恒心文庫:減価償却

本文

唐澤洋は公認会計士である。会計士業界では遍くその名を知らしめている存在なのだ。
しかし鷹であるはずの彼がもうけた息子は、たかはタカでも貴洋であった。

大半の人間はこの男が親バカであるから息子に事務所を間借りさせている、と考えているが実はそうではないのだ。
洋は公認会計士なのである、彼にとって貴洋は備品でしかないのだ。
減価償却という会計用語がある、減価償却とは年数を得るにつれて備品の価値は減っていくので取得原価を耐用年数で割って求めた金額を費用にするというものである。

洋にとっては貴洋は洋の事務所の利益のために費用として計上されるために存在を許された哀れな備品に過ぎないのだ。
用済みになれば売り飛ばされるか除却(殺害)されるか、廃棄されるのである。

次男の方は早くも用済みになったので早々に廃棄し特別損失を計上した洋である。
言うまでもなく次は貴洋の番である
そろそろ耐用年数も過ぎたので、除却するとするか、こんな無能なデブは誰も買ってはくれないであろう。

洋はそう考えつつゴルフで鍛えたグラブ捌き活かし、貴洋の頭にゴルフグラブを振り下ろした。

タイトルについて

この作品は公開された際タイトルがありませんでした。このタイトルは便宜上付けたものです。

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