恒心文庫:待ち合わせ

本文

やさしいだけの人は嫌いって言ったあいつに俺はいつも
またされてばっかりだから、たまには
おれが待たせてやろうと思うのだけれど、
かならず五分前に着いてしまう。

ひみつの多い人は好きって言ったあいつは自分のことを
ろていさせるような事を絶対に言わない。
あしたもあさっても、今日も
きっと、何も言わない。何も教えてくれない
これからもずっと、ずっと

ろっぽんぎにあるバーは格式が高くて落ち着かないけれど
すきだという彼のために、そのために俺も
かよっている

くじはんを過ぎてから彼はやってきた
ごめんの一言もなく
しずかに席についた。テーブルの上で
ろうそくの灯りが揺れている。こういうときは
むごんでいるのがマナーだから、二人で
ノチェロ・シェークを頼んで
うす暗がりの中、テーブルの下で手を繋いだ。

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