恒心文庫:体重唐澤貴洋

本文

ホゥ ホゥ
夜も更けた真夏の事
窓の側の木の枝で洋が鳴く
当職はエアコンの効いた部屋で全裸で卵を温めていた
エアコンは暖房30度の設定だ
これは卵を温めるためだ

托卵────
他人に卵を育てさせる洋科の生物にとって
息子である当職はカッコウのカモだった サギ アホウドリ オウム
洋に小遣いの札束を貰った当職はしぶしぶ卵を温める

しかし洋も頭が足りなかった
洋自身も体重唐澤洋で
その息子の当職も体重唐澤貴洋だった
なのでもちろん卵は圧に耐えきれずにヒビが入り
中から産まれたドロドロとした赤黒い弟がピィピィ鳴く
名を厚史と名付けた

ある日の事厚史を唐揚げにして食べていると
洋が血相を抱えて羽ばたきながら窓から飛び込む
キ、キミちゃんとの愛の結晶が!
とか叫びつつ洋は泡を吹いて失神してしまった
窓の外で玄関にベンツが停車するのが見え
中からは顔の整った初老の男性が降りて来た

「なるほど、つまり君は自分の弟であり私の息子を食べてしまったと」
その顔は優しかった
しかし取り巻きの黒服にボコボコにされた当職は何も考えることが出来なかった
「妾に産ませたとは言えやっと産まれた男児だったんですよ」
優しい顔が段々と般若になり鬼となり悪魔に変わる
男は懐からピストルを取り出すと失神している洋に数発撃ち込む
洋は小さな悲鳴を上げ動かなくなった
「君はこれから楽しいクルージングへと御招待しましょう」

沖合の船にて当職は縛られていた
悪魔の指示で黒服達の手により当職は船から突き落とされる
と、ここで問題が起こった
体重唐澤貴洋の当職を海に落とした場合
海の質量に物凄い小太りのデブがプラスされる事になる
海水は盛り上がり小さかった波は徐々に大きくなり
あっという間に巨大な津波が街を襲ったではないか
日本の大部分が壊滅状態となった

────昔のことを思い出したモリね
避暑地のビーチのハンモックにて森氏は寛いでいる
あれから数年が経った今も被災地は復興していない
森氏はゴタゴタしている日本を離れ老後を過ごすことを決めた
優雅なリゾート暮らしは素晴らしい
皆も別荘やホテルで暮らせばいいのになぁと黒モミはサングラスをかけ直しながら思うのであった

タイトルについて

この作品は公開された際タイトルがありませんでした。このタイトルは便宜上付けたものです。

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