恒心文庫:洋式珈琲店

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本文

「ひろくん、コーンを3箱ほど買ってきてくれんか。生産が間に合わんのじゃ」
洋はバリスタでもある。公認会計士の傍ら珈琲豆焙煎店も営んでいる。
「わかりました。お店、順調みたいですね」
「思いのほか好評でのう、原料がコーンともあればアラビカ種より遥かに安価でできるんじゃ」

コピルアクというコーヒーをご存知だろうか。ジャコウネコが食した未消化の豆を原料とした最高級品種の希少品である。一杯数千円以上の価値がある種も存在する。これといった癖も特徴も少ないが最初に動物の排泄物を食用飲用にした人物は奇想天外な発想をしてくれたものである。
ここからヒントを得た洋は無能な息子を利用することを思いつきコーンを飲ませた。息子、貴洋の腹を未消化で排泄されたコーンは絶叫とともに勢いよく噴出、ニラやコンニャクなど未消化の不純物を取り除き洗浄され、1時間あたり平均で数百グラム~数キログラムの生産量を誇る。
貴洋の内臓を経由したコーンをしっかり洗浄し、焙煎機にかける。焙煎加減はフルシティ~イタリアンローストが店主洋のオススメだという。

「…ナリ」
「なんじゃ貴洋、コーンが足りぬのか」
「あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!(ブリブリブリブリュリュリュリュリュリュ!!!!!!ブツチチブブブチチチチブリリイリブブブブゥゥゥゥッッッ!!!!!!! )」
地下室で給餌装置に括り付けられた貴洋は喋ることもままならぬ廃人になっていた。コーンの給餌、脱糞の吸引、不純物除去、洗浄の過程を機械化し、洋は焙煎に専念する。
芳醇で甘美な焙煎の香りは客寄せに十分すぎるほどであった。このコーヒーを一杯200円という破格で堪能できるとあれば客も押し寄せ、焙煎豆の量り売りとともに六本木の新しいグルメとなった。
この洋式珈琲店は六本木のとあるビルにあるという。通であれば焙煎前の生豆が気になるところであるが提供を頑なに拒まれてしまう。名店ともあれば店主も頑固というもの、店主のこだわりを決して訝しんではならない。

タイトルについて

この作品は公開された際タイトルがありませんでした。このタイトルは便宜上付けたものです。

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