恒心文庫:遺伝子の錯交

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本文

父と祖父との間に産まれた当職は母乳代わりに父の精液を飲んでいたという。
出したての精液はまろやかなコクと風味で赤ん坊の頃からその味を覚えている。
そのためか以前歯医者に行った時、当職の歯は精液で出来ていると言われた。
なるほど、道理で今も変わらずその風味が口内に漂うわけだ。
当職の血となり肉となる父の精液。
いつどんな時でも当職と父は一心同体だと思うと感動に身が震える。

そんな当職もすっかり成熟し、今では与える側になっている。
ある日、同僚が労働時間が過ぎているにも関わらず働いているのを見かけた。
先に言っておくが当職の事務所に時間外労働なるものは存在しない。
無論サービス残業も禁止しており、数ある企業の中でも屈指のホワイト企業だと自負している。
当職は忘れ物でもしたのだろうと気にせず自慰に耽っていたが、射精したにも関わらず一向に出てくる気配がない。
流石の当職も不審に思い、声をかけてみた。
「Yくん、そこで何してるナリか?」
びくりと跳ね上がる華奢な肉体。
Yくんは眉目秀麗で仕事もできる、所謂才色兼備を体現したような人物だ。
其れ故何人もの男性を泣かせてきたと言う話を聞くが、真相は定かではない。
「……何でもありません」
少し間を置いて答える。その声は何処か怯えているように聞こえた。
「Yくん、調子が悪いナリか?」
心配してYくんのもとに駆け寄ると
「あ、駄目!」
下半身を露出し、はち切れそうなほどに秘部を勃起させる同僚の姿があった。
その手には当職の下着が握られている。
何も言わず顔を紅潮させるYくん。
その恥じらいを見せる姿に父の面影を重ねる……

……父は食事の時間になると服を脱ぎ捨て、勃起させた陰部を目の前に差し出すのだ。
何日も洗ってないであろうそれはつんと鼻をつく臭いを漂わせ、当職の食欲を増進させる。
成長期を迎えていた当職は脇目も振らずその陰部に飛び付き、小さな口腔を用いて必死に精液を絞り出そうとしていた。
父は顔を赤らめながら快感に咽び、なんとか嬌声を抑えようと口に手をあて顔を背ける。
そのあまりに妖艶な姿に当職も奮い勃たせて自慰に耽るのだ。
齢三ヶ月、初めての自慰であった。
「出りゅ!出りゅよ!」
父の声と共に大量の精液が溢れ出す。
一滴も漏らすまいと亀頭にかぶり付き、直接食道を通過させる。
まだ歯の生えてない当職の口は程好く父の陰部を刺激し、睾丸からさらに精液を放出させた。
そして精液を全て飲み干したところで食事が終わる。
当職の股間は快感に震えていた。

気が付けばYくんを襲っていた。
「Kさん!?」
突然の出来事に驚く声。しかし、抵抗はしない。
まるでこうなる事を望んでいたかのように。
服を剥ぎ取った後Yくんの秘部にむしゃぶりつく。
酸っぱい臭いが口内に充満し、危うく意識を失いかける。
なんとか意識を保ちつつ舌でカウパーを絡め取り、歯から溶け出す父の遺伝子と共に体内に取り込む。
ああ、甘露甘露。
赤ん坊の頃から身に染み付いている尺八術で刺激すると、Yくんの呼吸が徐々に荒くなり、睾丸が収縮し始める。
刹那、割れ目から大量の精液が噴出し、当職を溺れさせた。
久しぶりの精液に睾丸も喜んでいる。
実は当職の睾丸には今まで体内に入れた全ての遺伝子が貯蓄されており、その大きさ故腹が妊婦のように膨らんでしまっているのだ。
余韻に浸るYくんを尻目に当職は腹部を刺激して新たな遺伝子を作成する。
Yくんを懐妊させるため。
しかし男を孕ませるのは並大抵のことではない。
あの祖父でさえ父を孕ますのに何回も行ったと聞く。
当職に出来るだろうか。
「今からYくんを孕ませるナリ」
自分を鼓舞するために呟くと、Yくんは何も言わずに尻を差し出してきた。
受け入れてくれるのだ、この当職を!
いきり勃つペニスからは止めどなくカウパーが溢れる、まるで涙のように!
そして、挿れる!
カウパーが潤滑油の役割を果たしてするりと挿入することに成功した。
初めての感覚。
挿れるとはこういうものなのか。
身体中に電流が走り、意識が朦朧とする。
「Kさん!」
Yくんの声にはっとする。
危なかった、あと少しで気絶するところだった。
感謝を述べようとYくんの方に目をやると、Yくんは汗まみれになりながら震えていた。
そうか、Yくんも……

――男は一心不乱に腰を動かした。
接合部からは火花が散っていた。
行為の音がこだまする。
二人の男は泣いていた。
愛と男と悦びに。
生命が宿るその瞬間に。
「出りゅ!出りゅよ!」
猛り立つ咆哮を上げ射精した。

数ヵ月後、とある事務所に産声が響いたという。

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