恒心文庫:山岡裕明「貴洋…」

本文

父親を亡くし心にぽっかりと穴が開いた。
毎日生きている実感がせず、一日が過ぎて行った。
山岡は弁護士だ。「この職業を選んだ時の父親の表情と言ったら…」

休日はひきこもらず当てもなく街を彷徨った。
スクランブル交差点を歩いているとき、中年男性にぶつかってしまった。
倒れた人を持ち上げることはできなかった。
なぜなら彼は80キロもある巨体だったからだ。
「ごめんなさい」
「いいんだよ」
微笑むとどこかに行ってしまった。

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