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恒心文庫:ロボトミー手術

提供:唐澤貴洋Wiki
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本文

「どういう事ナリか?!」
小太りの男が声を荒げる
「やだなぁ、そのままの意味ですよ?ねっ、しょーへー?」
髭を生やした男が静かに答え、横にいるガッチリめな男もコクリと頷く。
「俺たち、もうからさんとはやってけないんすよ、だから出ていって貰おうと思って、ねっ、ひろ君?」
二人はからさんと呼ばれた小太りの男の後輩であり、同僚でもあった。
時に笑いあい、時に叱り叱られ、友好な関係を築き上げてきた仲間だ、その二人の突然の絶縁宣言にからさんは驚きを隠せない。
「なら、二人が出ていくべきナリよ!どうして当職が出ていくナリか!」バンッ
苛立ちの余り、からさんはデスクを叩く。
しかし、二人の男は驚く事もなく何も言わない、ただただからさんをじっと見つめている。
その目はどこか虚ろであった。
(様子がおかしいナリ・・・そうナリ、パパから言って貰うナリ)
「パパ!二人が変ナリ!パパからも何か言ってやって欲しいナリよ!」
パパと呼ばれた初老の男、彼の父は答えず書類に向かっている、その目もやはり虚ろだった。
「パパ!どうしたナリか!」
「聞こえませんよ~だってほら!」
ガッチリめの男がおもむろに初老の男の頭を掴む、そして
「じゃーん!」
パカッとズラが取り外される、開示された頭部にはまるで大きなムカデが巻き付いているような痛々しい縫い後があった。
「兄が医者でね?仕事に必要な部分以外取って貰ったんすよ~まぁ稼ぎ頭は必要っすからね~」
そう、彼の父は禁断のロボトミー手術を受け仕事しか出来ない廃人に変えられてしまっていたのである。
「パパ・・・」
よたよたと父に歩みよるからさん、力なく何度も呼び掛ける。
「パパ、パパ・・・たかひろナリよ・・・」
父は答えない、黙々と書類に何かを書きなぐっている。
その場に崩れ落ちるからさん、その光景をニタニタと見つめる元同僚たち。
からさんは涙した、同僚に裏切られた事よりも、あの優しかった父の変わり果てた姿を見て涙が止まらなかったのだ。
「パパ・・・」
夜の事務所、元同僚たちの不気味な笑い声とからさんのすすり泣く声が響く、異様な空間だった。





「パパ、どんな姿になっても、大好きナリよ・・・」
絞り出すように変わり果てた父に語りかける息子、その時であった。
父も涙を流したのだ。
「たか・・・ひろ・・・」
その瞬間、目映い光が父の体を包み込む。
光が消えるとそこには、傷は消え、純白のモミアゲが生えた父が白い衣服に身を包み空中浮遊していたのだ。
「心配かけたのぉ、息子よ」
突然の出来事に驚きを隠せない元同僚たち。
「バカな、手術は完璧だったはず・・・何故!?」
「記憶は脳にあるんじゃない、心にあるんじゃよ、息子がそれを思い出させてくれたのじゃ」
ゆっくりと近づいてくるそれに元同僚たちは死を覚悟した。
「もうダメだ・・・」
「おしまいだぁ・・・」
次の瞬間、元同僚たちの頭にポンッと手が置かれた、そしてワシャワシャと撫でてくるではないか。
「大事な大事な息子の友達、それはワシの息子も同然、どうして手が下せようか」
父の手が光り、元同僚たちが包まれる。
「さぁ、元の優しい二人に戻っておくれ」
同僚たちは気を失ったのかその場に横たわっている、しかし、何かに取り付かれたような虚ろさは消え、ごく普通の青年に戻っていた。
「パパぁ!」ブリブリブチチィ
泣きじゃくる息子を抱き寄せながら父は外を見る
「ワシの大事な息子たちにこんな事を・・・まったく、あのお方にも困ったもんじゃ」
外は真っ暗だ、しかし父の目にはほくそ笑む会長の姿がしっかりと映っているのであった・・・

タイトルについて

この作品は公開された際タイトルがありませんでした。このタイトルは便宜上付けたものです。

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