恒心文庫:洋「んちゅっ…ズビュビュビュ…むはっ…」

本文

もう一度だけでいい。身体を重ねたかった。
熱く抱擁をし、狂ったように舌を絡めたかった。
久しぶりの再会。
手を合わせる。口を重ねる。言葉を交わす。
一枚のガラスを隔てて。
「父さん、こんなことになってごめんよ…」
貴洋がこちらを上目遣いでみながらつぶやく。
後ろでは看守がじっと姿勢を崩さず直立している。
彼からは貴洋の行動は見えるが、私の行動は見えないかもしれない。
そう考え、私は股間のイチモツを出す。
息子の顔を見た瞬間から年甲斐もなく屹立し、亀頭からはカウパー氏腺液が糸を引いている。
看守に悟られぬように、そっと貴洋の顔を見ながらこする。
今まで味わったことのない快感が身を襲う。喘ぎ声を出しそうになる。ぐっとこらえる。
が、すぐに果ててしまう。
二人で顔を合わせ笑う。

朝起きるとパンツは夢精で濡れていた。
そうか、あれは夢なのだと悟る。
あんな幸せなことは起こりようがない。
監房を見回る看守に、夢精してしまったことを告げる。
「唐澤貴洋、いい年こいてなにをしているんだ」
嘲るような呆れるような、なんともいえない顔でこちらを見てくる。
どうして自分はあんな夢を見たのだろう。
どうして、父の立場から夢を見たのだろう。
父がまだ自分のことを愛してくれている、とでも思いたかったのか。
そんなことはありえないのに。
父洋は、絶対に自分には面会しには来てくれない。
自分のことを許してくれるわけがない。
彼を裏切り、公園で幼女を強姦してしまったのだから。
彼の身体があるのに、別の人間に手を出してしまったのだから。
ふうっと息をつき、たそがれてみようとする。
だが、部屋に窓はなかった。窓などないのだ。

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