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然らば貨幣󠄁の交󠄁換價値も同樣に貨幣󠄁對一般財貨の間に於ける効用及稀少性の比率󠄁關係によると解すべきである。 | 然らば貨幣󠄁の交󠄁換價値も同樣に貨幣󠄁對一般財貨の間に於ける効用及稀少性の比率󠄁關係によると解すべきである。 | ||
之を他面より考察するに貨幣󠄁は本來流通󠄁財貨と對立關係に立ち、全󠄁流通󠄁財貨量と全󠄁貨幣󠄁流通󠄁量とは凡て等價の關係に在る。 | 之を他面より考察するに貨幣󠄁は本來流通󠄁財貨と對立關係に立ち、全󠄁流通󠄁財貨量と全󠄁貨幣󠄁流通󠄁量とは凡て等價の關係に在る。 | ||
然るに貨幣󠄁は價値流通󠄁の要󠄁具󠄁にして交󠄁換以外の一方的價値流通󠄁にも使󠄁用さるゝを以て、流通󠄁する財貨と對立關係にあるのは、之等に用ひられたる貨幣󠄁額を除外したる部分󠄁である。 | |||
更󠄁に今日の社󠄁會にては小切手等の信用要󠄁具󠄁が交󠄁換等に於ける財貨と對立し、且つ屢々物々交󠄁換も行はれ、流通󠄁を本性とする商品以外の財產たる資󠄁本も貨幣󠄁と交󠄁換されて對立關係となる。 | 更󠄁に今日の社󠄁會にては小切手等の信用要󠄁具󠄁が交󠄁換等に於ける財貨と對立し、且つ屢々物々交󠄁換も行はれ、流通󠄁を本性とする商品以外の財產たる資󠄁本も貨幣󠄁と交󠄁換されて對立關係となる。 | ||
かくして除外例を附したる貨幣󠄁對財貨の關係は、平等對立關係にして一定の時、所󠄁に於ける前󠄁者󠄁の全󠄁額と後者󠄁の全󠄁額とは全󠄁く等價となるべきである。 | かくして除外例を附したる貨幣󠄁對財貨の關係は、平等對立關係にして一定の時、所󠄁に於ける前󠄁者󠄁の全󠄁額と後者󠄁の全󠄁額とは全󠄁く等價となるべきである。 | ||
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𝑃=<span style="display: inline-block; vertical-align: middle; text-align: center;"><span style="display: block; border-bottom: 1px solid #333;"> 𝑀𝑉+𝑀′𝑉′-𝑚 </span><span style=""> 𝑇+𝐶-2𝐵 </span></span> | 𝑃=<span style="display: inline-block; vertical-align: middle; text-align: center;"><span style="display: block; border-bottom: 1px solid #333;"> 𝑀𝑉+𝑀′𝑉′-𝑚 </span><span style=""> 𝑇+𝐶-2𝐵 </span></span> | ||
∴ <span style="display: inline-block; vertical-align: middle; text-align: center;"><span style="display: block; border-bottom: 1px solid #333;">1</span><span style="">𝑃</span></span>=<span style="display: inline-block; vertical-align: middle; text-align: center;"><span style="display: block; border-bottom: 1px solid #333;"> 𝑇+𝐶-2𝐵 </span><span style=""> 𝑀𝑉+𝑀′𝑉′-𝑚 </span></span><br> | ∴ <span style="display: inline-block; vertical-align: middle; text-align: center;"><span style="display: block; border-bottom: 1px solid #333;">1</span><span style="">𝑃</span></span>=<span style="display: inline-block; vertical-align: middle; text-align: center;"><span style="display: block; border-bottom: 1px solid #333;"> 𝑇+𝐶-2𝐵 </span><span style=""> 𝑀𝑉+𝑀′𝑉′-𝑚 </span></span><br> | ||
𝑃=一般物價 𝑇<span style="display: inline-block; transform: rotate(90deg);">=</span>{{原文ママ| | 𝑃=一般物價 𝑇<span style="display: inline-block; transform: rotate(90deg);">=</span>{{原文ママ|活字の向きのミス}}商品流通󠄁高<br> | ||
𝐵=物々交󠄁換及相殺取引高 𝑀=貨幣󠄁高<br> | 𝐵=物々交󠄁換及相殺取引高 𝑀=貨幣󠄁高<br> | ||
𝑉=貨幣󠄁流通󠄁速󠄁度 𝑀′=信用(貨幣󠄁代用物の高)<br> | 𝑉=貨幣󠄁流通󠄁速󠄁度 𝑀′=信用(貨幣󠄁代用物の高)<br> | ||
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卽ち貨幣󠄁の價値は、貨幣󠄁に對する主觀的評󠄁價を通󠄁じて決定されると見る所󠄁の學說である。<br> | 卽ち貨幣󠄁の價値は、貨幣󠄁に對する主觀的評󠄁價を通󠄁じて決定されると見る所󠄁の學說である。<br> | ||
この說も結局貨幣󠄁品質說と同樣に數量說を基本としてのみ說明󠄁可能であり數量說に對立する學說ではない。<br> | この說も結局貨幣󠄁品質說と同樣に數量說を基本としてのみ說明󠄁可能であり數量說に對立する學說ではない。<br> | ||
職 分󠄁 說<br> | |||
職分󠄁說又󠄂は需給說は、貨幣󠄁に對する需用{{原文ママ|需要󠄁}}供給が貨幣󠄁價値を決定するとなし、而して貨幣󠄁に對する需要󠄁とは、商品勞務を提供して貨幣󠄁を得んとする慾求である。 | |||
供給とは、貨幣󠄁によつて商品、勞力を得んとする慾求である。 | 供給とは、貨幣󠄁によつて商品、勞力を得んとする慾求である。 | ||
故に前󠄁の慾求が强ければ物價は低落し、後の慾求が强ければ物價は騰󠄁貴するとなすのである。<br> | 故に前󠄁の慾求が强ければ物價は低落し、後の慾求が强ければ物價は騰󠄁貴するとなすのである。<br> | ||
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今述󠄁べた如くインフレーシヨンは貨幣󠄁(殊に不換紙幣󠄁)及び銀行預金增加の形態に於て發生するのであるが、しからば我が國の現今戰時經濟下に於ては、インフレーシヨンは何に起󠄁因し、又󠄂如何に發展してゐるか、を見れば次󠄁の如くである。<br> | 今述󠄁べた如くインフレーシヨンは貨幣󠄁(殊に不換紙幣󠄁)及び銀行預金增加の形態に於て發生するのであるが、しからば我が國の現今戰時經濟下に於ては、インフレーシヨンは何に起󠄁因し、又󠄂如何に發展してゐるか、を見れば次󠄁の如くである。<br> | ||
卽ち最近󠄁の我が國に於けるインフレーシヨンの原因は、それが日支󠄂事變に於ける戰爭需要󠄁の爲の財政膨脹である事は一般周󠄀知の所󠄁である。 | 卽ち最近󠄁の我が國に於けるインフレーシヨンの原因は、それが日支󠄂事變に於ける戰爭需要󠄁の爲の財政膨脹である事は一般周󠄀知の所󠄁である。 | ||
常に戰時體制と戰費調󠄁達󠄁の爲の財政膨脹とは不可分󠄁なる問題であつて、戰時財政の膨脹につれて物價は騰󠄁貴する。 | |||
物價が騰󠄁貴すれば、戰爭の爲の需要󠄁を抑制する事は出來ないから、當然政府財政は物價が騰󠄁貴するだけ膨脹し、その膨脹によつて物價は一層󠄁の騰󠄁貴を助長する、と云ふ關係にあるのである。 | 物價が騰󠄁貴すれば、戰爭の爲の需要󠄁を抑制する事は出來ないから、當然政府財政は物價が騰󠄁貴するだけ膨脹し、その膨脹によつて物價は一層󠄁の騰󠄁貴を助長する、と云ふ關係にあるのである。 | ||
而して政府の戰爭の爲の需要󠄁は絕對であり、この絕對の需要󠄁が急󠄁激に且つ多量に起󠄁る所󠄁に、戰時經濟の特徵󠄁が存してゐるのである。<br> | 而して政府の戰爭の爲の需要󠄁は絕對であり、この絕對の需要󠄁が急󠄁激に且つ多量に起󠄁る所󠄁に、戰時經濟の特徵󠄁が存してゐるのである。<br> | ||
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上表に於ても見る如くであるが、日銀券󠄁發行高は、十二年六月󠄁卽ち事變發生當時には十六億圓見當であつたものが九月には十七億に、十二月󠄁末からは二十億圓台に上り、十三年には二十億圓台を示し、十二月󠄁末には二十七億圓にまで達󠄁してゐる。 | 上表に於ても見る如くであるが、日銀券󠄁發行高は、十二年六月󠄁卽ち事變發生當時には十六億圓見當であつたものが九月には十七億に、十二月󠄁末からは二十億圓台に上り、十三年には二十億圓台を示し、十二月󠄁末には二十七億圓にまで達󠄁してゐる。 | ||
而して十四年中も漸次󠄁上昇しつゝ十二月󠄁末には三十六億の膨大なる數字を示し、爾來今日に至るまで三十億圓台水準を持續󠄁してゐるのである。<br> | 而して十四年中も漸次󠄁上昇しつゝ十二月󠄁末には三十六億の膨大なる數字を示し、爾來今日に至るまで三十億圓台水準を持續󠄁してゐるのである。<br> | ||
この日銀券󠄁發行高は勿論全󠄁部が流通󠄁界にあるわけではなく、朝󠄁鮮、台灣銀行の發券󠄁準備となる部分󠄁が最近󠄁著󠄁ぢるしく增加してゐる事にもよるのである。 | |||
例へば之等發券󠄁銀行の發行準備高は、十一年九月󠄁末には八三、七二一千圓であつたものが十二年同月󠄁末一一八、二八六千圓・十三年同月󠄁末二一九、五三四千圓・十四年同月󠄁末二二八、〇六四千圓・並びに十五年同月󠄁末二九〇、九八七千圓にまで增加してゐるのである。 | 例へば之等發券󠄁銀行の發行準備高は、十一年九月󠄁末には八三、七二一千圓であつたものが十二年同月󠄁末一一八、二八六千圓・十三年同月󠄁末二一九、五三四千圓・十四年同月󠄁末二二八、〇六四千圓・並びに十五年同月󠄁末二九〇、九八七千圓にまで增加してゐるのである。 | ||
卽ち事變前󠄁の十一年九月󠄁末に比すと十五年同月󠄁末には三倍半󠄁弱󠄁の大きに及んでゐるのであるが、之等を差引いて見ても次󠄁の上表に見る如く、其の流通󠄁高は著󠄁しい上昇になつてゐる。 | 卽ち事變前󠄁の十一年九月󠄁末に比すと十五年同月󠄁末には三倍半󠄁弱󠄁の大きに及んでゐるのであるが、之等を差引いて見ても次󠄁の上表に見る如く、其の流通󠄁高は著󠄁しい上昇になつてゐる。 | ||
302行目: | 302行目: | ||
之に反して物價騰󠄁貴によつて利する者󠄁は、債務者󠄁である。 | 之に反して物價騰󠄁貴によつて利する者󠄁は、債務者󠄁である。 | ||
債務者󠄁は、價値の高かりし貨幣󠄁を借り入れて、價値の下落した購󠄂買力の低い貨幣󠄁を返󠄁濟するのであるから、彼等の債務は實質上、輕減した事になる。<br> | 債務者󠄁は、價値の高かりし貨幣󠄁を借り入れて、價値の下落した購󠄂買力の低い貨幣󠄁を返󠄁濟するのであるから、彼等の債務は實質上、輕減した事になる。<br> | ||
インフレーシヨンの各階級に及ぼす影響󠄃は、大體以上の如くであるが一度インフレ!シヨン{{原文ママ|インフレーシヨン}}が起󠄁るとそれは二度、三度と繼起󠄁して行く可能性を有󠄁し、貨幣󠄁所󠄁有󠄁者󠄁は其の度每に貨幣󠄁價値下落に基く損害󠄂を蒙るから、その損害󠄂から免󠄁かれる爲に受取つた貨貨{{原文ママ|貨幣󠄁?}}は出來る丈󠄁早く支󠄂拂に用ひる樣になる。 | |||
卽ち貨幣󠄁の形に於ける所󠄁有󠄁を商品の形に於ける所󠄁有󠄁に變更󠄁し樣と努力するのであるが、その結果貨幣󠄁の流通󠄁速󠄁度は大となり、これは貨幣󠄁量の增加と同じ結果となるから、ます/\物價騰󠄁貴に拍車をかける事になる。<br> | |||
而して斯かる急󠄁激なるインフレーシヨンは、主として戰時等に於て起󠄁るものであるが、斯くの如き分󠄁配關係の不均衡によつて國民生活は極度に脅やかされ、又󠄂一方生產者󠄁は生產を延遲{{原文ママ|遲延?}}させれば遲延させる程󠄁、換言すれば費用と生產價格との開きを時間的に大ならしめれば大ならしむる程󠄁、有󠄁利となるのであるから、この事は生產諸󠄀力の著󠄁しい低下を齎らし、生產力の低下は戰爭の爲の著󠄁しい需要󠄁と矛盾を來して國䇿遂󠄂行上致命的の障害󠄂となる。<br> | |||
又󠄂、戰時に於ては普通󠄁戰費の大部分󠄁は公󠄁債によつて償はれるのであるが、インフレーシヨンによる債權關係の破壞は戰費の調󠄁達󠄁を不可能たらしめるのである。<br> | |||
如斯インフレーシヨンの及ぼす彰響󠄃{{原文ママ|影響󠄃}}は、實に廣範多岐に亘り、引いては國家機󠄁構󠄁の破壞と云ふ結果をも招來し兼󠄁ねないのであるから、我々は何としてもこの惡性インフレーシヨンを防止しなければならないのである。 | |||
=== 四、我國に於ける物價對策 === | |||
== 脚注 == | == 脚注 == |