはコンビニでアイスを買ったときのビニール袋に十円玉を詰めて殴り殺したナリ」
「・・・んふう、ありがとうございます。しかしなぜまた弟さんを?」
「・・・当職は毎日、通学路を歩くかなちゃんを窓から眺めるのが趣味だったナリ。
でもある日、弟がカーテンを設置したナリ。
邪魔ナリあのカーテン。あれのおかげで、かなちゃん見えなくなったナリ。
だからポアを。これが動機ナリかね?」
そういうとボギー1はクスリと笑う。それを聞いた古畑は呆れたように首をふると、ボギー1に平手打ちを浴びせた。
驚いたように古畑を見つめる。
「それで、女弁護士の件は、どうして普通に殺さなかったんですか?なぜ核ミサイルなんかを?」
「味わってみたかったナリよ。核ミサイルを撃ち込む指導者がどんな気分ナリかってね。
指導者の鑑ナリな?」
それを聞いた古畑は呆れたようにクスリと笑う。
「最後の事件は全部言われたとおりナリ。新聞が見つかるのは誤算だったナリね」
ボギー1がそういうとしばし無言のときが流れる。
「えー、それでは行きましょうか。署の方に」
ボギー1は大人しく手錠をかけられる。
「いい弁護士なるナリね。司法試験を受けてほしいナリ。なるべく早くナリね」
「んふぅ、それはなぜ?」
「決まってるナリ!当職の弁護をするナリ!」
そういうと、ボギー1は胸元のダンボバッジを投げ捨てると、警官と一緒に出ていくのであった。