恒心文庫:心って減るものなんですね
本文
心って減るものなんですね
今、僕の心を天秤に載せてたとしても1ミリも傾きもしないでしょう。
心って減るものなんですね。
昔はせめてもの300万円の束よりは重かったでしょう。
心って減るものなんですね
少年時代には、胸を抑えて蹲っている老婆に救急車を呼ぼうか、声をかけるぐらいには心に重さがあったはずでした。
心って減るものなんですね
僕、Yの心が減ったのはきっと手を汚してしまったからなんでしょうね。
汚した手から、心に虫が巣食ってきっと心を喰い荒らされたんでしょうね。
大人になったら、他の人間の命令を聞くのが当たり前だと思っていた頃から
心はもう減り始めていたんでしょうね。
心って減っていくものなんですね
仕事だから当たり前と、助けが必要な人間を救いもせず、お金を取ることに苦しみながら加担していました。
そのときはまだ、心は悲鳴をあげていたんですね
心は止まってしまうものなんですね
目的に必要のない人間を殺してしまうことに、遂に協力してしまいました。
心はもう起き上がらなくなっていたんですね
心って無くなるものなんですね
お金のためなら人の親にでも毒を盛ろうという人間に逆らえず、とうとうその人の親に毒を盛りました。
心が初めからない人間っているんですね
今の私もまた、その人と同じ人間なんでしょうね。
リンク
- 初出 - デリュケー 心って減るものなんですね(魚拓)
恒心文庫