恒心文庫:前門の虎、肛門の狼

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本文

貴洋と洋はお互いのジャケットに手をかけ、ワイシャツから胸板を露出させた。そしてそのままズボンもパンツも脱がしあったが、靴下はそのままである。
これから外に出るのだ。地面で足を傷つけないように包んだ布地はすでに汗で蒸れて臭い。
あっという間に陰部をさらけ出した2人は、勢いよくお互いの股間を指差し呼称。ちんぽ、よし!初老の大木ちんぽと、皮かむり子共ちんぽが、コミュニケーションのようにぶるぶる震えて跳ねる。
貴洋はおもむろに自分の首へと真っ赤な首輪をつけると、オラ森の出入り口へ駆け出した。
今晩は、貴洋が犬役なのだ。
貴洋は前尻尾をぶんぶん振り回しながら、前足で自動ドアを蹴破った。そんな彼を咎めるように、背後からこもった声が響く。飼い主の声である。貴洋は荒げた息をそのままに、血走った目で振り返った。
玄関の薄暗がり。そこに浮かんだ洋の顔は、ひどく歪んでいた。
つりあがった目。つりあがった口角。しかし怒っているわけではない。
頭に被ったストッキング。その引き伸ばされた繊維に透けて洋の表情が歪んで見えているだけである。
貴洋は合点のいったように息を漏らした。飼い主の手には、別のストッキングが握られている。薄暗がりから伸ばされた洋の手、そこからストッキングを受け取ると、貴洋は飛び込むようにしてその口へ自身の頭頂をねじ込んだ。
顔の肌と薄手の繊維が鋭く擦れ合うのを感じながら、やがて貴洋は夜空に浮かぶ月へ向かって引き伸ばした。
月明りの下、つりあがった親子の顔が。狼に良く似た男たちの顔が浮かび上がった。
爛々とした光を湛える目。とめどなくよだれを溢れさせる口角。青白い光に暴かれる本性。男たちの遠吠え。
彼らは、士業の皮を被った狼であったのだ。
父は四つん這いになった息子にのしかかる。股間のリードで深く繋がったことを感じ、彼らは八つ足で走り出した。
夜の虎ノ門に、男たちの欲望がこだまする。

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