恒心文庫:新訳 父洋スレ
本文
僕らは 幸せだった
母親は居なかったし、
学校にも居場所はなかったけど
父が誰よりも僕たちを愛してくれていたから
父は僕よりも弟を愛していた
僕は、いつもそれを見ていた
でも弟が居なくなってからは
父は誰よりも僕を愛してくれた
「世界中がお前の敵になっても
変わらずお前を愛し続ける
だからもうどこにも行くな」
そう世界の優しさを語った父は
次第に僕を愛さなくなっていった
僕はもう父以外を愛することなどできはしないというのに
人は人を愛さなくてはならないというのならば
あの日から誰も愛したことのない
誰にも愛されたことのない僕は
今も切なさと共にあるのは 父の面影だけ
愛なき時代に
愛を
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