恒心文庫:法廷

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本文

世界が核の炎に包まれて三年が経過した、どこの国が最初に禁断の兵器を使用したかこれはわからない。
分かっているのは最初の核攻撃は日本の虎ノ門に落とされたこと、
その後の15分間で各国各首都各地に核ミサイルは降り注ぎ地球環境は取り返しのつかない程に汚染された。
貧富の差も老若男女も問わず多くの命が失われ生き延びたものは途方にくれながら廃墟の世界をさ迷い歩いた。
他の国のことどころか隣の町のことでさえ人づてに聞くかじっさいに自分で歩いて向かってみないと分からない、
高空で炸裂した核ミサイル群の産み出した電子パルスは電子の情報網を修復不可能なまでに切り裂いた。
蛇口をひねれば清潔な水の出る暮らしをしていた人々が、食べ物飲み水もなく夜は星明りの下で震えながら火を起こそうとする
世界ではあれほど守られ大切にされていた人の命はあっけなく失われていく。
人々は塗炭の苦しみにあえぎながら今日一日を生きながらえて最初の冬を、次の冬をそのまた次の冬を乗り切っていった。
そうして生き残った人々の中にはなんJ民や嫌儲民の姿さえあった、
そして罵り合い軽蔑しあっていた過去は無かったかのように一緒になって生きるために懸命な努力を続けていた。

過去の世界では人々は争い合い奪い合う余裕が存在した、
しかし真の極限状態においては人は助け合わなければ明日を生きることすら叶わない、それがわからないものたちは真っ先に死んでいった。
生き残り団結した人々によって各地に村々が作られ人々は電気も何もない原始的な生活をしながらある男を探し続け、とうとう捕まえた。

くるみを地面に置いて車が通るのをひたすら待っていた男唐澤貴洋、
親の庇護のもとで甘やかされて育ち上級国民として炎上しつつも教祖として祀り上げられていた無能。
生活能力0ながら無為な人生の中で貯めに貯めた厚い皮下脂肪で三年間ほぼ飲まず食わずで生き延びた貴洋の頬は痩せこけていた。
発端は虎ノ門に核ミサイルが落ちたからには尊師が絡んでいるに違いないと一人の元なんJ民が言ったことから始まった。
ただの戯言が誰が核を撃ったかもわからない、どうしてこんなに苦しい思いをしててまで生活しなくてはいけないか分からない、
そんな人々の積もり積もった不満に火をつけた。
なんJ民たちは日々の生活の中でも隙あらば尊師を探しついに見つけ、村に設えた簡易法廷に引きずり出し公開処刑を前提とした裁判を始めた。
裁判長はかつての嫌儲民、一度は公認弁護士として認めたデブに自分の弁護をしてみろと木づちの代わりにバットを突き付ける。
近隣からもかけつけた尊師を憎む人々に囲まれて唐澤貴洋弁護士は口を開いた。
あああああああああああああああああああああああああああああああ
(ブリブリブリブリュリュリュリュリュリュ ブツチチブブブチチチチブリリイリブブブブゥゥゥゥッッッ )
辺りは糞尿の悪臭に包まれるが地獄と化した世界でサバイブしてきた人々は眉一つ顰めない、
一人ひとり持ち寄ったナイフを構えて踊るパカベンに近づいていく。
殺意と狂気に囲まれてなお唐澤貴洋弁護士は叫び肛門から糞を垂れ流し続けた、核で世界が焼かれて最初で最後の法廷が流血をもって閉廷した。

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