恒心文庫:心は貴洋

本文

鏡には自分ではなく、父の姿が写っていた。
「どういうことナリ……」と
声を漏らす唐澤貴洋。 唐澤貴洋はとりあえず父に電話しなくてはと、携帯を探す。 すると、ここにいますと言わんばかりに着信音が鳴る。 「ドラゴーナイ♪今宵僕たちは♪」 はまるように不協和音を口にしながら唐澤貴洋は携帯を手に取った。
「父ちゃんナリか、いったいこんな朝っぱらから、なんナリ!!」 『唐澤貴洋、おまえ鏡みたか?』
「は?なに言ってるナリ」
『いいか、唐澤貴洋、ワシは今お前の姿になってる!』
「はぁ?」 と鏡に近寄る唐澤貴洋。
「あれ、父ちゃんここいたナリか? だったら電話する必要ないナリ」
『違う!ワシとお前が入れ替わってるんじゃい!』
「えー!」 絶叫が虎ノ門の夜を明かす。


(続け)

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