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恒心文庫:世にも奇妙な自分語り

提供:唐澤貴洋Wiki
2021年6月6日 (日) 22:56時点における>チー二ョによる版
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本文

ここ数十年で機械文明は大きく進歩しました。手紙から固定電話、携帯電話、スマホ、etc...
2017年には手首にリストバンドのようなものをつけるだけでプロジェクターで腕にスマホ画面を映し出す装置が発売されるそうです。

徐々に体に近付いてくる情報。その技術は、時に我々の身を滅ぼすかもしれません。

初日 仕事帰り
『うわマジだwww尊師出たわwww』
『ナイフで滅多刺しにして殺す』
とある匿名ネットワーク専用の掲示板でそのファイルは公開、配布された。

なんでもそのファイルに入っている画像を見るだけで現実に尊師を呼び出せるらしい。とはいっても所詮視覚エフェクト、目の錯覚みたいなもの(画像を~~秒見て目を離せば効果が出るアレ)だろう。

早速ダウンロードしてみる。

画像だけにしてはとても容量が大きい。何かウイルスでも入ってないか心配になったが、そんなことはなかった。
開くとモザイクやQRコードのようではあるが、見たこともない絵が画面一杯に表示される。先述した二つとは違い色鮮やかで、gifの効果で揺らめいた。

数秒見つめて目を離すと確かに隣りには見覚えのある無能が突っ立っている。
突然現れたそいつに驚いたが、恐怖を好奇心が抑えた。

手で触れる。すると面白いことに腹を突き抜けた。何かを触れている感触はない。
3D映像のような体験だ。
が、数秒すると消えてしまった。

『尊師面白いな』
書き込んでPCを落とし床に就く。芸術路線の進歩には驚くばかりだ。

二日目 職場
プログラマーは一日中座って画面とにらめっこをするので目と腰をよく痛める。すくなくとも私はそうだ。
「唐揚げ弁当でも食べに行きましょうよ」
同僚からの昼のお誘いも、面倒くささと腰の痛さから断ってしまった。弁当なんて持ってきてないのにどうするつもりなのか。自問自答すらも面倒くさい。
「う~ん」
座ったまま背を反らせる。ポキポキという心地いい音は耳に入らなかった。
逆に見慣れているが見慣れないそいつは視界に入る。

見下ろしつつニヤリ

驚いて飛び退いたがそいつは飽かずに笑ってジーっと視線を投げつける。
今度は驚きと恐怖を怒りが抑えた。両手で強く押し倒す。
昨日と同じく感触はなかったが手応えはあった。
デブは倒れ、そのまま地面を突き抜けて消えてしまった。
画像を見ていないのに何故突如として出てきたのか。
私は息を荒くしながら同僚の後を追った。

三日目 仕事帰り
その日は全く仕事に集中できなかった。朝起きたときには既にやつがいた。今度は正座をして私を見ている。足で蹴り飛ばすとそのまま壁の中へ消えたが数分するとまた出てくる。

仕事中も画面にヤツの顔がずっと反射していた。

どうにか消す方法はないのか、帰ってから靴も脱がずにネットで検索する。
すると1件だけそれらしきログを見つけた。

『ずっとつけてきてウザイんですけど消す方法はないんですか。喪龍★さんお答えください』
喪龍★『簡単です。下記の画像ファイルをダウンロードして―――』


「無駄ナリよ」


スピーカーから聞き覚えのある声がした。それと同時に画面をあのgifが覆う。


「うわああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
驚きすぎて腰を抜かした。
弁護士モドキが近付いてくる。
鞄を投げつけそれを阻止し、パソコンのコンセントを抜いた。
が、まだ画像は表示されている。何故だ

「無駄ナリよ無駄ナリよ無駄ナリよ無駄ナリよ無駄ナリよ無駄ナリよ無駄ナリよ無駄ナリよ無駄ナリよ」

スピーカーが狂ったように奇声を発し続ける。
パニックになり外へ逃れようとしたが、ドアを開けると唐澤貴洋が立ち塞がっていた。つき飛ばそうとした途端、両手を掴まれる。
背後から

「優しい世界を」



ボキッ 90°

「大丈夫ですか?」
「大丈夫ナリよ」
看護婦は明らかに引き攣った笑みで問いかける。無理もない。
ここ数日で首を直角に折った患者が二十名ほど入院したのだ。それも皆、奇跡的に、そして簡単に助かった。
この病院だけではない。隣の市の病院では数百名が同じように入院しているらしい。
その県だけでなく、日本全国で、さらには外国でも。

病室では首に包帯を巻いた患者が並んでいる。


部屋に取り付けられた小さなテレビでは、つまらないコメディアンが「ろくろ首事件ですね」などと話していたが、患者は皆笑ってみていた。

否、コメディアンを見ているのではない。
テレビに反射している自分の顔を。

『どういう仕組みで尊師が見えるんですか?』
喪龍★『あれは唐澤貴洋の全てのデータを視覚化したものです。つまり見た人の脳内で唐澤貴洋を造りあげるんですよ』

wikiにそのログはもう無い

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